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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第68回

鎌倉に生まれし、限定2組向けの古民家ホテル&レストラン「鎌倉古今」

東京の都心部から電車で約一時間、羽田空港からもアクセスの良い、古都鎌倉。初夏となるこの時期も、多くの観光客が訪れて、外国人にも人気の場所だ。鎌倉駅から車で10分。住宅街を通り抜け、山肌近くに、今回ご紹介する古民家ホテル「鎌倉古今(かまくら ここん、以下古今)」をぜひ紹介させてください。

このホテルの運営は「日本の伝統文化の象徴である古民家を活用することで、次世代のストックとして未来へ向けて継承し、日本の真の豊かさを実現したい。」をビジョンに、元高級ホテルの支配人として様々な経験とノウハウをもつ代表の松宮氏が、「くらつぐ」という会社を興し、主に「古民家再生による地域活性化支援」「古民家宿泊施設の企画開発および運営」を軸にした事業展開から始まりました。

この古今は、2019年1月にオープンしたばかりのホテル。明治天皇により創建された「鎌倉宮」から徒歩すぐ、多くの史跡と豊かな緑に囲まれ品格漂う二階堂エリアにあり、その閑静な邸宅地で江戸時代から住み継がれてきた古民家をフルリノベーションしたもの。また「古民家ホテル」と書きましたが、鎌倉で古民家を活用した、いわゆる「民泊」においては、民泊新法に基づき、180日限定営業。特にこの鎌倉市は、多くの訪日外国人が訪れる一大観光地だが、古都保存法で歴史的風土保存区域に指定されたエリアが多く、宿泊施設が慢性的に不足している状態。しかし、民泊新法の施行に伴い、古民家を宿泊施設として利用が可能になったこともあり、この 古今も、鎌倉における古民家ホテルの先駆けとして、新たな観光体験を提案する格好になったのです。

またオープンとあわせて同施設内で「Restaurant COCON」としてレストラン事業も展開。世界でも高い評価を受け、国内オーガニックレストランの先駆けとしても知られる「アル・ケッチァーノ」奥田政行シェフが料理をプロデュース。イタリアンベースのオーガニック料理が提供され、鎌倉ならではの“鎌倉野菜”も使用しています。実は先日、この初夏の季節に合うようなディナーとワイン、日本酒などが含まれるペアリングコースをいただいてまいりました。

古木のカウンターの向こうで料理を振る舞う池田慎一氏は、この春からRestaurant COCONの料理長として、奥田シェフのお店「サーラ ビアンキ アル・ケッチァーノ(三重県菰野町/アクアイグニス)」から転籍してきた方。ディナーは、12,000円のコースでデザート含めて8皿の展開。

まず、一皿目は「苔(こけ)」。太刀魚をフリットにしたものがベースなのですが、粉状に「青のり」がふりかけてあり、見た目以上に塩味がピリッと効いて、最初の一皿として、「口元をすっと締める」感覚になりました。

次に、「石鯛のカルパッチョ ハイビスカス」。青々とした新鮮な有機野菜とともに、イシダイがカルパッチョされ、爽やかな味わいとともに、そこに添えられたハイビスカスを使った冷製ソースが、これまた酸味ある味わいで、イシダイの膨よかさと、ソースの味わいがこれまたぴったり。

3皿目は、「これは?」とびっくり、たけのこの皮が炙り焼きされており、それを解きほぐすと、手羽先が現れる。「筍と手羽先」だ。この手羽先、頬張ると、手羽先の肉とともに、この時期としては最後になる「筍」が細かくブロック体で入っており、筍の香ばしさと、手羽先の肉、さらにその手羽先に塗られたごま油の風味が合わさって、濃厚だけれども「軽々しさ」を演出する味わいをつくっている。

ここまで、シャンパンと白ワイン(シャルドネ)、そして日本酒(久保田ほか)がそれぞれの皿にあわせてペアリング。最初は味わい軽めでスタートし、食事とともに、分量ボリュームも丁寧に調整されて、非常に飲みやすい。

「次に出すお魚は、火入れ45度の『サワラ(鰆)』です。まだ皮目が生の状態なので、火炙りしてお出ししますね」と池田シェフ。目の前でバナーを使い、瞬時に皮目を炙りながら、お皿にまとめられたのが「鰆45℃ 新玉葱」。

季節ものの新玉ねぎをソース化して、玉ねぎ独特の絡みと甘みを残し、先ほど火炙りしたサワラがハーブ野菜とともに和えてある。ちょうど新玉ねぎの苦さと、サワラの甘さが相まって、非常によい感覚。僕にとっては、今回のコースでは一番だと思う味わいです。ぜひタイミング良ければ食べて欲しい。

ここで池田シェフ、「ちょうど次回からコースに入れ込んで見ようと思っているものがありますので、少し試食しませんか?」とおもむろに「ウチワエビ」を冷蔵庫から出してきた。「実は、『酔っ払いすぎたウチワエビ』なんですけど」と、ウチワエビを真ん中から一刀両断。まだ生のウチワエビの肉質が、すこし茶色がかっている。「これは、紹興酒、ブランデー、マルサラ酒のミックスで漬け込んだウチワエビです。日本酒にぴったりだと思います!」と、豪快な一品。

食べてみると、とても「繊細」な味わいで、この料理コースのなかでは「異彩」という認識だった。しかしこれは食べやすい。お酒が苦手な人がパクパク食べてしまうと酔ってしまいそうな絶品料理だ。

コースも終盤、6皿目「しらすと唐墨のパスタ」で口直し後、愛知県「知多牛のビステッカ」を頬張る。池田シェフは宮崎県出身。前職が三重県ということもあり、非常に、肉、魚に詳しく、これからの夏、秋のメニューについても、見事な展開を検討、宿泊客にも好評なものを展開すると期待している。この「知多牛のビステッカ」についても、火入れも程よく、デザート含みの8皿という内容だが、ペアリングあわせて、腹八分目で非常に満足度が高い内容だと感じた。

良い意味で、食材が喧嘩せず、ハーモニーがあり、それでいて、和食、イタリアンといった料理カテゴリーでの枠もなく、どちらかというと、「鎌倉で食べられる料理」「古民家ホテルで食べる料理」といった部分に気持ちよく入ってきていて、料理自体が「バタバタ焦らず、自信を持って出せるもの」を提供している印象があり、食べていて「安心感」が漂っていた。これは池田シェフの力量でもあると思うが、それ以上に、この古今という場所が醸し出すポテンシャルなのかもしれないと感じている。自分は東京に暮らしているので、鎌倉にわざわざ一泊二日宿泊して食事もとってゆっくりする、という気持ちは、今までもなかったのだが、その根底を覆させられる印象を持ったホテルだった。また代表である松宮氏が提供する「ホテル」のサービスにおいては、やはり細部が行き届いている。今回は宿泊はできなかったが、まずはRestaurant COCONに足を運び、まずはこのレストランで舌鼓を打ってほしい。ちなみに僕は貸切ができるように、仕事を頑張ろうとお店を後にしましたが(笑)。

