和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第十一回 すし いわお

第十一回 すし いわお

お寺の境内に鮨屋が! 立地も鮨も個性的!

赤坂駅も赤坂見附駅からも徒歩 5分。目印は一ツ木通りにある「浄土寺」です。本当にお寺の中にお鮨屋があるの?と疑いながら境内を入り、すぐにある脇道を曲がるとちょっとした家並が現れます。ビルが立ち並ぶ一ツ木通りから1本裏に入るだけで本当に赤坂?と思うほど静かで、周辺には「松月」という古くからありそうな和菓子店、お忍び感満載の「赤坂うさぎや」に「ぼん」と花街を思わせる雰囲気。これはなかなかい〜んじゃないかな、と思いながら暖簾をくぐると、ほ〜らやっぱり、古さがいい感じにほんわかムードを醸し、真っ白の椅子カバーが「うちの店、ちゃんとしてます」とばかりにちょっと背筋がピンとする。あれですね、フランス料理における真っ白なテーブルクロスって感じ。店主は日本料理と鮨でそれぞれ 15年ずつの経験をもつ岡部 巖さん。包丁マニアで刀鍛冶屋さんに作ってもらった本当に刀みたいな包丁で切りつけします。

さて、そんな岡部さんのお鮨は江戸前をベースにしつつも個性的。酢飯は大粒のササニシキをパスタでいうところのアルデンテに炊き上げ、 “赤シャリ”と“ロゼシャリ”にしてタネによって使い分けています。ランチのみ提供される 16食限定の散らさないちらし寿司「ちらしらず」とか、酢飯をトロタクでおはぎのように包んだ「トロタクのおはぎ」とか、1ネーミングがちょいちょいおもしろい。と言ってもすべてにおもしろネームがついているわけじゃないのでそこはもうちょっと頑張っていただくとして……、おつまみが 6〜7品でた後に握りが始まる「握りコース」は 22,000円也。

スペシャリテの「キャビクロ」はホカホカの赤シャリに対馬のブランドノドグロ「紅瞳」を炭火で焼き、無添加で長期熟成したドイツの「N25」というキャビアをのせました。なかなかの横幅と高さですが頑張ってひと口で頬張ってみる。「うわっ、クリーミー!」が第一印象。キャビアは思ったより塩味控えめでノドグロは脂がのってて、基本、握りにキャビアやトリュフをのせるのはアンチな私ですが、これはイケる!

そんな変わり鮨もありながら、「車海老」「小肌」「とり貝」といった至極真っ当な江戸前もあるおまかせコースは全体的に酢飯は温かめで酢の加減は優しくタネも大きめです。私にとってはもうちょっと酢で〆てくれたらとか、もうちょっとタクアンが多いといいのにとか、肝ソースの煮詰め方がもうひと工夫とか、あと一歩足りないんだよな。でもこのロケーションとここにしかない握りは一見の価値ありです。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★
のどの渇き度 ★★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから