和食STYLE

今さら聞けない「日本酒」のアレコレ vol.01 ゲスト吉峯英虎さん【前編】

初めて会ったその日から、午前4時まで呑み明かしたゆうことさちこ。
酒好きな二人の合言葉は、
「酒の一滴は血の一滴! 」

一人でゆっくり味わうお酒も
二人でしっぽり語らう時のお酒も
大人数でワイワイ飲むお酒も
人生を豊かにする大切な相棒。

そんなわけで、
お酒のジャンルごとにそれぞれに深く関わる方々をゲストにお迎えして、
お酒の嗜み方を学び、お酒をますます美味しく楽しもうと決意した次第です。

知れば知るほど奥が深く、味わいもまた一入。
さて、今宵も乾杯しましょうか。

第一回目は今さら聞けない「日本酒」のアレコレ。ゲストは、吉峯英虎さん【前編】です。
6年ほど前から大好きな日本酒を応援すべく、できるだけたくさんの銘柄を飲むというトライを実施。1000銘柄を突破した昨年は『酒を愛し・酒に学ぶ』をご出版され、日本酒党を文字通りぐいぐいと牽引しておられます。

午後5時。高円寺のちんとんしゃんにて
さちこ: 3年ほど前にある方にお引き合わせいただいて以来、吉峯さんには大変お世話になっておりまして、吉峯さんの影響で私もすっかり日本酒好きになってしまいました。こちらの「ちんとんしゃん」にはよくいらっしゃるんですか?

吉峯さん:ここはね、友達と高円寺で店を探しているときにたまたま通りかかって、最初なんか吸い込まれるように入ったの。先代の女将のときからずっと通ってるから、足掛け15年くらいかな。ここ数年はコロナだったし今日は少し久しぶりだけど。のりちゃん(現女将)は3代目女将ということになるのかな?

女 将:先代女将と昨年他界した夫が一緒に始めたので、実質私が2代目なんですよ。

ゆうこ:たまたま私もよく知ってるお店だったから、吉峯さんから「ちんとんしゃん」って店名出た時びっくりしました。

吉峯さん:本当にびっくりしたね。

さちこ:お店の雰囲気すごく良いから、呑みすぎちゃいそう(笑)。レコードで昭和歌謡というのもたまんないです。

吉峯さん:ゆうことさちこ、もなかなか昭和感あるね。

ゆうこ:いやこの連載のタイトルも昭和なんとかってつけようかと思ったんですが、名前で十分伝わるかなって(笑)。

さちこ:名前から昭和な二人です(笑)。そしてこのハイファイセットの曲たまんないわ。「スカイレストラン」もぜひかけてください。

吉峯さん:ここはつまみも旨いよ。さっそく一杯目頼もう。

日本酒をポピュラー化するために
さちこ:こんなに素晴らしい日本酒なのに、残念ながら消費量は落ち込んでいますね。

ゆうこ:例えば私たちの世代って、若い頃に悪い日本酒で恐ろしい悪酔いの経験がある人多いから、一度長いこと離れてしまってるんですよね。

さちこ:そうそう。私も質の悪い日本酒で恐ろしい二日酔いして10年くらい飲めなかった。

吉峯さん:でも昔のまずい日本酒を知ってるのは二人の世代くらいまでなんだよ。頭痛くなるような二日酔いもしやすかったよね。今の日本酒は本当に美味しくなったし、翌日残りにくい。近年日本酒はどんどんクオリティ上がってるから、30代以下の若者は「マイファースト日本酒イズソーグッド! 」の可能性のほうが高いよ。

さちこ:今の日本酒は本当に味、質ともに進化してますね。ただ何だろう、ワインみたいな気軽さがないから消費に繋がりにくいのかな?