●鎌倉古今(かまくら ここん)

[住所]
神奈川県鎌倉市二階堂836(鎌倉駅より車10分/「大塔宮」バス停より徒歩3分)

[宿泊料金](税別)20195月時点の情報です。
1
名様:48,000円(1泊朝食付プラン)
1
名様:60,000円(1泊夕朝食付プラン)

[ウェブサイト]
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鎌倉古今

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第67回

令和元年。発酵食品を解いてみる。

令和元年5月1日が明け、10連休、みなさま、いかがお過ごしでしたでしょうか。私は相変わらず日本を飛び回り……というわけではなく、身内の不幸があり、前半はその対応をし、後半は東北を回っておりました。

連休も後半となりますと、たとえば東京駅などのお弁当売り場は少々殺気立っていて「完売です。」の棚が、目立っておりました。多くの方々が、初めての10連休を楽しまれたのではないでしょうか。

さて、連休最終日。私は、とあるプロジェクトのために「おにぎり」の開発をしている現場におりました。

料理研究家の方に、おにぎりレシピの開発を依頼、クライアントの皆さんとともに、そのおにぎりを試食する催しがありました。今回のおにぎりのテーマは「焼きおにぎり」です。みなさん、焼きおにぎりは、食べたことありますか? ここ最近ではコンビニエンスストアでの販売が多く、また小江戸のような、歴史ある地方都市の出店で販売していることもあると思います。けれど、なかなか「焼きおにぎり専門店」というお店を見る機会が少ないですよね。今回の焼きおにぎりにはもう一つテーマを設けておりまして「発酵食品を活用した焼きおにぎり」という商品の開発です。

醤油にお味噌、チーズや西京漬といった、発酵にまつわる東洋、西洋の品物を、ホカホカのおにぎりにまぶし、それを、焼き機を使って、丹念に焼き上げ、「焼きおにぎり」に仕上げていきます。醤油、味噌それぞれ、こんがりとした焼き色と香り、そしてその焼き上がりから醸し出される味わいもよく、もう少しブラッシュアップすることで、良い商品が生まれそうです。また、そうした発酵食品を掛け合わせながら、これまでにはない商品開発ができそうです。この発酵食品については、こだわりの商品ほど、特徴が出やすいのは確かなのですが、いかんせん、目標としているお客様提供額=販売価格が見合うかどうかというところがポイントになります。みなさん、「焼きおにぎりの価格帯」はいくらぐらいで考えていますか?100円?200円?例えば「発酵」というキーワードとともに、その付加価値ふくめて1個あたり300円、400円という数字が出てきた場合、どのくらい納得して購入されますでしょうか? 「それくらいはわかってほしいな」「いかんせん、焼きおにぎりの提供額ではないよね」という声がそれぞれ聞こえてきそうですが、単に原価計算し、そこに販売価格を計上するのでは、普通の値高の焼きおにぎりが登場するのが関の山です。とはいえ、単に安くしてしまうとこだわりも出せなくなります。

例えばそのこだわり。ちょうど試食した「味噌チーズ」という写真の商品。とある醸造場の味噌を使い、両面丁寧に焼き上げた後、パルミジャーノレッジャーノチーズを、細かく振りわけまぶしたものです。食べると、チーズの風味とともに、味噌のこってりかつ柔らかい味わいが口の中に広がり、そしてチーズと絡みながら、さらに柔らかく、美味しい味わいに変化していきます。一方で、味噌とチーズの掛け合わせも大事なのですが、大きなところは「発酵食品の気づき」なのだと思います。

発酵にまつわる商品開発の案件は非常に多く、僕たちも「発酵の勉強」をさせていただくことも多いです。けれど、単に焼きおにぎりを開発するだけではなく、「なぜ焼きおにぎりで、発酵で解くか」ということを考えねばならない。焼きおにぎりをきっかけに、食べてもらう人たちに、発酵を通じたきっかけ、気づきを与えることができればと思っているのです。しかし、まずはこの焼きおにぎりが美味しくないと意味がないし、焼きおにぎりが美味しいだけでは、発酵食品の奥深さにはたどり着かない。だからこそ「焼きおにぎりを通じて、発酵が伝わるかどうか」を掘っていきたいと思っています。

僕らの生活において、「焼きおにぎり」はどんな接点を作ってくれるのか。このお店はいま7月オープンをめどに動いております。また追って報告いたします!

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
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Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第66回

銀座8丁目8番8号。三つの「八」を冠した和食物販「八八八(hachi) 」がオープン!

2019年4月25日(木)。銀座八丁目八番八号にある和食の物販店をプロデュースさせていただきました。その名も「銀座里仙(りせん) 八八八(hachi)」です。

このお店は、実は近接している「銀座割烹 里仙(http://risen.jp/)」の料理人が監修のもと、里仙でお出しさせていただいている数々の商品のうち、とりわけ好評をいただいている「和菓子」や「おつまみ」「お酒や調味料」などを中心に、特別な方への贈り物やご家庭できちんとお召し上がりできるように、ご用意できる商品を一から開発し、お届けすることを考え、商品をこしらえました。食べていただく皆様に、できるだけ美味しく、新鮮なものを召し上がっていただくために、一部冷凍商品については、ご予約ののち、お渡しという形を取りました。

「銀座8丁目」は、やや新橋寄りで、昔ながらの銀座の良さを残した地域です。周りはほとんど飲食店、クラブが多く犇めきあっている場所です。またこのお店の場所は、江戸情緒を残す「銀座の最後の砦」と言われている由緒ある「金春(こんぱる)通り」でもあります。

室町時代以来繁栄し、江戸時代初期から観世太夫とともに江戸で能を演じていた名家、金春流の屋敷があったことから、その名をとどめていますが、昔、能芸者が歌や舞などの芸に秀で、おもてなしの才能にも長けていたことから、昭和40年代まで多くの芸者の集る花街として賑わっておりました。

そうした中、弊社がこのお店に掛ける思いとしては、

1、旬の素材を生かした、至高の料理を愉しむ。

2、洗練された盛り付けや吟味された器を愉しむ。

3、まごころのこもったおもてなしを愉しむ。

このいくつかの愉しみが、食を健康へと導く大きな支えとなる、と考えました。

改めて日本食、和食の良さを鑑みた場合、そこで提供したい商品は、銀座割烹 里仙の、食にかける「おもてなし」と思っています。普段からこの割烹屋をご愛顧いただいております皆様に、手間ひまかけて、生み出される割烹の数々の味を気軽にお持ち帰りいただけるような商品を提供することが新たなチャレンジではないかと考えました。心と体で「感じる」を愉しむことが、「新たな、和食に対する、食の接点作り」だ、と思っています。

さて、この秋11月には、渋谷駅上に新しくできる商業施設に、海外から運んでくる食のブランド作りを実施しております。実はテーマは「和」です。こちらも新しいブランド作りで、四苦八苦しながら、試食含め作り始めております。ぜひ楽しみにしていてください!

