和食STYLE

豆腐百珍のすべて 39 佳品 今出川とうふ

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『今出川とうふ』とは、昆布の上に豆腐を乗せて、酒と醤油で味をつけて煮た料理を言います。トッピングは鰹削り節やネギや胡桃、薬味は山葵や生姜、七味、黒胡椒、山椒と様々です。

ネーミングの由来は、京都御苑(京都御所)の北側にある、今出川という場所で作られた豆腐を使っていたからだそうで、現在でも京都市内の豆腐料理屋では、「今出川豆腐」を出している店がいくつかあります。

本書に掲載されている『今出川とうふ』は、基本の形に加え、鰹出汁を使ったり、葛を引いたり、砕いた胡桃をかけたりと、手がかかっていて高級感があります。
江戸中期の京都ではこの食べ方が一般的だったものか、もしくは評判を取った店があったのか……?
ともあれ、砕き胡桃のトッピングは、香ばしくて歯応えもあって乙な味です。

また、和食の出汁の取り方の基本として、昆布を煮出すとアルギン酸が溶け出すため、えぐみや苦みが出ると言われていますが、昆布を豆腐の下に敷いたままで煮たこの出汁は、とても美味で豆腐に合います。豆腐のようにシンプルな食材には、多少の雑味は必要なのかも知れません。

■今出川とうふレシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
昆布…豆腐よりやや大きいサイズ
鰹出汁…豆腐が浸る量
酒…大さじ2
醬油…大さじ2
葛粉…小さじ1
胡桃…2個

【作り⽅】
1.小鍋に昆布と鰹出汁を入れ、昆布が戻るまでしばらく置いておく。
2. 昆布の上に豆腐を乗せ、酒を入れて中火で煮る。葛粉を同量の水で溶いておき、豆腐が温まったら醤油を加えてさらに煮て、葛を引く。
3. 2を器に取り、砕いた胡桃をかけていただく(胡桃は直前に煎ると風味が増す)。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』