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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅 ③けい太(東京・西荻窪)

2019年11月にオープンしたばかりの店ですが、たちまちのうちに東京屈指の人気店の座に駆け上がりました。西荻窪駅前のビルの地下にありますが、最近では大抵予約で満席との表示が出ています。

店主の青木啓太さんは、実家が養豚を手がけており、その豚をお客さんに提供したいという思いからこの店をスタートさせました。実家の鹿児島県の名産、六白黒豚です。バークシャー種をもとに在来の黒豚と交配した豚で旨味の豊かさと肉質のきめ細かさで知られています。足の先、鼻の先、尾の先の6か所が白いことからこの名前がついています。六白黒豚のほかにやはり鹿児島産の南州自然豚も用意されています。

こちらの特徴は全ての要素が高いレベルで隙が無いことです。私は脂身が味わえるロースを注文することが多いのですが、この日は六白黒豚の特上フィレ膳にしました。一頭から二人分しかとれない貴重な部位であるということです。
このとんかつの表面は中心部が美しいピンク色で、思わず魅入られてしまいます。しっとりした歯触りが見事です。そして衣がぴったり肉について剥がれません。きっと目に見えない工夫があるのでしょう。塩、ソースのほか、醤油とワサビで食べるのも良く合います。ご飯は青森の青天の霹靂などのブランド米を吟味しています。キャベツにかけるトリュフのドレッシングがクセになる味で、お土産に買うこともできます。

不定期に開催されている「日本全国美味しい豚を巡る企画」は各地の個性的な豚が味わえるもので、機会があれば是非お試しいただければと思います。

どの点から見ても隙のない店ですが、ただでさえ取りにくかった予約が、TV 番組で紹介されてからますます取りにくくなったことが唯一の欠点と言えましょうか。

お勧めポイント
①どの点からも外れ無し
②六白黒豚の美味しさが味わえる

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。