和食STYLE

豆腐百珍のすべて 20 尋常品 濃醤

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

『濃醤(こくしょう)』とは、クセのある肉や魚、もしくは根菜類を、濃いめの味噌汁で煮た料理のことで、江戸時代までは全国的にポピュラーな調理方法でした。

現代では「鯉こく」という、輪切りにした鯉を、味噌と酒と砂糖で味をつけた汁で煮込む料理がありますが、これは「鯉の濃醤」が短縮された料理名です。

今回の『豆腐百珍』の20番『濃醤』は、わざわざ「豆腐の」とは書かれていませんが、当時の人々が料理名を見れば、それが「豆腐の味噌汁煮込み」を指していることがわかったということです。

原本のレシピを読んでも、豆腐を1/4丁に切って一椀に一切れを入れることと、花がつおを最初から入れて煮てはいけないこと、椀に煮上がった豆腐を入れてから粉山椒をかけ、花がつおを山盛りに乗せることしか書かれておらず、豆腐を何で煮るのかについては全く触れられていません。

どんな味噌を使うのか、ほかに何で味付けをするのかなど、それぞれの地方や家に伝わる濃醤で、お好きに煮てください、ということになります。水の代わりに、米のとぎ汁に味噌を溶かして、具材を煮る地方もあります。

■濃醤 レシピ
【材料】
木綿豆腐…1丁
濃い目の味噌汁…豆腐が浸る分量
粉山椒…少々
花かつお…適量

【作り⽅】
1. 木綿豆腐はしっかりと水切りし、4等分に切る。
2. 濃いめの味噌汁に豆腐を入れて紙蓋をし、弱火でコトコトと15〜20分ほど煮る。
3. 豆腐を一切れずつ器に盛り、粉山椒をかけ、山盛りの花かつおを乗せる。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壷』『知恵泉』等のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。
小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。
http://kurumaukiyo.com