和食STYLE

豆腐百珍のすべて 33 通品 青菽乳

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

難読漢字が続きますが、『青菽乳』と書いて『あをまめとうふ』となっています。「菽」は「豆」のことですから、本来は「青豆菽乳」となるべきで、当時は漢字と読みがあやふやとはいえ、現代人の感覚では、一文字足りないもどかしさを感じてしまいます。

さて、「青豆」とは現在の「枝豆」のこと。なぜ大豆になる前の黄緑色の豆を「枝豆」と呼ぶのかというと、かつて枝豆は枝付きで売られていたため、「枝大豆」「枝付き豆」「枝成り豆」などと呼ばれており、それが略されて「枝豆」と呼ばれるようになりました。

大豆自体は縄文時代から栽培されていましたが、枝豆として食べるようになったのは、奈良時代あたりから。

大豆に比べ、ビタミンは豊富ですが、たんぱく質は少なめで、酒のつまみにいただくと、悪酔いしにくくなります。

さて、今回ご紹介する『青菽乳』と、現代販売されている『枝豆豆腐』の違いは、豆腐から作るか、豆乳から作るかです。豆腐から作る『青菽乳』は、枝豆の香りは高いですが、食感がなめらかとは言い難いです。

■青菽乳(あをまめとうふ)レシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
枝豆…豆腐と同量
酒…大さじ1
塩…小さじ1/2
卵白…1/2個分

【作り⽅】
1. 豆腐はよく水切りする。枝豆は薄皮まで剥き、すり鉢でよくする。
2. 枝豆のすり鉢に豆腐を崩し入れ、卵白を入れてよくすり合わせる。酒と塩を加えて練り、型に流し入れて中火で15分程度蒸す。
3. 冷めたら型から外し、食べやすい大きさに切り分ける。

※記事と写真の無断転載を禁じます

⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』