和食STYLE

豆腐百珍のすべて 23 尋常品 梨子とうふ

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

漆器、陶器、布、ガラス、金属など、梨地模様や梨地加工といえば、梨の実にあるような小さな点が付いていたり、表面のテクスチュアがマット調でざらついていたりと、梨地と呼ばれるものの適用範囲は広いですが、いずれも不規則な模様であることに変わりはありません。

今回ご紹介する23番『梨子(なし)とうふ』は、乾燥させた青菜(大根菜、ほうれん草、小松菜など)を粉々にしたものを豆腐とよくすり混ぜ、巾着絞りにして茹でた料理です。
丸く固まった全体が薄緑に色付き、深緑の斑点が浮かぶ様が、なかなかに美しくもあります。

江戸時代当時は、青菜をさっと茹でて軒先に吊るし、各家で干し菜を作っていたものですが、現代はスーパーなどで乾燥野菜が販売されています。もしなければ、青海苔を使えば、さらに簡単で美味しい梨子とうふになりそうです。

「調味はお好み次第」とありますので、そのまま生姜醤油や山葵醤油でいただいてもいいのですが、ビジュアルの美しさを優先して、汁物の具材にするのがおすすめです。吸い口には、緑に黄色が映えるよう、おろした柚子の皮をトッピングしました。

■梨子とうふ レシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
干し菜(乾燥青菜)…5g
すまし汁(出汁、酒、醤油、塩)…400ml
柚子…1個

【作り⽅】
1. 干し菜はよく揉んで細かくしておく。
2. 水切りした木綿豆腐をすり鉢でよくすり、1を加えてよく混ぜる。
3. ラップで2を適量包んで茶巾に絞り、口をしっかり閉じて熱湯に入れて弱火で5分ほど茹でる。
4. ラップを外した3を椀に入れ、温めたすまし汁を縁からそっと注ぎ入れ、すり下ろした柚子皮を乗せる。

※記事と写真の無断転載を禁じます

⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)、『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。最新刊は『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』(東京書籍)。
http://kurumaukiyo.com
『江戸っ子の食養生』
『免疫力を高める最強の浅漬け』
『蔦重の教え』
『発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』