[店舗情報]

銀座里仙「八八八(hachi)」

〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目8番8号

TEL 03-3289-2788

営業時間 11:00-22:00

定休日 不定休

アクセス 東京メトロ「銀座駅」徒歩5分/「新橋駅」、それぞれから金春通りまで徒歩5分

WEB http://risen.jp/hachi/

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
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Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第65回

シェフが恋した塩尻野菜のスープが、出来上がった!

4月1日(月)より、平成最終月がスタートした。それとともに、新元号「令和(れいわ)」が発表された。まさに、新しい元号を迎え入れる気持ちが、いま日本で湧き上がっている。近年では、明治、大正、昭和、平成、そして令和と5人の天皇陛下が変わるわけだけど、その中でも令和は、今までとちがって「祝福された」元号とも言える。これだけ「元号に対する期待感」があったのも珍しいと思う。単語自体は、すこし冷徹なイメージがあるが、凛とした凛々しさがあり、潔いイメージでもあるし、かといって好き嫌いという感情が芽生えないのが、素晴らしいことだと思う。

そんな中、新しい季節とともに自宅に届いたのが、これまた新しくうまれた商品だった。

それは、「シェフが恋に落ちたのは、塩尻で美味しく育った野菜たちでした」というキャッチコピーがついた「シェフが恋した塩尻野菜のスープ」という商品だ。中身は冷凍食品。けれど「非常に温かみがある商品」という印象を受けた。実はこの商品、開発から商品が出来上がるまで、僕の友人が3人ほど関わった商品だ。

まず一人目は、世界的ソムリエ、石田博氏。2000年、第10回世界最優秀ソムリエコンクールで第3位に輝いた石田氏に誘われて、僕は塩尻に2回ほど足を運んだことがある。理由は「桔梗ヶ原メルロー」だ。日本ワインといえば、やはり山梨、特に勝沼には世界的水準のワインを産出するワイナリーがひしめいている。特に甲州ブドウは独特の風味をもつワインをつくる日本土着の品種で、世界のソムリエも注目している。その山梨の隣にある長野県の、塩尻市が誇るメルロー種が石田氏も気に入っており、僕も紹介されて、その土地のメルロー種のワインを飲みまくった。圧倒的な凝縮感をもちながら、滑らかで、きめ細かな渋みをもった、大変魅力的な味わいが持ち味で、僕も気に入ってそれから「塩尻のメルロー」は大のお気に入りだ。

そして石田氏と行った塩尻で出会い、今回の「塩尻野菜スープ」をこしらえた「ラ・メゾン・グルマンディーズ」シェフである友森隆司氏が、2人目の友人だ。友森氏は東京、横浜のレストラン勤務を経てフランスで修業をしたのち、塩尻市産野菜のおいしさと種類の豊富さに魅了され、2011年に塩尻市でフレンチレストランを開店した。当時は、塩尻の食材を活用しながら、塩尻でしか食べられないフレンチ料理を提供し、好評を博していた。僕もジビエの食材を、友森さんを通じて相談したり、気さくでアイディアマンだ。

その友森氏とともに、一緒にこのスープを開発したのが「NPO法人ハナラボ」だ。ハナラボを立ち上げた代表であり、僕の3人目の友人でもある角めぐみさんは、「誰もが社会変革の担い手になる社会」を目指し、女子学生のリーダーシップと創造力を育むことを目的として、実在の社会課題をテーマに、女子学生が課題解決プロジェクトに挑戦する集団を作っている。実は今回この企画が立ち上がった時に「そもそもスープを商品開発するのはどれだけ大変なのか、学生の相談に乗って欲しい!」ということで、3時間ほど、会議室を借りて、ミニ講演会を実施。企画から実施に落としこまれる時の大変さと、それにまつわる準備、これからすべきこと、いつ発売するのかまで、白板を使って事細かく話をさせていただきました。ハナラボの活動はいつも気になっていて、時折企画設計にも入れさせていただいています。まさに異なる大学の女子大生が、チームを作り、商品の企画から製造、販売マーケティングまで行うプロジェクトとして、このスープを作り上げたのです。塩尻で生まれたスープが、こうして手に届くのは、非常に感慨深いものです。

さてそれでは早速の味見。実は僕も初めていただくことに。この商品、いくつかの種類があるのですが、その中でも気に入った「塩尻冬野菜のポトフ」を紹介させていただきます。食材は、塩尻で育てられた玉ねぎ、にんじん、ごぼうなどの根菜を中心とした冬野菜と、信州福味鶏が見事な特大サイズとして入っています。実は「冷凍食品」というのもミソで、解凍して食べさせる方法として、ものすごく「今っぽい」作りになっていた。それも「味とは別の提案」として、的を得た提案でした。いまの女子大生が真剣に考えたんだなと思うものです。

僕が気に入ったのは、「レンジでチンして簡単にできる」です。え?当たり前すぎて、どこがすごいのか、という部分ですが、こうした地域活性化を目的とし、女子大生が企画する食品の商品開発において「自分たちが理解できていないノウハウやスキルを、食業界の専門家に任せておざなりになってしまう」ということです。今回の場合でいうと「冷凍」「気軽に手料理」という部分です。このスープを包んでいるパッケージですが、非常に特殊で、このまま皿に乗せて温めても「破裂しない」仕組みになっているものを扱っているということです。普段の地域商品では、こうした点は見過ごされがちで、ここまでたどり着かないものが多い。「代わり映えがしない」理由の一つです。商品開発は「レシピ」や「アイディア」、「パッケージデザイン」といった「売り手が売りたい商品」をブラッシュアップしがちなのですが、「買い手が買いたい商品」の特性をしっかり読み取り(=マーケティング)、商品に落とし込んでいる、見事な「商品開発」だと思います。

スープの出来栄えも、友森シェフならではです。分量も多くなく、1人分でちょうどよく、今回入っていた5種類をバランスよく食べるためには、飽きずに、ちょうど良い分量でした。ただ、少々塩っけが強いのは、冷凍食品という特性かもしれません。また冬というキーワードがある分、寒い時期に少し熱めに温めて飲むと、その塩っけさも気にいるのではないでしょうか。(僕は少し気になりました)また、商品を温める際に、せっかく良いパッケージ袋に入っているのに、「何度で何分温めるのか」が抜けていた。もちろん別途入っている説明書を読めば記載があるが、地味に手元に情報が欲しい。(多分、袋の業者次第だ)まだまだブラッシュアップが必要です。

***

もちろん、これからも春、夏、秋と塩尻スープは続いていく。僕も楽しみだし、女子大生も「学年が変わり、卒業した人もいれば、新しく入ってくる人もいるだろう。できるだけ、メンバーを変えながら、塩尻の人たちと継続的に関わりを持って、成果を出し続ける商品としてあって欲しいと願っている。是非みなさんも、「シェフが恋した塩尻野菜スープ」を試してみてください!またその感想をお戻しいただけると、より良い商品に、さらにパワーアップすると思います。

シェフが恋した塩尻野菜スープ https://soup.hanalabs.net/

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
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Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第64回

お米で麺づくりを、本気で考えてみる。

先日、茨城県潮来(いたこ)市の道の駅、「道の駅いたこ」に足を運んだ。実は、この道の駅で開発された「お米の麺」を見にきたのである。

さて、「お米の麺」って皆さん、ご存知でしょうか?米を原料にした麺(ライスヌードル)は、主に中国や東南アジアといった、米作が盛んな地域でよく食べられています。例えば、「ビーフン」は、中国南部や台湾で作られたものがよく知られています。細い「米粉」をはじめ、幅広のものや極細のものなど様々な形があり、肉や野菜と炒め合わせた焼きビーフンや、スープに入れた汁ビーフンなど、食べ方も色々とあります。最近日本でも浸透してきた「フォー」は、ベトナムの麺。平たい半透明の麺で、あまりコシが無いのが特徴です。鶏肉や牛肉などの具と野菜を入れた、スープ仕立てで食べるのが主流です。タイでは、極細の「センミー」、細めの「センレック」、平たい「センヤイ」という、3種の米の麺があります。こちらも、スープをかけたり、和える、炒めるなどして食べられています。この他にも世界には、多種多様な米の麺とその料理があります。その米麺を食べるとすると、日本のこうしたアジアン料理のお店で提供される麺はおもに輸入麺なのです。実はアジア本国では「生麺」が主流ですが、その製法や保存方法の難しさから国内で流通している麺のほとんどが「輸入乾麺」なのです。

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しかし、この「道の駅いたこ」では、自分たちで「生米麺」を製造し、調理販売しているのです! そこで気になってわざわざ足を運んだ次第。

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実は、この生米麺の製造と販売について、抜きん出ている地域と企業がいます。それは、首都圏を中心にタイ料理20店を含む38店のレストランを展開する㈱ミールワークスさんです。ミールワークスさんも、2014年までタイからの米麺を直輸入して使用してきましたが、輸入制約上、本場タイの生麺に比較して味・食感が劣る乾麺しか入手できず、国内で高品質の生米麺の調達を模索していました。そんな中、彼らは、「レストランでの使用に納得のいく品質の麺が見つからないのであれば、オリジナルで作るしかない!」と、新潟・上越市の農家と製造メーカーと組んだチームで試作を繰り返した結果、本場を超える味の生米麺「クイッティオ」の開発に成功しました。試験導入から1年5ヶ月で当初の月産量0.6トンから実に8倍の4.8トン強に急成長。現在では、米の作付け量から見直す(今期220トン!)など着実に増産体制を構築しています。

ただ、この数字と実績を見ていくと、レストラン及び小売マーケットでの認知が進むにつれ、確実な需要の増大が確信できる商材に見えますが、実は良い生米麺を作るためには、いくつかの条件をクリアしなければならないのです。

まず、ご飯として炊いて美味しいお米は、麺にしても美味しいはず!なのだが、実はごはんのお米で米麺を作ってみても、なぜか「もちもちとした食感」と「つるっとしたのどごし」が再現されない。その原因は、生米麺を作るための米に含まれる「アミロース」と言われる成分のことであり、いわゆる「高アミロース」でないとうまくいかない。そこでタイ米など長粒種米同等のアミロース分が高品種改良米、新潟の「越のかおり」を使用することに。

次に、製造分野。高アミロース米「越しのかおり」を使うのだが、すりつぶした粉を練って押し出す製麺法とは異なり、米汁を炉で蒸してシート状にしてカットした麺は水分保持量が均質で、調理後も「もちもち」「つるしこ」が続くことが判明。その食感を叶えるためにタイより製造機械を輸入し、独自の改良を加え、日本に唯一のタイ式生米麺製麺機を作り上げたのです。日本ではつなぎを多く使用した乾麺が主流ですが、タイ式では極力つなぎを少なくしているので、アレルゲンもなく、消化吸収がよく、小麦麺より低カロリーな米麺を実現したのです。

流石に、いますぐ生米麺は作れる、というのは難しいですし、新潟県上越市の農家さんやミールワークスさんの試みは流石としか言いようがありません。

もちろん、こうした大規模展開だけではなく、上越市やミールワークスさんの動きを見ながら「道の駅いたこ」でもチャレンジ。もともと「米どころ」として知られる潮来市のPRやコメの消費拡大を目的に、同市や商工会などが2016年から取り組む「水郷潮来プライド米プロジェクト事業」で開発したもの。コメの品種はやはり、高アミロース米の「夢十色(ゆめといろ)」。製粉機と製麺機はベトナムまで行き、直接買い付けた。スープは、都内のベトナム料理店シェフや市内のベトナム人らからアドバイスを受け、日本人好みに調整したものだ。さっそく道の駅で提供されていたので食べることにした。

スープは牛骨と野菜でだしを取り、さっぱりとしているのですが、飽きがなく、食べやすい。道の駅のフードメニューとしては、新しいチャレンジだと思う。

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こうして「生米麺」の提供状況を見ていくと、上記で書いた2つの方向性には大きな違いがある。まず、ミールワークスさんは「売り場が確実にある」、つまり「マーケットイン」の発想からスタートした商品開発だ。使う側=飲食店が使用していた乾燥輸入麺を生米麺に徐々に切り替え、40店舗近い飲食店に展開している。さらに生米麺を軸に飲食店の業態開発を行っており、手堅いビジネスモデルだなという印象。一方で、潮来市は「道の駅」として、地元の消費や話題性を狙っているところを感じるが、まだまだ展開に余地があり、詰まり切っていない印象だった。

商品を作れる、展開できる、が、売り先は?という問題にぶち当たる。それが、「プロダクトアウト(商品はあるが売り場がない)」される商品の行く末だ。一方の「マーケットイン(売り場に必要な商品を作る)」の商品は、売り場が確保されているので、中長期的なビジネスモデルが作りやすいと言える。もちろん、それを買い切る飲食店が中心にあるから、ことが足りるのだ。もっというと、いわゆる補助金ベースで、作り上げたものではなく、飲食店が自らプロジェクトを切り出し、自分たちで生かしながら、商売につなげ、自主採算で事業が回る仕組みを作りつつ、生米麺を生かしている事実がある。これは大きな差だと、僕は思う。

商品の資質は、おいしさ以上に、場づくり、売り場づくりが重要だ。生米麺、引き続き僕もチェックしていく。この商品は面白いが、まだまだ知らないことが多い。日々是精進。

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第63回

山陽地方の「UDON BAR」。

最近、仕事の都合上、山陰地方に出張が続くのですが、どうしても出張の次の日の移動を考えると、飛行機の時間が合わずに、泣く泣く高速バスで広島に移動し、翌、早朝に新幹線や飛行機で移動することがあります。

その時、夜遅く広島に着くと、大抵のお店が閉まっていて、なかなか良いお店にたどり着けないのですが、先日、飲食関係の友人のオススメで「夜遅い(二十四時近く)ですが、ぜひ銀山町のうどん屋に行ってみてください」と提案を受けて、早速向かうことにした。

繁華街を通り抜け、目的地までくると、ふと建物の2階に、ひょっこりと「うどん」という提灯がぶら下がっていた。「あれ?2階?」という、うどん屋にしては珍しい立地という点が惹かれるのだが(笑)、実は、よくよく食べた後に調べてみたら、広島に脚を運ぶ際に是非チェックしてもらいたいグルメ本「広島極上レストラン〜珠玉の77皿」に掲載された、一目置くうどん屋だったのだ。ちなみに、そのグルメ本は、もともと一流料理人からの信頼も厚く、食通としてその名を知られる広島在住の佐伯和彦・貴子夫妻が、自信をもっておすすめする、とっておきのレストランを紹介するもので、料理はもちろん、空間、料理人ともに訪れる人を魅了する広島の極上な58店舗から、各店の逸品77皿を紹介した書籍です。

さて、そのうどん屋に入るべく、ビルの入り口から2階に上がると、扉の上には、「一本」という潔い店名が。

扉を開けると、この夜半に座席は満席。気立ての良い、スキンヘッドの店主が、黙々と調理と接客をされている、小さなうどん屋だ。

メニューは、壁に貼り付けてあるホワイトボードに、各種「うどん」と「おにぎらず(?)」の記載のみ。早速席があくまで15分ほど待ち、ようやくオーダーにありつけた。うどんを出すにも少し時間がかかるとのこと。少しの待ち時間、お酒をいただく人たちには「肴」があるようで、せっかくなので2品程度もらうことにした。で、すっと出てきたのが、こちらの2品だ。

一つ目の品は、ホタルイカの沖漬け、のようなものだが、温かい汁物で漬けてある。「そのスープを“飲まずに”ホタルイカだけ食べてもらえれば・・・」と店主から一声あり。さっそくホタルイカを食すと、思いのほか味付けが濃く、酒の肴にはぴったりの商品。ほんのり温かくて、遅い時間にはホッとする味わい。「飲まないように」といわれたこのスープ、やはり気になったので、すこし飲んでみると、ホタルイカ以上にグッと味の濃さを感じるもので、一緒に入っている「柚子」が酸味を加えて、アクセントになっている。

さらに続いて出たのが「〆サバのおろしがけ」。山陽地方独特の甘い醤油をベースにしたつけ汁と、〆サバがこれまた絶妙。ただ、僕が住んでいた青森のものとは違って「濃い」「しょっぱい」「甘い」というはっきりした味の差だけではなく、どことなく「優しい」味わいを感じるのだ。よくよく店主を見ると、意外や意外、うどんを打つ真剣さと優しさが同居している人物だ。

お酒とともに、肴をつまみつつ、それと並行して僕がオーダーしたうどんは「鍋焼きうどん」。具は「鳥肉」「しいたけ」「たまご」「厚揚げ」「かまぼこ」「ねぎ」「天かす」。出汁はかなり濃い目だが、どことなく「甘さ(=僕はこのお店では優しさに置き換えておきたいが、この優しさがこのお店の料理に随所に出ている)」が際立ち、そしてその甘さは、いやらしくなく、常に食べてもらうお客様に、「優しさ」を提供しているのだ。そして、うどんは細くつるつるとしたもので、コシはそれほど強くなく、のどごしがいい。こんなうどん屋があるのなら、広島でさえ、わざわざ通いたくなる、絶品のお店。

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しかし、蕎麦もさることながら、饂飩(うどん)、そしてそれを引き立てる「出汁つゆ」の、飲食に関わる展開が多くなっているのは事実だ。うどんは、香川県の「讃岐うどん」、秋田県の「稲庭うどん」などが有名だが、「和食」という視点からだと、さらに「鰹節」のような素材から、そこから作られる「出汁」へ、そしてその出汁が作り出す「旨味」へと繋がり始めており、言葉も「DASHI」「UMAMI」という言葉が、言語化され、海外に向けた「鰹節」「出汁」「旨味」を紹介するマーケティングからプロモーションまで、展開されるのを目にすることが増えている。またうどんについていえば、香川にインバウド向けに「UDON HOUSE」という業態ができ、うどんのことを作ること(単に作るだけではなく、食材の採れるところから)から食するところまでを一泊二日で体験できるツアーもある。うどんを紐解くと、とても面白いのだ。

今回の広島のうどん屋さんは、海外からすると「UDON BAR(うどんバー)」ではないか。これまでのうどん業態を考えた時は、「手軽に早く、ランチ商材として」というイメージが強い。それを夜の業態にしたのが、「つるとんたん」や「美々卯(みみう)」であり、さらに小料理屋のようなしつらえで、肴を取り入れ、ビールや日本酒をキュッと飲みながら、締めにうどんをきっちり食べるこのスタイルは、深夜に食しても、お腹に優しい、まさにうどん「優しさ」がさらに引き立てている印象だ。うどん好きに限らず、広島の食の夜のワンシーンとして、ぜひチェックして欲しい。

うどん屋一本:https://tabelog.com/hiroshima/A3401/A340101/34021344/

UDON HOUSE:https://udonhouse.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第62回

青森ごほうびスイーツ、出発!

お待たせしました!前回お伝えしたように、「あおもり健康志向スイーツ」が2月24日(日)に、新商品発表会、展示即売会が実施され、無事に船出をいたしました。

このプロジェクトは、僕の故郷でもある青森県の県庁内ベンチャー事業として、庁内の若手職員が手を挙げて、スタートしました。まずはじめに、昨年2018年の夏より「あおもり健康志向スイーツゼミナール」を開催、私も講師として参加させていただきました。そして、このゼミナール参加者が新しく開発した商品を、県民や事業者に広く認知し、認知度の向上および県内事業者の参入を促進するため、この度開催されたのが「あおもり健康志向スイーツフェア」です。

蓋を開けてみると、スタートからものすごい人です。朝10時とお昼13時、2回に分けて新商品発表会をさせていただきました。お昼の会には、青森県知事である三村氏も駆けつけ、今回プロジェクトに参加したお菓子事業者の新商品を、ブースごとに巡って試食もさせていただきました。商品は100〜600円ほどの価格帯。フェアに向けて各事業者が、商品をブラッシュアップさせて、お客様に提供できる商品にきちんと出来上がったのだと思います。またどの商品も今回の商品開発にあたる際に「どんな情報をお菓子に持たせるか」ということを意識して作った商品たちだと思いました。僕としては非常に嬉しかったです。

僕は、スイーツを作り上げるために、いくつかのポイントに絞り、そのポイントに紐づいた商品開発をするようにというアドバイスをしました。例えば「一点突破型」。食材や作り方がたくさんある中で、「どれか一本に技を絞る!」ということをやります。例えば、みなさんの身の回りですと「BAKE」というチーズタルトがその一例だと思ってください。一つの商品だけで日本限らず、世界まで展開しており、かつ「どんな場所にどんなふうに」お客様に提案しているかを分析し、それをみなさんにビジネスとしてどのように活かすのかを提案していきます。

その手法で商品を作ったのが、ベーカリーショップ「リトルプリンセス(https://faavo.jp/aomori/project/2656)」さんです。青森県でも有名な地酒である日本酒の酒蔵、三浦酒造さんが作られる「豊盃(ほうはい)大吟醸」の酒粕をチョコレートに混ぜ合わせた「あおもり生チョコレート<豊盃大吟醸>」を作り上げました。商品コンセプトは「美と健康」とし、酒粕、カカオポリフェノールを含む生チョコレートを開発。入手困難な日本酒の酒粕を贅沢に使い、食べた時の酒粕の香りがしっとりと口の中に広がり、お酒が苦手な人でも十分に食べられる商品になりました。もちろん、お酒好きの人が食べるにも抜群の商品になったと思います。ちなみに酒粕は100g中に、15gのタンパク質を含みます。これは納豆言えばワンパック100gほど、肉にすると80gに匹敵する量なのです。チョコも食べながらも栄養を考え、気にせず食べられる商品と言えるでしょう。この商品はこの春、本格販売になります!単なるブランド名日本酒チョコレートのような、「販促物」ではなく、スイーツの本質を問い、気軽に食べられる商品として展開しています。540円(税込)ですが、飛ぶように売れておりました!

次に「地方創生型」。どこの地方でも「県産素材」をつかった商品開発をするはずです。その際に、お客様が「地方から買って帰りたい商品」であるべきです。今回この問いにチャレンジしたのが、七戸町の「お菓子のみやきん(http://okashinomiyakin.com/
」です。「青森リンゴ」と「七戸(青森の地方都市)カシス」といった県産素材に、スーパーフードである「チアシード」を組み合わせ、食事代わりにもなる、満足感あるクッキーを作りました。これまで「まちのお菓子屋」、「和菓子屋」としてお菓子を販売してきたお店が、はじめて健康を意識した食品としてチャレンジしたものであり、「(フェアにお客様が来るといっても)30個ほど売れるとまあまあかな、350円(税込)も高いしね、、」と話をしていたら、実際に販売してみると80個以上売り上げる成果を出し、「正直驚きました、こうして成果がでると、チャレンジする意味があるなと思いました!」といっていただきました。

単に県産素材を使った商品開発もこれまでやってきたと思うのですが、商品が持ちうる「意識の持っていき方」として、県産素材を使いながらも、「チアシード」をきちんとどんなふうに使うかを、パッケージの前面にきちんと出して販売することで、お客様にわかりやすく訴求できたのだと思います。またゼミナールに参加された皆さんが、それぞれ自分たちの商品と向き合いつつ「お客様が欲しいがある商品とは?」を十分意識されたのだと、会場にいて改めて感じました。

この他にも紹介したい商品があるのですが、商品販売前ということもあり、きちんとご紹介できないこと、また僕らが予想する以上に来場者が多く来られたこともあって、フェアの終了時間17時前、15時の段階で「完売終了」発表が6、7件出てしまうという嬉しい想定外(!)が起きました。なかには正午0時の段階で想定以上の売り上げで、工場に走り、そこから都度6−7回商品を持ってこられた事業者もおりました。「お菓子フェア」ということも、これまで百貨店や道の駅での展開が地元では多かったと思いますが、こうして観光物産イベントスペースに、県内の事業者が一堂に会して、それぞれの商品を販売することはないですし、自店舗以外でパティシエやシェフが自ら販売して、自らの商品を説明することはない、農業界でいえば「お菓子のマルシェ」のような感じなったのだと思います。それだけ会場の雰囲気もよかったと思います。

「スイーツ(お菓子)」は、人を笑顔にします。そしてその笑顔を生み出すために、さまざまな素材や作り方が絡みあい、切磋琢磨し、素敵な商品を生み出している。青森県で、スイーツの可能性を探る旅でしたが、この旅は春以降もまだまだ続きます。ぜひ楽しみにしてください。

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第61回

「食べるモノ」と「食べるコト」のつながり。

第48回のFoodnia Japan blogで、2018年度青森県との取り組みとして、あおもり健康志向スイーツプロジェクトが発足したことをお伝えしましたが、ようやく形が見えてきましたので、ご報告です!

これまでのあおもり健康志向スイーツプロジェクトは、「からだにやさしい、ごほうびスイーツ(以下ごほうびスイーツ)」というネーミングに生まれ変わりました。

私たちは、本プロジェクトに参加した事業者とともに、「お菓子は幸せなひと時を与えてくれるもの」「笑顔にしてくれるもの」だということを共有してまいりました。そのため、甘いものが好きだが「病気を抱え、甘いものを諦めなければならない人」、「ダイエットが気になって、甘いものを我慢している人」をプロジェクトからできるだけ排除せず、その人たちのニーズにもどのように応えていくかを課題として取り組みました。

お菓子が与える幸せを、多くの人に届けたい。そのため、ごほうびスイーツは、「健康を意識したお菓子」に特化し、原材料や作り方を変えたり、素材の良さを活かす工夫を凝らし、お菓子を我慢していた人にも、お菓子が大好きな人同様に満足していただけるようなお菓子を提供することをポイントにしました。それが、僕らの考える「最大限の、体に与えるごほうびスイーツ」なのです。製造工場のメンバーやパティシエたちのノウハウやスキルを元に、それぞれの社風や特徴を活かしたスイーツを提供することにしました。

スイーツを作るキーワードは4つ。「いつでも」「だれでも」「おいしく笑顔」「あおもりらしく」です。

「いつでも」は、毎日食べてもOK、さまざまな生活シーンや用途で、時間帯を問わず楽しんでいただけること。例えば、間食や深夜に、罪悪感なく甘いひとときを楽しめるよう、カロリーや糖質を従来の商品から見直してみる。いかに手軽に食べていただくかがポイント。次に、「だれでも」は、食事制限がある方、ダイエットや美容が気になる方、アレルギー体質の方などに対して「安全・安心」を意識したもの。従来よりも糖質やカロリーを控えた商品づくりや、素材を意識した商品づくりに取り組み、食物アレルギー特定原材料を含まない商品づくりにスポットを当てます。そして「おいしく笑顔」は、年代にこだわらず、自分の舌に馴染んできた味をずっと楽しんでいただけるような工夫や、お菓子が大好きな人たちが満足する商品づくりに取り組み、食べた方に笑顔を作る想いを持つこと。小さい頃に食べたお菓子が、いまもなお現代に残り、人々に懐かしさを醸し出し、「また食べたい」と思う気持ちを、作り手に持ってもらいたい。最後に「あおもりらしく」は、青森県にある食材や伝統的な食文化を特長として活かし、自分たちの商品に自信を持って誇らしく「青森らしさ」を表現してほしいというメッセージを込めて、今の商品に取り組んでほしいし、食べた人にも是非、他の都道府県にはない「青森らしさを食べて」感じてほしいと願うものです。

実はこの4つのキーワードに込められた想いの中心は「食べるモノ」と「食べるコト」をどう繋げていくかを「言葉化」した、ということです。みなさん、次の写真は、なんの写真でしょうか?

通常であれば「いちご」の写真です。けれど、商品を買う人は「いちご」以上に「どんなブランドか」という商品が発する「情報」を見ています。「あまおう」なのか「とちおとめ」なのか。「いちご」と表現するより、「ブランド名」がはっきりしたものを、お客様は選びます。今回のごほうびスイーツも、「低カロリーシュークリーム」よりは「ごほうび 糖質ゼロシュークリーム」の方が、「ごほうびスイーツ」を冠とした商品としてより明確となり、お客様も「これがごほうびスイーツのラインナップなんだな」ということがわかります。ものすごく単純なことなのですが、この「小さなヒント」を見逃す事業者が少なくありません。お客さまが見ているのは「低カロリー」ではなく「糖質ゼロ」という言葉です。

今回、このプロジェクトに賛同して、事業に参加するのは10社の事業者さんたちです。自営業のお菓子屋さんから、海外に展開するお菓子業者まで、非常に示唆に富んだ提案が多く、僕らも勉強になりました。そしてその事業さんに伝えたことは「情報の伝わり方のデザイン」です。事業者さんにはノウハウとスキルはある。けれど、消費者に伝える情報のデザインの仕方に、ヒントを与えてあげることで、これまでよりも商品が販売しやすくなるはずです。

「ぜひ食べてみてください!」ではなく「お、ほしい!!」という気持ちにさせなければならない。「おいしさ」「品質」「うまみ」ではなく、その商品と合わせて食べるもの、その商品を使うレシピ、その商品に合わせる調味料を思いうかべるようにする。ここに商いの基本があると思います。もっというと「食べるシーン」を思い浮かべられるか。ここが「食べるコト」の基本です。

さて、ごほうびスイーツは、2月24日に、青森県知事とともに発表会を青森で実施します。発表してからもさらに事業者同士で切磋琢磨し、より「ごほうび」に近づけるように、皆様の食卓に届くように、引き続きプロデュースしていきたいと思います!

 

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
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Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第60回

日本のお味噌、北海道のお味噌を世界へ!

正月も明け、大寒が近づく一月中旬。私は、4年ぶりの中国・上海に足を運んだ。

実は、先日blogにも書かせていただいたが、「新潟清酒(にいがたせいしゅ)」と呼ばれる地域団体商標のほかにもう一つ、「北海道味噌」を海外に販路展開していくプロジェクトを、日本貿易振興機構(以下JETRO)のお仕事として、合わせて取り組ませていただいております。

「北海道味噌」という地域商品、皆さんはご存知でしょうか? 北海道といえば、海の幸、山の幸が豊富で、「おいしい名前の都道府県」としても有名であり、また「味噌」という部分でいえば、言わずと知れた「味噌ラーメン」といった普遍性の高いものから「ちゃんちゃん焼き」といった郷土料理まで幅広く活用された調味料と言えるでしょう。とはいえ、信州味噌や八丁味噌のように、「とんがり」を持った特徴的な味噌ということではなく、むしろ「クセがなく、誰にでも愛される味噌」であり、いわば「日本の味噌の中でも『スタンダードな味噌』」と言えるのかもしれません。

今回のお仕事を頂いた時に、「北海道味噌」のブランドづくりにおいて、北海道味噌についての歴史から、その背景に至るまで調べさせていただきました。北海道は明治時代に大きく「開拓」という活動が起こり、日本全国から多くの人が、北海道という新しい土地に夢や希望を持ち、訪れ開発した経緯があります。その際に、その開拓の糧となる食材として、お米とともに欠かせなかったものとして、多くの地域の味噌が津軽海峡をわたり、時間をかけて「北海道らしい」新たな味噌が生まれたと言われております。

そして、北海道らしく、その雄大な自然から、多くの生産量を生み出し、そこから主に業務用・大量消費向けの商品としても販路を拡大、今は、日本の味噌業界においても、おおよそ22事業者の味噌企業があり成長しているのです。

しかしその北海道味噌も、今転機を迎えております。北海道の、新千歳空港を軸に、多くの外国人、特にアジア系の観光客、そしてビジネスマンが訪れるようになりました。東京などの都会とは異なり、大自然に囲まれた上、空気や水がうまく、それでいて食事がうまい国の都市は、アジアでもそんなに多くはありません。また、冬という季節も大人気で、雪が降ることはもちろん、ニセコなどをはじめとしたスキー場の、インバウンド向けの宿泊施設や飲食店も流行っており、観光客のニーズに応えはじめています。そうした中、北海道に来た外国人観光客は「北海道の食材の良さ」に気づき、それをビジネスにしたいという方も増えてきております。例えば、味噌の会社を丸ごと買い取りたい、商品を仕入れたい、ということも少なくありません。また「北海道味噌」という商品名の味噌が、国産もの(つまり中国産で作られたもの)で販売されており、ボーダー(国境)を超えた「北海道問題」が、起こりつつある現状です。

そうした状況を踏まえた上で、北海道味噌の事業者を引き連れ、中国の市場を視察していただきつつ、「本物の北海道味噌」を上海に売り込むためにはどうしたらよいのかを改めて感じてもらうために、上海に足を運んだのである。

視察内容は、少し省かせていただきますが、今回、数社の日系企業の小売販売店を視察でき、都度現地日本人担当者に対応をいただき、主に味噌の販売についての輸入状況や商品の情報、売り場の展開、マーチャンダイジングの仕組み、ターゲットとなる中国人の性格や感覚、「北海道」のネーミングバリューなどを中心にお話を聞くことができました。

今回、海外市場においての、輸入品としての「味噌」「日本食材」の、中国人による捉え方、そして中国人の「食に対する考え方」の明らかな違いに、僕は驚きつつも、非常に示唆があるきっかけが見えたと思っている。単純に「中国人はここが違う!」という差別化ではなく、「中国人とはこういうことだ!」という確固たる自信、特異点を見いだすことに近い。いずれにせよ、「中国で味噌を広める、食べてもらう」ためには「中国で味噌を食べたい・・・!!」という感情的かつ買い手のモチベーションを上げていくことが重要だ。しかし、とうとう味噌も普通に上海の小売販売店で見かけるようになった。この商品が日本を飛び出し、世界に打って出ていくことがもっと増えるし、それが「当たり前」になるということを、僕らももっと自覚して、海外と付き合っていかなければならない。そして「和食」の源の一つである「味噌」も、この時代の流れにのって、おいしい味噌を提供していかなければならないのだ。僕が前述した「日本の味噌の中でもスタンダードな味噌」と記したが、さらに「世界の味噌、北海道味噌」としてポジショニングを少しずつ作り上げていくことだと思う。まだまだ世界は広く、おいしい味噌を広げていくチャンスが迫っている。日本のお味噌、北海道味噌を世界へ!

北海道味噌醤油工業協同組合 http://www.hokmisho.or.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
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Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第59回

ニッポンの和食を、愛でる気持ち。

新年明けましておめでとうございます。

2019年平成最後の年越しが終わり、あっという間に、成人式も過ぎ去り、皆さんの日常も、普段と変わらない生活に戻られたのではないでしょうか?

私は年明けより、いくつかのプロジェクトの仕上げに入ろうと準備を進めています。まずは、この美味しそうな「おにぎり」ですが、昨年より進めている「秘境奥島根弥栄」のお米について、このお米を欲しいと思う方にすこしでも届けたいと、「美味しいお米を食べてもらうすべ」を試行錯誤しております。その中で、伝え方の一つとして僕は「おにぎり」が、一番わかりやすく、美味しく皆さんに食べていただけるのではと、自負しております。写真からも、このおにぎりの「お米の粒の明確さ」がわかると思いますが、非常にしっかりとしたお米の強さが、にぎられたおにぎりでもはっきりしています。かつ、食べた口の中に広がる、食感と味わいもまた深く、このお米を食べられた方々にも、非常に好評です。この現物にいかに近づけるか、そのまま伝えることに全力を出していくのが、僕らの仕事です。

どこの地方、場所でも「美味しいお米」が生まれているはずです。その中で、これまでも多くの、お米に関する商品展開や販促活動を僕自身、見てきました。その大半が、「お米の特徴」「お米の機能性」「お米が作られている地域」「他のお米の違い」の情報が非常に多いことに気づきました。それは「差異を際立たせる」ことであり、いかにトップか、一番美味しいかという「宣伝」だと認識しております。一方で「お米の美味しさ」「どの料理にお米が合うのか」という、いわゆる消費者目線の情報は、一般化された言語化が難しい。だからSNSやインフルエンサーによる紹介などの「見栄え」に引っ張られる広報施策が増えていて、結果、そのお米を購入したのちの、「最初の一口」を味わうのが精一杯で、二口目、三口目とご飯を口に運ぶことに、その愛おしさ、新鮮さは薄れ、「買いやすさ」を求めた消費者は、日常で身近にある小売店で販売しているお米に手を伸ばすことが少なくありません。

そんな状況から僕らは昨年このお米にまつわる企画で「おともアワード」を実践させていただきました。

[おともあってのご飯です。] https://washoku-style.jp/blog/3270

―――(引用)お米にいわゆるマーケティングやプロモーションをかけていこうとしたとき、事業者自体が、生産者でない場合は、そのお米の良さを最大限に伝えていかなければならないのだが、お米屋ではないその人たちにとっては、結構難題であることがわかる。そう、つまりお米メインの直接的な伝え方ではなく、実は伏流のような、「お米を生かしていく」方法論が必要になる。そう、僕からすると、印籠を出さない水戸黄門は「だれ、この爺さん・・?!」という考え方だ。

少し極論めいたことを書いているが、日本全国のお米のプロモーションをみていくと「伏流」の筋ではなく、本流筋で「ど直球」ばかり。そこで、僕らは「伝わり方」を考えてみることにした。お米は食べているけれども、主食というよりは、なにか「副食」のような存在にもなりうるお米、という捉え方だ。

「おともあっての、お米です。」————

実は、ここで大賞をとったご飯のおともが、某雑誌の、カテゴリ別手土産ナンバー1を受賞しました。それだけ消費者は「今」を欲しがっているのです。僕らは以前から「本流=お米の美味しさの伝え方」を議論しています。一年間という月日を通じて、その秋に収穫できる生産物がお米であり、そのお米を販売し、地域の人たちの日常を支えているのが現状です。その「日常の支え方」のなかで、私たちが標榜する「人と、食の接点をよりよくする」立場からすると、その「支え方」が「食が取るべき人の目標(しるべ)」であり、純粋に生産物の美味しさを伝えていきたいと切に感じております。

そうした考えを元に「和食スタイル」をブラッシュアップするのが2019年と捉えています。2018年、海外からの旅行者が3000万人を超えました。日本の、現場の情報を持ち帰る人、発信する人が格段に増えています。今まではローカライズ含めて、訪れた現地の人たちに与える情報に合わせて、企画内容をいかに近づけるかという対応も多かったが、これからは逆に、一切ローカライズさせずに、「現生(ゲンナマ)」の状況を、できるだけ正確に海外旅行者に伝えられるかがポイントではないかと思うのです。

例えばスマートフォンで「その場で、手軽に、すぐ、全世界に」発信するスタイルは、テレビ局の報道カメラマンの感覚に近い「取材」スタイルであり、今それが求められていて、そうした「コミュニケーション力」、「伝え方」の精度を、作り手も、発信者ももっと上げていくことで、その情報元の「価値」を見極めたい。そして、より本質を伝えていくために、いかに「ゲンナマ感」を伝える手立てを設けるか。「かっこいい」とするならば、その情報元で生まれる「新鮮さ」「特異性」「貴重さ」を愛(めで)る気持ちを、和食の文化でこそ、担い、養うべきだなと思う。

このお米の企画を、平成最後の企画のひとつとして「愛でる気持ち」を大切に、新年の第一歩を踏みたいと思う。

■秘境奥島根弥栄  http://okushimane.jp/

■参考:「愛でる」とは

① 物の美しさ・素晴らしさをほめ味わう。感嘆する。

② かわいがる。いとおしむ。

③ ほめる。感心する。

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp