和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第八回 鮨さいとう

第八回 鮨さいとう

惚れ惚れする美しさ! ミシュランを卒業し至高の域へまっしぐら

美食家なら知らぬ人はいない、間違いなく日本を代表するお鮨やさんです。10年連続でミシュラン三つ星を獲得したのち、会員制にしたため2020 年度版から実質“返上”となった「鮨さいとう」。店主、齋藤孝司さんの美しい握り、そして屈託のない笑顔と楽しい話に「鮨はさいとうじゃなきゃ」ってファンがとっても多い。今はもう4万円を超えちゃいますが、星を獲ってもずっと3 万円を越さずに最高のお鮨を提供してくれた神のような人です。
私が初めて暖簾をくぐった時はもう食べログでトップ1~3の間を行ったり来たりというレベルだったけど確か26,000円くらいだったと思います。大して修業もせずお店出した若者が平気で3万、4万って金額をつけてるっていうのに、ホント、齋藤さんの爪の垢を煎じて飲ませたいと思っていました。

齋藤さんのお鮨は本当に美しい。たぶん切りつけ方なんですよ。タネの状態で深さとか細かさとかを微妙に調整していると思われます。並んでいるタネを見ると惚れ惚れしますよ。やっぱりおいしいお鮨は仕込みと切りつけに一切の妥協も許さないってことなんでしょうね。それでもって齋藤さんは握る所作も美しい。なんていうか、流れがあるんです。楽譜見ると音符って旋律という流れがあるじゃないですか。それと同じような感じ。あ、そうか、齋藤さんの握りって美しい音みたいなんだな。あと昔は“沈む鮨”と言われていて、ま、いわゆる酢飯の米粒の間に空気は含むように握ると口の中でふわりとほどけるとタネと絡んでものすごくおいしくなるってことなんですが、齋藤さんの握りはググッと沈むんです。動画撮って確認する人もいたくらい。でもたぶん今はそんなに沈まない……はず。ちょっと変えたのかな。

ただ、ちょびっと辛口意見を言わせていただくと、最初にお伺いした時、すごく緊張したんですよね。なんか齋藤さんと仲良くないとアウェー感がある。鮪を切り付けている時はちょっと声をかけるのが憚られるくらい集中されていました。それは別の話か。だからひとりで行くなら齋藤さんとすご~く親しくなってからがいいと思います。あ、会員制だから新規の予約は不可能なので初めてでひとりってことはないですね。私も会員ではないので、お誘いお待ちしております。うふっ。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★

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