和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第六回 日本橋蛎殻町すぎた

第六回 日本橋蛎殻町すぎた

日本一、いや世界一! 今日も素晴らしすぎた

お鮨好きはもちろんのこと、おいしいもの好きならばこのお店を知らない人はいないんじゃないでしょうか。食べログの東京のお店ランキングは常にトップ、何卒お連れください率もNO.1 です。行きたい気持ち、わかります。だって私の中でも日本一ですもん。お鮨の場合、日本一ってことは世界一ってことですよ。
味、大将(の人柄も声も)、スタッフ、雰囲気……、このお店は何もかもがホント素晴らしい! ダメなところは家のそばじゃないことと予約がなかなか取れないことだけです。なんと言いますか、大将・杉田孝明さんの握りは“おいしい”を超えているんですよ。本当に圧倒的なんです。

鮨ダネは元々上質だと思いますよ。でもそれに甘んじることなく丁寧に“仕事”されるのです。しかもやりすぎないというのもすごい! 食べたらわからない程度のやわらかい小骨はたとえ1 本でも取り除くけど必要のない熟成のような、しなくてもいいことはしない。例えば「鮪の漬け」、杉田さんはものすごく大きく、でも薄さは普通に切り付けて二つ折りにして握ります。それが漬けの味と量のバランスが最高だからです。
よく「食材の本質を見極めた仕事」とか「食材本来の味を最大限にいかした」って言いますけど、ここに来るとどこにでも簡単に使っちゃいけない言葉だとわかります。食材もこんなにおいしくしてもらえるんだからさぞ喜んでいることでしょう。

そのタネを支える酢飯は頬張ったときのバランスが最高になるようタネによって大きさを変えてます。そしてタネと酢飯の声を聴くように握り、それを慈しむかのようにそっと置くのです。するとゆっくりと沈み佇む。その瞬間に“芸術”を感じる、まさに究極の握りです。
杉田さんに「素晴らしいね」と言うと「食材がいいからです。僕は何もしていませんよ。本当に毎日同じことをしているだけです。そして昨日より今日、今日より明日おいしくなるようにするのが僕の仕事」と言います。なんと謙虚なのだろうか。杉田さんはとどまることを知らない。だから毎回最高においしいし、食事で感動させることができる本当にすごい人です。

ここに来るとすごくあったかい気持ちになるんです。杉田さんを通してそこにいるみんなが、一緒に笑い、語らい、そして究極のおいしさを感じる。ああ、もう書きたいことだらけで筆も止まらないので最後に一言、この店に行ったという余韻がいつまでも残る史上最高のお鮨やさんです。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★★
ロケーション&設え ★★★★★
サービス ★★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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