和食STYLE

豆腐百珍のすべて 31 通品 油煤田楽

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

第28回の『油煤(あげ)とうふ』と同じく、『油煤田楽』は「あげでんがく」と読みます。この料理も、やはり揚げたては外がサクサクなので、田楽味噌を塗っていただくと、定番の豆腐田楽に比べて、コクとボリューム感があります。ただし冷めると途端に食べにくくなるのでご注意ください。

さて前回、日本での豆腐の始まりは『木綿豆腐』であると書きました。では伝来したのがいつ頃かと申しますと、奈良時代以降だと言われています。遣唐使が中国から帰国の際、日本に製法を持ち帰ったという説が有力です。

なぜなら豆腐の製造工程で、大豆をすり潰して豆乳を作りますが、この“すり潰す”ための石臼やすり鉢が運ばれて来たのがこの頃だからです。
調理にすり潰す技術が加わったことで、なめ味噌が味噌汁になったり、各種麺類や抹茶が作られるようになりました。

ちなみに、発酵食品でもないのに豆腐に「腐」という字が使われているのは、中国で「腐」は「柔らかいもの」という意味があるからです。つまり豆腐は「柔らかい豆」という意味になります。

『豆腐百珍』には、豆腐の別名として「菽乳、豆乳、淮南佳品、小宰羊、黎祁、方璧」があると書かれていますが、「豆柔」や「豆軟」という言葉はありません。
字面だけで見ると、日本では納豆こそ「豆腐」という字にふさわしいように思います。

■油煤(あげ)田楽レシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
胡麻油…適量
味噌…大さじ3
味醂…大さじ2

【作り⽅】
1. 豆腐はよく水切りして長方形に切る。
2. 胡麻油を熱し、1の水気を拭いて、表面がきつね色になるまで素揚げする。
3. 2に串を刺し、味噌と味醂をよく練り合わせて2の片面に塗り、軽く焦げ目がつく程度に炙る。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』