和食STYLE

EATRAVELLER HIROEの女子美食旅
①石川県輪島市 茶寮 杣径 (そまみち)

漆の塗師・赤木明登さんの書斎兼ゲストハウスが、料理人の北崎裕さんを迎え、オーベルジュに生まれ変わりました。プレオープンの時に伺いましたが、この春正式にオープンします。
中村好文氏による建築にミッドセンチュリー家具が並ぶ心地よい空間。客室2部屋のうちの1部屋は漆塗りのお風呂です。なるほど、食器でも口当たり良いんですもの、肌触りよく背中も足の裏も喜んでいました。

能登の食材は素晴らしい! 野菜はもちろんのこと、季節ごとに採れる海藻が何種類もあるのです。種々のキノコも香り高くシャキッシャキ。11月に解禁になる蟹はもちろん魅力的ですが、こちらでは野菜や海藻、天然茸がスターなのです。

一般的に、日本料理は多彩な調味料を組み合わせて味付けすることが多いのですが、杣径では素材そのものを感じるセンサーのスイッチをオンにするために、砂糖やみりん、醤油の使用を極力抑えています。甘味はどぶろくなどを使い旨味は塩で引き出します。

この日いただいたアオリイカは絶品! 魚醤(いしる)や煎り酒で仕上げています。
他にも森で採れた天然茸の馥郁たる香り、旬の海藻の歯ごたえも忘れられません。

特筆すべきは土とお米の香りがたまらない芋粥。「のとひかり」という品種のお米、舳倉島の塩、そして山の清水。味付けはお塩だけとのことですがほのかに海の香りもします。 山から生まれた水が海へ流れ込み、やがて雲となり雨がまた大地に降り注ぐ。
この土地で生まれた食材を通してこの土地全体をいただく。北崎さんのお話を通してこのお粥からそんなストーリーが生まれます。

当然、お料理を引き立てる器もまた素晴らしく、赤木さんの漆や安土桃山時代の猪口をはじめとしたコレクションの数々、そして白磁は黒田泰造さんでした。

携帯電話は圏外、天井まで届く宇宙へとつながっているような本棚からお気に入りの1冊を紐解く。なんて至福のひととき!

わざわざ度
わざわざ旅する価値があるか

食材への愛
漁師さん猟師さん生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか

地産地消度

唯一無二度
いわゆるオリジナリティ

リピしたい度
わざわざ行って更に再び行ってみたいか

杣径の場合は

わざわざ度 ★★★★

食材への愛 ★★★★★

地産地消度 ★★★★★

リピしたい度 ★★★★★

大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。