和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第十五回 鮨竹

第十五回 鮨竹

女性鮨職人の先駆者の握りは凛として潔い!

銀座に女性が大将のお鮨屋さんがオープンしたと世間が騒いだのが今から10年前くらいでしょうか。今でこそ女性鮨職人に偏見を持つ人は少なくなりましたが、当時は「女の握った鮨が食えるか」などの誹謗中傷もあり本当にご苦労されたと思います。
「鮨竹」の店主、竹内史恵さんがいなかったら今でも鮨の世界に女性が入ることはなかったかもしれません。それほど鮨職人としての竹内さんの技術も味わいも姿勢も世の中の常識を覆す力があったということです。と、えらそうに言ってますが実は行くタイミングがなく初訪です。

お店は8席の横並びカウンター、壁にはたぶん手書き?の達筆すぎる鮨ダネ札がかかっていて老舗のお鮨屋さんって雰囲気です。最初のビールを飲んだあたりで竹内さんが登場しました。オープン時の坊主頭からショートヘアーにはなっているけど、凛としてかっこいいのは変わらず。
はじめに「お浸し」「蒸し牡蠣」などのおつまみが6皿でてきますが、どうもおつまみは2番手さんの担当なのかも。竹内さんはつけ場と裏の厨房を行ったり来たりしながら時折、お客さまと話す感じ。

さあ、いよいよ握りがスタート。私が初めてだからなのか口数は少なく淡々とつけ台の上におかれます。握りって本当に握る人の人柄というか、その人っぽさがでますよね。竹内さんの握りは真面目で謙虚な佇まい。酢飯はお米ひと粒ひと粒の輪郭がはっきりしていて、タネと一体になって喉を通るように計算されたサイズ。もしかしたら女性は少し小振りにしてくれているのかも。だって「車海老」、女性には半分に切ってくれるんですもの。

派手さはまったくないけれど素直に「おいしい」って言える握りに思わず笑みが出てしまっているのを見られたせいか、だんだん竹内さんの口もほころび話をしてくれるように。
そのはにかんだような笑顔も謙虚というか、可愛らしい。タネも味わいも「ザ・江戸前」ですが、酢の加減とか昆布〆の加減とかタネの食感とかは丸みがあって優しいので、きっとすごく温かみのある優しい人なんだろうな、お友達だったら大きな声で笑うんだろうな、なんてことを握りを食べながら想像してしまいます。当然追加をお願いしたので「玉」を残しておいて、握り2貫と巻物でフィニッシュ。
日本酒は4合くらいだったかな、それで3万円ちょい。つまみ+握りコースはなんと23,000円です。銀座でこの味で、ホント素晴らしい!

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★
のどの渇き度 ★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。