和食STYLE

豆腐百珍のすべて 28 通品 油煤とうふ

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『油煤(あげ)とうふ』は、読みが同じではありますが、「揚げ出し豆腐」に使われている『揚げ豆腐』とは違う物です。『揚げ豆腐』は、小麦粉や片栗粉を豆腐の表面にまぶしてから油で揚げているため、いわば「豆腐の天ぷら」。これに出汁と薬味をかけたものが「揚げ出し豆腐」という料理名になっています。

では『油煤とうふ』は何かと申しますと、水切りした豆腐を単に素揚げしただけの、現代の『厚揚げ』に当たります。

揚げたての『油煤とうふ』は、表面がサクッと硬めに仕上がるので、揚げたて熱々の自家製を、岩塩や生姜醤油、天つゆなどでいただくと、厚揚げの新たな魅力を発見することができます。

木綿豆腐で作ると、しっかりとした弾力と豆腐の香りが。絹ごし豆腐で作ると、中がトロッとクリーミーに仕上がります。

冷めると表面がふやけ、普段よく知る厚揚げに近いものになりますので、多めに作っておいて、翌日の煮炊きものなどに使われるのが効率的です。

■油煤(あげ)とうふレシピ
【材料】
豆腐…1丁
揚げ油…適量

【作り⽅】
1. バットやまな板などの平らな面にキッチンペーパーを敷き、お好みの大きさにカットした豆腐を並べる。その上にキッチンペーパーをかぶせ、平らなものを置いて重石をし、しっかりと豆腐の水切りをする。
2. 油を170度から180度に熱し、表面の水分を拭き取った豆腐をそっと入れて中火で揚げ、豆腐が浮き上がって表面が茶色くなってきたら裏返し、さらに4分ほど揚げて油を切る。揚げたりない時は、少し冷ましてから二度揚げする。お好みの味付けで。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com

『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』