和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第五回 変タイ鮨 すがひさ

第五回 変タイ鮨 すがひさ

鮨×タイ料理というまさかのコラボレーションが激ウマなんです

鮨とタイ料理なんて邪道だ!と思った人。騙されたと思って行ってごらんなさい。たちまち「私が悪うございました」と反省することになりますから。かく言う私も最初は「どうなの?」と半信半疑。でも周りのグルメ好きが貸切したり、SNS に上げまくるので「まぁ、行ってみるか」程度の気持ちでした。ところが! おいしいやら楽しいやら、今やもう予約取れたら行く!って感じです。

はじめに言っておきますが、ここは「鮨すがひさ」というれっきとした江戸前鮨のお店です。 でも店主の菅 正博さん(スガさんではなくカンさん)の経歴がおもしろくて、大学(それも酪農大学)卒業後、青年海外協力隊でパナマ共和国に2 年居住して帰国後は大手レコード会社と「リクルート」で会社員を経験。それから飲食業へと進みますがまずはタイ料理店で働き、鮨屋をやりたいと「飲食人大学」で「鮨マイスター専科」を受講。
それから居酒屋で料理長をしていた時にこちらの物件に出合ってしまい、なんと先に契約をしてしまいます。さぁ、どうする?と急遽、大阪の江戸前鮨「千陽(ちはる)」で2 ヶ月間の突貫修業させてもらい、2017 年4 月に「鮨すがひさ」をオープンしました。

真面目に江戸前鮨を提供していたある時、タイ料理店時代からの常連さんの「不可能だと思うけどいつかタイ料理を取り入れた鮨コースを作ってほしい」とのひと言に菅さんの負けず嫌い精神が爆裂! 貸切で披露したところそれが大評判となり、月に1 度3 日間のみ開催される「変タイ鮨」へと繋がったのです。

決して奇を衒ったヘンテコ鮨ではなく、江戸前とタイ料理が見事に融合しているのがすごい。例えば鰆の炙りにはクミン醤油をひと刷毛とか、低温調理したボラと酢飯の間にココナツミルクのトムカーガイにブリッキーヌ赤唐辛子を潜ませるといった具合で、見た目は江戸前鮨だけど食べるとちょっぴり「お!」というタイ料理独特の香りや辛味が口の中に広がるワケ。これが実に納得のおいしさなのです。「雲丹のココナッツミルク」なんて、普通の雲丹じゃ物足りなくなるかも?ってくらい激ウマです。菅さん、“何が入っているかクイズ”をするのですがなかなか当たらないですね。

この日は「つまみ4 種盛り合わせ」から始まり2種類のつまみからの握り12 貫へと続き、いなり寿司、カレー、まぜそばでお腹いっぱい大満足。
実は「鮨すがひさ」よりも先に「変タイ鮨 すがひさ」が有名になり、戸惑うこともあったそう。でもやるからにはと毎回新作の嵐で飽きさせません! 「変タイ鮨」の予約ですが「鮨すがひさ」の常連さん、もしくは貸切イベントで誘われなければできません。もちろん私も「鮨すがひさ」も経験済み。だからこそ「変タイ鮨」が楽しいのです。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★

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