和食STYLE

日本名産紀行 柘いつか 第49回 和歌山県湯浅町 歴史と海がもたらす名産品4種

作家/旅行作家 柘いつか – Itsuka Tsuge –

日本遺産にも認定された醤油醸造発祥の町
和歌山県の中部西岸に位置する港町、湯浅町。
町に面した紀伊水道は瀬戸内海と太平洋の狭間にあたり、隣接する広川町にまたがる広い湾には広川が流れ込み、天然の良港として漁業が栄えただけでなく、その地形や立地の良さから古来より回船の寄港地や物流の拠点としても発展しました。

町の南北を熊野三山へと続く巡礼の道 熊野古道が貫く「古道歩きの宿場」としての側面からも、水陸交通の要衝として栄えた町と言えるでしょう。

和歌山県内で重要伝統的建造物群保存地区(通称「伝建地区」)があるのは湯浅だけ。ここを訪れた際には、湯浅の歴史に精通したまち歩きガイドを予約して、お話を聴きながら探索するのがお勧めです。

女性にうれしい、翌日のお肌プルプル感、お約束します!
福井鮮魚店の店主・福井淳司さんはクエ・はも・鰻を通販のみで販売する傍ら、上記の町歩きガイドも兼任されています。

鮮魚店歴30年の福井さんがたどり着いたのは、クエより美味い魚はない!という思い。 その気持ちを抑えられずに鮮魚店を畳み、クエ鍋のネット通販店を始めて十数年。

ふぐより美味しいといわれる幻の魚、クエは、 鍋にすると絶品です! クセや臭味のない白身に加え脂がしっかり乗って、シメの雑炊まで、とにかく美味しい。

養殖と侮るなかれ! エサや環境にこだわって、長崎や串本の指定養殖場で大切に育てられたクエ。
今では、湯浅醤油を使って焼いた「紀州備長炭焼きうなぎ」や、職人技が冴える「ハモの骨切り」なども販売しております。

天然クエ鍋(身・あら)のセット(野菜・薬味等は含まれません)
クセや臭味のない白身に加え脂がしっかり乗って、とにかく美味しい。
アラの皮際のゼラチン質のような食感が最高の贅沢です。
クエは、内蔵や軟骨までが、旨味のかたまりでとにかく捨てるところがありません。
見た目は少々グロテスクですが、脂のりはふぐと比べられることもあり、ふぐより美味しい!とも言われています。
ポン酢にもみじおろしとあさつきを入れ、いただくことをお勧めします。

くえ.jp
http://www.kue.jp

よく動いて、よく食べる。丸々として肉厚な、ストレスフリーの健康体アワビ
湯浅湾は黒潮の温かい潮流と、瀬戸内海の豊かな潮流が交わる場所で、様々なプランクトンが発生する、非常に恵まれた条件の良い海域に位置しています。
湯浅で養殖されたアワビは、地元で水揚げされた生ワカメと、海藻が主原料の専用の配合飼料を餌に、大切に育てられました。

アワビはとても神経質な生き物。外的要因により身が痩せて、独特の旨味や甘味が少なく感じられることがあります。

「お家で生きたアワビを楽しんでいただこう」
養殖経験 35 年以上の職人を中心に、こだわりを持った飼育方法で育てられた紀州アワビ “紀和味(きわみ)”は、濃厚な旨味とやわコリ食感が特徴です。
お刺身はもちろんのこと、蒸し料理や焼き料理など様々な調理方法でお楽しみいただけます。

天然物にも優る甘味のある極みの一品は、五つ星高級鮨屋、日本料理店、中華、フレンチレストランへ直卸しています。

■和歌山県産あわび姿煮 山椒煮(湯浅たまり醤油使用)
地元 湯浅のたまり醤油と有田の特産品であるぶどう山椒を使用した煮あわびです。
たまり醤油を使用することで旨味があり、まろやかな口当たりになっています。ぶどう山椒はさっと湯通しをして綺麗な緑色を残しつつ、 爽やかなアクセントの香りが漂います。

紀和味(きわみ) 楽天市場店
https://www.rakuten.ne.jp/gold/kisyukiwami/

伝統製法の金山寺味噌は、先人の知恵と和歌山の文化が育んだ「おかず味噌」
江戸時代から変わらぬ姿で佇む蔵。そこで醸造される味噌。手仕事にこだわって、脈々と変わらぬ味を守り続けてきました。

野菜がたっぷり入り、普通の味噌とは一線を画す存在です。滋養に溢れ、滋味深いその味は、時代を越えて愛されています。

太田久助吟製の暖簾が掲げられたのは明治6年(1873 年)。此の地に伝来した金山寺味噌と共に、醤油の醸造を手掛けていました。
豊かな素材と清らかな水に恵まれたこの湯浅で、先祖代々の製法と味を受け継いできました。

江戸時代から続く蔵
味噌が生み出されるのは、江戸時代末期の、天保 12年に建てられた蔵から。冬暖かく、夏涼しい蔵には、先人の智慧が詰まっています。

すべて手仕事で、麹の様子を手指でひとつひとつ確かめ、ほぐしていく。その感触から、代々伝わる智識と指に刻まれた経験で、微細に調整を行います。

過去とまったく同じ気候が来ないように、味噌づくりも気候に併せて変わります。作り手の細かい心配りが行き届く味噌をつくりたいから。慈しむように、丁寧に、昔ながらの手作業にこだわっています。

現在の当主、平野浩司は六代目。
職人となる前は全く異なる仕事をしていましたが、この蔵を受け継ぐために先代に弟子入り。先代の元、創業からの伝統製法を受け継ぎ、次の時代へとつなぐ挑戦を夫婦で始めました。

金山寺味噌は「なめ味噌」や「おかず味噌」と言われるもので、調味料としてではなく、そのまま生で食べられるのが特徴です。米、麦、大豆を丁寧に麹に仕立て、そこに刻んだ夏野菜を入れて 3 ヶ月ほど熟成してつくられています。
もろみ味噌にも似ていますが、野菜が入っているので、よりおかずとしての食べ応えがあり風味も変わります。和歌山の朝餉”茶粥(おかいさん)”やご飯に載せて、また酒の肴として親しまれています。

金山寺味噌の歴史は、約 750 年前の鎌倉時代に遡ります。
宗に渡った禅僧の覚心が、浙江省径山寺にてその製法を学び、日本に持ち帰り伝授したと言われています。覚心は後に法燈国師として和歌山県由良町の興国寺を建立し、そこで金山寺味噌は禅僧の貴重な保存食として用いられてきました。

金山寺味噌を熟成する過程では、深い色の上澄み液が生まれます。昔の人がこれを舐めたところ大変美味な味で、やがて調味料として使われるようになりました。これが醤油の起源とされ、湯浅町は醤油発祥の地としても知られています。

金山寺味噌には、白瓜、丸茄子、生姜、紫蘇といった夏野菜がたんまりと入っています。元々は夏野菜を冬にも食べられるよう、保存食として食されていたものです。野菜を丁寧に刻み、麹と熟成させると仄かな甘みと確かな食べ応えを兼ね備えた金山寺味噌に仕上がります。

太田久助吟製の麹は、代々伝わる独自の配合でつくられています。通常は同量の米、大豆、麦の配分ですが、米の量を多くすることで、甘みとなめらかさがより際立つ麹となります。一粒ずつ丁寧に状態を見ながら、人の手で丁寧につくることを大切にしています。

太田久助吟製 楽天市場
https://www.rakuten.co.jp/otakyusuke/

醤油発祥の地で、今や最古参の醤油蔵
日本の醤油の源泉は、鎌倉時代(13 世紀の中頃)紀州の禅寺「興国寺」の開祖「法燈円明国師」が、当時は南宋と呼ばれていた中国から伝えた嘗味噌(径山寺味噌、現在は金山寺味噌と呼ばれている)が、その母体とされています。

江戸時代、湯浅醤油の名声はますます高まり、製造技術も進み、藩外販売網も拡大され、当時の湯浅は約 1000 戸中、醤油屋が 92 軒もあるという繁栄ぶりでした。その後大手メーカーによる大量生産のあおりで、醤油産業は下火になりましたが、『角長(かどちょう)』では、昔のままの数少ない「湯浅たまり」という製造手法を今もなおかたくなに守り続けています。

その歴史と伝統を残すべく、角長では「職人蔵」と「醤油資料館」を併設し、一般に公開されています。
2022年12月12日、角長(加納家住宅)は国の重要文化財に指定されました。

天保時代そのままの「蔵付き酵母」
創業以来、昔ながらの手作り手法を現在まで守り続けている角長の蔵の天井にはもちろん、壁や床にも美味しい醤油作りの為に必要な「蔵つき酵母」が住み着いています。
湯浅醤油の中でも唯一、昔ながらの手法にこだわっている角長の蔵の古さには、美味しい手作り醤油には欠かせない深い意味があったのです。

醤油は大豆・小麦・塩・水で造られます。角長では大豆は岡山産、小麦は岐阜産、仕込みの際の塩水はオーストラリア産の天日塩が用いられます。
一般的に「こいくち醤油」と言うと大豆5割、小麦5割と言われておりますが、この角長醤油は、大豆 6 割、小麦4 割で造られています。

角長は、冬季のみの寒仕込みを頑に守り、機械化に頼らぬ昔ながらの手づくりを続ける醤油蔵です。
創業以来ずっとその味を守り続けてきた、定番の角長醤油のラベルには「手づくり醤油」と書かれていますが、「濃い口醤油」になります。
大量生産では味わえない天然の風味と、柔らかな香り琥珀色の色とつや等、
手づくりの丹精と、約一年半の長期にわたる紀州の風土が育てる本醸造醤油です。

■角長の「手づくり醤油」
創業 182年、湯浅醤油でも最古の歴史を誇る当店の全て手づくりの醤油です。保存料・化学調味料を一切使っておりません。

■濁り醤
圧搾も加熱もせず、麹が原料を分解してできた汁のみを取り出す、人の手を全く加えていない醤油です。完成までに約 10年を要しました。

角長オンラインショップ
https://www.kadocho.co.jp/shop.html

柘いつか – Itsuka Tsuge –

作家。東京都生まれ。
世界50 カ国以上を訪れ、各界に多彩な人脈を持つ。山の生活のムーミン谷は卒業して、今度は海の生活のトカイナカ(都会田舎)に移住することを考えている今日この頃。
『一流のサービスを受ける人になる方法 極(きわみ)』(光文社)が好評発売中。ベストセラーとなった『別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男』『成功する男はみな、非情である。』はアジア各国で翻訳された。
北海道の専門誌『カーピアセロム』で「いつかの世界通信」連載開始。
https://itsuka-k.com