和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第七回 伊藤家のつぼ

第七回 伊藤家のつぼ

ショートトリップで地魚のうまい鮨を

青い空、青い海、古民家、真鶴、鮨のオーベルジュ、このキーワードにずっと行きたいと願っていたところお友達から誘っていただいた「伊藤家のつぼ」。平日のこの日は快晴で、まだ出勤タイム中の東海道線に乗り、自由人でよかったな~と幸せ気分で真鶴へ降り立った。ここで思わぬ落とし穴が! のんびり改札を出たらタクシーがいない。そうは言っても駅なんだから来るでしょ、なんて考えはまもなく焦りに変わり、GOタクシーを呼べども反応なし。ヤバイ、どうしようと思っていたら1台、現れました。
先に行ったご一緒するお友達が降りたタクシーを駅に向かわせてくれたのでした。ありがたや。こちらに行くならタクシーをあらかじめ手配しておくことを推奨します。ものすごい坂なのでよっぽど元気じゃないと徒歩は不可能です。予約時間にギリギリ間に合って席につくと、窓の向こうに見えるのは相模湾。地平線につながるように青い空が広がり、まるで素晴らしい風景画を見ているかのよう。本当に気持ちいい! 再び自由人でよかったと思いました。

突き出しのすり流し、お造り、八寸的なつまみ盛り合わせがテンポよく出され、早くも握りに。「ショッコ」とか「タカノハダイ」とか聞いたことのない魚の名前だったりするのですが、超絶おいしい。やっぱり地のものは違うな。素材もいいけど仕事もいい。鰹は藁で炙る、イカに胡麻をのせたり、鮪の漬けには辛子を合わせたり、およそお鮨に使わなそうなケッパー、かんずり、バターだって使っちゃう。でもね、これが赤酢の酢飯と見事に合うんだな。酢飯のほぐれ具合、タネとのバランスもホントいい感じ。

合わせてくれる日本酒もおもしろい。そして昼間のお酒は効きますな。ほろ酔い気分になったところに2口サイズの稲庭うどんがでてきます。この日は「サザエと海苔のかき揚げ」だったけど、お鮨の合間の汁麺、いいもんですね。これでまた酔いが覚め、胃もリセット。まだまだ食べて飲めますよ~ってことで追加もできて大満足。
冒頭で書いた通り、ここは宿泊できるのです。100年選手の古民家だけど本当に丁寧に管理されていて、お部屋もトイレもお風呂も本当に綺麗。お食事のみが10,450 円、平日宿泊が16,500円、休前日宿泊が17,600 円とお値段も本当に素敵! ということで2023 年の予約はすべて満席。お知り合いの予約に便乗する、もしくはたま~に出るキャンセル枠にすがるしかありません。でもチャンスが来たら是が非でも行きたいお店です。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★

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