和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第29回

地域の問題は、食で繋いで解決する。お米を売るためには、高齢者を元気にすることが秘訣?!

昨年より、シマネプロモーションさんが音頭をとり、弊社も関わらせていただいている島根県浜田市弥栄町にて、お米や野菜、ジビエやキノコといった地元の食の特産品を活用し、販路を作るための「奥島根弥栄」ブランドが立ち上がった。

特にお米は、非常に出来がよく、いよいよ今年は品評会できちんとした評価をいただこうということになっている。一方で、酒米ではなく食用米のコシヒカリをつかった「どぶろく」はすでに高評価を得ており、金賞を受賞するなどの優れものだ。やはり、その土地のテロワール(土地の性格や風土といった土着のもの)や、水や自然の良さがそのまま品質に現れているのは確かだろう。ただ、こうした「美味い土地」で「耕す人」が減っていることは事実だ。

この事実の一端は「自然減」であり「地域の高齢化」であることはいうまでもない。ただそれをマイナスと考えず、「いかに効率的に、集落単位で、良い品質ものを提供するか」ということをチャレンジしているのもこの弥栄町である。そうした姿勢をみて、私たちも期するところがあり、今年度から本格的に関わらせていただこうとおもっている。

さて、その本気度というのは、なにも「移住定住してそこで根を下ろす」ことが全てではない。いささか、都合の良い耳障りではあるが、僕らができることは限られている。限られているからこそ、その地域にはない視点やアイディア、具体的な施策が、求められるのは確かだ。もちろん、それは1人でやり切れるものでもないし、地域でその主人公やキャストが現れるほど「奇跡的なこと」はなかなか生まれない。だからこそ、特産品ではなく、「そこで生きてきた人」ほど、価値が高いのである。つまりは、いま問題になっている高齢者の皆さんである。それこそ素晴らしい人的リソースだと思う。

お米の栽培から、郷土食の作り方、地域の良き風景のポイントから、人の噂まで(笑)。ありとあらゆることを知っているのが土着の人だ。ただ、知っているからこそ「盲目的」な部分も多く、当たり前が新鮮であることが、時にわからなくなる。その時、僕らのような「よそもの」を使ってもらいたいと思っている。ただそのよそ者も、多種多様だ。1コンサルタントがあたかも大正解をもってくるのではなく、いろんな世代、人種、考え方の人間が地域に入り込んだり、生活したりすることが、それこそ「地域活性化」に繋がっていくと思う。僕らが今回弥栄町で実施したのはそうした内容だ。今までは僕の目線が、Foodnia Japanであったが、これからは僕のチームスタッフ、パートナーがFoodnia Japanの目線になっていく。その目線をまとめたのが、こちらのインスタグラムだ。先日、弥栄町に行った時の模様がアップされているのでぜひチェックしてもらいたい。

https://www.instagram.com/oiseau_foodstandard/

地域の問題は、みんなで考える。課題に対して、一人で臨むのではなく、多くの視点から現場を体験し、肌感覚として情報を掴んだ後に、自分の中で表現につなげていくこと。そのアウトプットはいろんな形であるべきだ。もちろんバラバラにならないように「繋ぐこと」。地域の問題をつなぐことで連鎖した問題が、芋づる式に答えが導かれていく。お米の販路は、地域の高齢者を元気にすることから生まれる。そう、風が吹けば桶屋が儲かると一緒だ。すべては繋がっている。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp