和食STYLE

EATRAVELLER HIROEの女子美食旅 ④シンガポール Seroja

29歳のシェフが半年前にオープンしたフレッシュなシンガポールのレストランSeroja(セロージャ)。マレー語で蓮の花を意味します。ブギス駅直結、アクセス便利なDUO Galleria内。白亜の貴婦人「ラッフルズホテル」からも徒歩圏内。と言っても実際歩いてみたら10分程かかりました。

DUO Galleria(デュオ・ギャレリア)は、アンダーズホテル、レジデンスやオフィス、レストラン等から成るスタイリッシュな複合施設。大胆なカーブを描く美しいファサード、幾重にもなるハチの巣デザインは日除けとしての役割も果たすという環境に配慮したデザインとなっています。広々とした緑豊かな中庭を散策しながら目指すも迷子になってしまいました。

シェフのケヴィン・ウォンは15歳から料理の道に入り、フランスやアメリカ、そしてシンガポールのミシュラン星付きレストラン「META」で研鑽を重ねました。8年前にシンガポールに戻る直前には東京の「レフェルヴェソンス」でも働いていたそう。

お味は首を傾げる難解なものではなく、誰もが大好きな、ほんのり甘めで癒されるテイスト。暑くて蒸し蒸しとしたシンガポールにぴたりと寄り添います。魚は日本やスペインから取り寄せていますが、マレーシアを中心にアジアの食材を積極的に取り入れています。

こだわりの米はマレーシアの山岳地帯の少数民族の村から、その他の食材、例えば、タマリンドやサンバルはご存知の方も多いかと思いますが、oddy (マレーシアのローカル酒)、ulamやkesum(マレーシアのハーブ)、バナナの花、ジンジャーフラワーの蕾、cempedak(ジャックフルーツの一種)、シーココナッツなどなど、次々に興味をそそられる食材が登場します。
また、シンガポールのセラミック、インドネシアのプレート、マレーシアの真鍮など、職人、陶芸家によるテーブルウェアも紹介されていてセンスが光ります。

お父様は漁師さんだったそうで、大きな魚は市場に卸し、売り物にならないような小さな魚で様々な料理を作ってくれたそう。そんな体験から作られたお父さんへのオマージュ、ラブアンソースは白眉。ラブアン地方の魚のソースにシェフ自らのアレンジを加え完成させた逸品です。 「いま気になっている店とか、行ってみたいお店ありますか?」と尋ねたところ「みんなでワイワイ楽しめるビストロや、家族や親戚で集まって美味しいものを食べるひととき、それが1番なんじゃないかな」と答えたウォンシェフ。長時間拘束されるシェフにとって、最先端の店に行くより、束の間の休日には家族や仲間で美味しいものを分かち合いたいそう。実に腑に落ちますね。

急成長を遂げるハイクオリティなグルメシーンを体験するために世界中からセレブリティやフーディーが集まるシンガポール。レストランの格付け「アジアのベストレストラン50」2023年版の授賞式が行われるなどシンガポール政府観光局が大々的に力を入れています。進歩的で革新的、多様な文化がぶつかり合うエネルギッシュなこの国でキレッキレに尖ったレストランに疲れてしまったら、優しさに包まれたSerojaで和んでほしいですね。

評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
食材への愛:生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか
地産地消度:地元で生産されたものをどれだけ消費しているか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか

わざわざ度 ★★★

食材への愛 ★★★

地産地消度 ★★★★

唯一無二度 ★★★★

リピしたい度 ★★★

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大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。