和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第九回 鮨処やまと

第九回 鮨処やまと

「日本橋蛎殻町すぎた」で修業、あっぱれな成長ぶり!

築地駅から歩いて3 分ほど、ですが最初は付近を何往復しただろうってくらいエントランスが奥に引っ込んでいてわかりづらい! でも暖簾を発見した時は嬉しかったですね。だって修業先の「日本橋蛎殻町すぎた」という文字が入っていたから。
5年間、二番手としての役割を担った「鮨処やまと」の大将、安井大和さんへの愛情をもって送り出した杉田さんの気持ちと、師への尊敬の念と独り立ちの心意気が表れているようで、なんだか心温まりました。その暖簾をくぐるとL 字型のカウンターに8席、なんというか清々しさの中にほんわかとした優しさを感じ、こりゃ居心地いいぞとニンマリ。

この日はおつまみが6 品、握りが14 貫と玉でした。追加もできます。大和さんのおつまみには、素材のおいしさをしみじみ味わえるものと、牡蠣に玉ねぎポン酢とかエビとホタテに海苔の佃煮とかすじこを粕漬けとか、「おっ!」と思うものもあってとっても“良き”です。これは最初の修業先が「銀座 小十」だったことにあるのかも。

それで握りはと申しますと、酢飯は赤酢で少しねっとりとしてやわらかめ、ゆっくりとほどけてタネと一体化して喉を通ります。1 貫目のコハダだと酸味もキリッと効いていますが、タネによって多少温度を変えているせいか、酸の感じ方も違います。タネに関しては杉田さん譲りの丁寧な仕事っぷりが伺えますが、ウニは軍艦巻きにするなど大和さん独自の方向性も見えます。フォルムがポテっと丸みを帯びていてなんだか可愛いです。

このおいしさでお腹いっぱいになり、日本酒も3~4合くらい飲んで25,000円前後、なんてスンバラシイのでしょうか。おまけに予約も電話で1 ヶ月先までしか取らない。なので意外に取れちゃったりするんです。電話もつながるし、これで2 部制じゃなければもっと嬉しいんだけどな、なんて言っていられるのも今のうちかも。だって、すぎたさんも電話で翌月の予約を取れていたこともあったもんね。う~ん、やまとさんも予約の取れるうちにガンガン行っておかねば。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから