和食STYLE

豆腐百珍のすべて 17 尋常品 ぶっかけ饂飩とうふ

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

17番『ぶっかけ饂飩(うどん)とうふ』は、きしめん状に切った豆腐を温めて、煮返し醤油と薬味をかけるだけの、シンプルな料理です。
味はほぼ湯豆腐に近いのですが、豆腐が切れないよう、そっと食べるあたりが何やら乙で、ありがたみを感じます。

ちなみに「煮返し醤油」とは、蕎麦屋でよく聞く「かえし」のこと。江戸時代に、濃口醤油が野田や銚子で作られ、江戸の町に運ばれるようになってから考案された調味料で、醤油を弱火で煮て、砂糖とみりんを入れて温め、じっくり熟成させて作ります。
醤油を煮返すことから「煮返し醤油」と呼ばれ、これが略されて「かえし」で通じるようになりました。

「かえし」に鰹出汁を加えたものが「蕎麦つゆ」となります(江戸の蕎麦屋は合わせ出汁を使いませんでした)。
筆者はかつて、老舗の蕎麦屋でアルバイトをしたことがありますが、厨房では常に、2種類の「かえし」の濃度が違うつゆが入った大鍋が温められていて、1つは「かけ(温蕎麦)」用、もう1つは濃いめのつゆで、丼ものや一品ものの注文が入ると、料理に合わせてブレンドしたつゆが使われました。

それを見ていて、蕎麦屋の料理が美味しいのは、熟成された「かえし」と出汁のグラデーションなのだと納得した次第です。

■ぶっかけ饂飩とうふレシピ
【材料】
絹ごし豆腐…1丁
煮返し醤油…大さじ3
薬味(花かつお・おろし大根・刻み白葱・一味唐辛子)…適量

【作り⽅】
1. きしめん状に平たく長く切った絹ごし豆腐を丼に入れ、熱湯を入れて湯切りする。
2. 煮返し醤油を1にかけ、薬味を乗せる。

※「煮返し醤油」の作り方は、醤油(100ml)を沸騰させないように弱火で温め、砂糖(20g)を溶かして本みりん(50ml)を入れ、5分程度温める。冷めたら冷蔵庫で1〜2週間保存して熟成させる。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
企業内グラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事し、シナリオを学ぶ。現在は、江戸時代の料理の研究、再現(1000種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『美の壷』他のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。。
http://kurumaukiyo.com