和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四回 鮨 西崎

第四回 鮨 西崎

衝撃のあん肝! 極薄のイカ! “食感鮨”に魅了される!

2022年4月に東北沢にオープンしてから初めて行ったのが7月、次の予約は10月に取れ、次はキャンセルがあったのかたまたま11月に取れ、その次はもう翌年3月まで取れなくなってしまった「鮨 西崎」。でもわかる。だって江戸前の真髄を守りながらのちょい攻め、これにどハマりしてしまうんです。
店主の西崎亮平さんは15歳で叔父が経営する幡ヶ谷の鮨屋に入って10年ほど修業し、日本料理を経験してから日比谷「鮨なんば」、そして阿佐ヶ谷「鮨しゅん輔(「鮨なんば」難波英史大将の弟子)」の両店で二番手を務めてから独立。若く見えるけど30年近いキャリアを持つベテランさんなのだ。

この日はつまみが8品で握りが12品、最後に玉でフィニッシュ。握りは追加できたのに話し込んでいたら時間切れで巻物が頼めず。ガックリしてたら、お隣さんがお裾分けしてくれた。なんていい人なんだろう。
西崎さんの鮨はとにかく食感が群を抜いている。圧巻は「あん肝」と「烏賊」。“血だけを狙って抜く”そうだが、「うそっ、フワッフワ」と思った瞬間に溶けてなくなり、白醤油でつけた味わいが余韻となって残る。未だかつてない「あん肝」に昇天状態。永遠に食べ続けたいのに手が止まらないから無情にもなくなるという悲劇。これは本当に誰にも真似できないと思う。

“圧巻その2”は「烏賊」の握り。2品目提供後から切りつけ始めるのだが、削った鰹節くらいと言えば良いだろうか、1mmあるかないかくらいに薄く切り、それを何枚か重ねて握る。「オーマイガッ!」。とろんとしてやわらかいのに歯応えもある、なんという艶かしさ。酢飯の酢加減も私好みだし、温度もすべてじゃないけど鮨ダネで変えている(と思う)。
とかく食感が特徴的だと「西洋料理のテクとか使っちゃってんじゃないの?」と思いがちだが、西崎さんはただひたすら努力と時間を費やしているだけなのだ。お客さまが「おいしい」と喜んでくれる、ただそれだけのために。
そうだった、ここはガリではなくセロリの甘酢漬けで、これがやめられない止まらない♪なのに飲んで食べて25,000円くらいと、これまた信じられないお値段。おまけに2部制なのだが、1部はカウンターで2部は個室と決まっている。つまり1部の人はお酒がなくなるまでゆるりとできるのだ。ま、西崎さんは個室に行っちゃうけどね。そりゃ、予約も取れなくなるわけだ。

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“⾷” へのこだわりは、その後の素晴らしい⼈々との出会いと相まっていつしか⼈⽣そのものに。その間に培った⾷のデータと⼈脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外⾷で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ⼿帖」「BRUTUS」「GQ」「⾷べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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