和食STYLE

日本名産紀行 柘いつか 第37回 兵庫県丹波篠山 山の芋

作家/旅行作家 柘いつか – Itsuka Tsuge –

江戸時代から栽培され、栄養食品と食されていた記録の残る伝統野菜。その名も山の芋
丹波地方は山の芋の生育に適した気候風土に恵まれ、江戸時代中期から栽培されてきました。秋から冬にかけて「丹波霧」と呼ばれる濃い霧が立ち込めます。そのため、山の芋は別名「霧芋」とも呼ばれ、丹波を代表する特産品のひとつとなっています。

山の芋は4月初旬に植えられ、10月の終わり頃に掘り始められ、12月初旬ぐらいまでが収穫期となり、冷蔵庫での長期保存が可能です。1つの種芋から1つしか収穫できず、年々生産量が減る貴重品で、栽培にも非常に手のかかるデリケートな芋です。

ヤマノイモ科ヤマノイモ属には「イチョウイモ」「長いも」「自然薯」などありますが、丹波篠山の「山の芋」は、「ツクネイモ」や「大和芋」と呼ばれる、まるくて黒いごつごつした外皮で、中はきめ細かく真っ白なものです。
芋の中でも最も粘り気が強く、加熱するとふっくらとする特性をもち、食感も濃厚です。

最初は何もつけずいただけば、芋自体の豊かな香りと味わいを体感できます。
おろした山の芋のねばりけは段違いで、そのままお鍋に入れるとお団子状になり、外観のごつごつした見た目とは対照的に、肉質は純白できめ細やか。 長芋などとは違い、もっちりして大変美味しいと評判です。

生のまま短冊切りにして、わさび醤油に刻み海苔と卵の黄身を加えるのがスタンダードですが、鰹削り節とポン酢でいただいたり、名物ぼたん鍋(猪肉鍋)の具にしたり、すりおろして出汁を混ぜてとろろにし、麦飯や蕎麦にかけたり、汁物に落として団子にしたり、お好み焼きに入れる、などもオススメです。

また、スプーンで団子型にして、さっと素揚げするのも美味ですが、それに海苔を巻けば磯辺揚げに。同じく薄くスライスして揚げてパラパラと塩を振れば、ポテトチップスのようなおやつに変身!

贅沢にまぐろ山かけにしても、赤と白のコントラストが美しいです。
丹波篠山では、猪肉を煮付けた上にとろろをかけた「猪とろろ丼」や、丹波牛の煮付けにとろろをかけた「丹波牛とろろ丼」が観光客に人気です。ご自宅でも是非、牛丼にとろろをかけて、召し上がってみてください。

また、高級和菓子の材料としても重宝されています。薯蕷(上用)饅頭の、きめ細かくふわっとした食感を出すのに欠かせません。このように、様々な味わい方でお楽しみいただけます。

食べるサプリメント
山の芋は、食物繊維と健康成分が豊富に含まれていて、生活習慣病予防に役立ち、腸内バランスを整え胃の粘膜を保護して消化機能をアップしてくれます。
食べるサプリメントとも言われるほど、ビタミンやアミノ酸、むくみを取るカリウムが多く含まれます。

流し込むようにして食べても、腹にもたれず消化不良にもならないのは、山の芋に消化酵素であるアミラーゼやジアスターゼが多量に含まれているからです。ほかにも、コリン、サポニン、食物繊維などの多くの健康成分が含まれています。

篠山地方特有の気候風土と長年の品種改良から生まれた名産品を一度お試しあれ!

写真提供:丹波篠山ブランド産品戦略会議

特産館ささやまネット店 山の芋
https://tokusankansasayama.raku-uru.jp/item-list?categoryId=80688

柘いつか – Itsuka Tsuge –

作家。東京都生まれ。
世界50カ国以上を訪れ、各界に多彩な人脈を持つ。ムーミン谷で人生初のトカイナカ(都会田舎)暮らしを始め、日本の良さを再認識している。
『一流のサービスを受ける人になる方法 極(きわみ)』(光文社)が好評発売中。ベストセラーとなった『別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男』『成功する男はみな、非情である。』はアジア各国で翻訳された。
https://itsuka-k.com