和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第十八回 すし家 祥太

第十八回 すし家 祥太

憧れの漫画「将太の寿司」の握りを目指す

料理人になるきっかけはいろいろあると思いますが、「すし家祥太」の大将、祥太さんは漫画「将太の寿司」の主人公に憧れて鮨の道を選んだ韓国人です。韓国の調理師専門学校を卒業してから兵役を務めソウルの鮨店で働き、 来日。「鮨かねさか」で修業したのち「鮨一新」で二番手さんとなりました。祥太さんの評判がとても良く、親方の金坂真次さんから「祥太」と名づけてもらい「すし家 祥太」の大将に任命されます。その店はわずか 1年でミシュラン一つ星獲得という快挙、すごいもんです。

祥太さんは「握りをしっかり楽しんでもらいたい」とおつまみは2品、握りが14貫、お椀巻物と玉というおまかせコース。絶対足りないじゃん!と思いますが追加はタネがなくなるまでできるので安心です。何度か来ているけど最初がいつも「磯つぶ貝」な気がする。そしてすぐに握りになるので最初から「ガリ」も出てきます。この酢加減、割と好きなので結構お代わりしちゃうんですよね。そうそう、ここではいつもの調子でお酒を飲みながら「あん肝」をちまちま食べていると、とっとと握りが置かれるので気をつけましょう。

それで初めて伺った時にちょっと驚いたのは酢飯が温かいこと。なんでも来店の20分前に炊き上げているそうで、使う赤酢は3年以内の香りもうまみも控えめなもの。酢が主張してこないので、タネとなじんでいい感じだけど、まぁ、一貫めが「ひらめの昆布〆」だったのでびっくりしました。ところが「縞鯵」も「コハダ」もこの酢飯とすごく合うんですよ。なんか温かい酢飯、アリだな。

祥太さんはお鮨に対して本当に真摯に向き合っていて、韓国人だけど日本人の私より日本人っぽい仕事ぶりです。12時、17時半、20時の3回転をこなした上に、「毎日が修業です」と努力を怠らない。祥太さんの話を聞いていると、元巨人軍の松井選手が試合が終わった後に素振り300回を課していたという話を思い出しました。新しいことにもチャレンジしていて、貸切のこの日は「うど」や「ひらこ」の巻物を試食させてくれました。いやぁ、おいしかったです。本日のお会計は28,160円、余は満足じゃ。ご新規さまはなかなか予約が取れないのですが、一度でも伺うことができれば帰りに予約を取らせていただけます。ありがたや。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。