ゆうこ:ワインはお魚には白、お肉には赤みたいな合わせとかわかりやすい提案があるし、飲む動機付けにもなってる気がするね。

さちこ:確かに、ハンバーグに日本酒とかってなかなかないかも。

吉峯さん:そもそも家庭内の飲酒の大部分はビールなんだよ。で、ワインは食中酒であり似たアルコール度数なのに、日本酒はワインにも後れを取っているというデータがある。家庭食メニューの洋風化はもちろんだし、家族の構成の変化による飲食形態の変化に日本酒がついていっていないことが原因かもしれないね。いずれにしても家庭において日本酒の想起はちょっと弱いよな。

さちこ:そんな背景もあって吉峰さんはそんな日本酒市場を応援してもりあげようと、たくさんの蔵のお酒、たくさんの銘柄を呑むというトライを続けてらっしゃるんですよね。

ゆうこ:我々も日本酒市場盛り上げるべくお酒おかわりいただこうか。

吉峯さん:いいね~、次はお任せでお願いします。

女将:お任せよりチャーリーが選んだ方がいいんじゃない?

吉峯さん:いやいやおかみに任せるよ(笑)。昨今、作り手は美味しい日本酒を作っているし色々な試みもしているんだけど、飲み手側はまだ何をどう飲んでいいかわからないんだよね。とにかくなんでもいいからまずは飲もうよ、ということで僕はまず1000銘柄飲んでみたんだけど、素晴らしいお酒は実にたくさんある。

ゆうこ:そうですよね。ワインみたいな指標がないから、選ばれにくいというのはあるかもしれない。作り手側からの発信がもっとあると、飲み手も選びやすいし、より一般化させるきっかけにもなるかもしれませんね。

吉峯さん:日本酒市場全体が活気を取り戻すには、造り手、売り手、飲み手の三方からうねりを作り出していく必要があると思うんだよね。造り手や売り手は、純米化、吟醸化や、唎酒師による飲食店での推奨等色々な努力を重ねてきてるけど、どちらかというとスペシャル化を通じての市場刺激になっているから、ポピュラー化できる取り組みもぜひ期待したいところ。

photo: yOU
text: Sachiko Ueda
【後編につづく】

吉峯英虎(よしみね・ひでとら)さん
1954年大阪生まれ、鹿児島育ち。一橋大学法学部卒業後、味の素株式会社に入社。食品の開発やマーケティング等と担当し、1997年スイスローザンヌのIMDにてPEDコース修了。2000年よりアメリカで責任者として冷凍食品事業を立ち上げ、2011年より2019年まで味の素冷凍食品株式会社社長を務める。2000年代中盤に「日本酒唎酒師」資格取得し、現在は日本酒の復興運動に奔走中。著書に『酒を愛し・酒に学ぶ』(エクセレントローカル出版部)。通称チャーリー。

ちんとんしゃん
東京都杉並区高円寺南4-24-11
chintonshan2@gmail.com(ご来店の際はご連絡いただけると確実です)
定休日 日・祝
美人女将は田島徳子(たじまのりこ)さん。

yOU/河崎夕子(かわさき・ゆうこ)

神奈川県逗子市出身の写真家。青山学院大学経済学部卒。雑誌、広告、ポートレイト、風景、料理写真中心に活動するほか、旅メディアの執筆(現在雑誌「旅の手帖」とweb「旅恋」で連載中)TV出演、国内外の地域ブランディングのプロジェクトへの参加も。2003年初個展「SHARE」から、これまでに12回の個展を開催。2013年フォトエッセイ「酒場のおんな」出版。現在は、複数のアパレルとのコラボでフォトTシャツがリリースされている。趣味は旅とアートともちろんお酒。
http://www.youk-photo.com

上田祥子(うえだ・さちこ)

1972年福岡生まれ。國學院大學神道文化学部卒。美容研究家・サン・ロータス株式会社代表取締役。「弥勒寺子屋」主宰。第17代クラリオンガールに選ばれ、モデル、レポーターなどを経て、ライターに。その後、2000年より3年間、アメリカ(NY、LA)に滞在し、英語、広告デザイン等を学ぶ。現在は、女性誌やウェブマガジン等に美容・健康を軸とした執筆、またコメンテーターとしてTV出演中。商品企画アドバイザー。神職資格を取得し、神主としても活動している。
https://miroku-terakoya.com

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