和食STYLE

豆腐百珍のすべて 15 尋常品 おし豆腐

時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

贋作発覚により、師の高芙蓉(こうふよう)の怒りを買い、京にいられなくなった『豆腐百珍』の著者・曾谷学川(がくせん)。
大坂の高麗橋一丁目に店を構える、星文堂という地本問屋の主人・藤屋弥兵衛(本名:浅野弘篤)の勧めで、商人の町・大坂に移住することになりました。

藤屋弥兵衛は、江戸時代初期から続く大版元(大手出版社+書店)で、主に易占(筮竹や算木を使う占い)、相法(人相・地相・家相などの吉凶占い)、医学、漢学、仏教など、様々なジャンルの本を出版&販売していました。

学川とのつながりは、師匠の高芙蓉が、大坂在住の文人墨客と親しく交流しており、その縁で知り合い、才能を見込まれたものと思われます。
大坂では藤屋弥兵衛の紹介で、大商人で書画や漢詩に造詣の深い、西村孟清・子恭父子に匿われ、篆刻作品を作って生計を立て始めました。(続く)

さて、15番の『おし豆腐』は、しっかりと押して水切りした木綿豆腐を、同量の酒と醤油で煮込んだ料理です。かなり塩辛いので、少しずつ箸で崩していただき、酒の肴に。

■おし豆腐レシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
生醤油…適量
酒しほ(料理酒)…適量
※生醤油と酒しほは等分で、豆腐が浸る量

【作り⽅】
1. 木綿豆腐を4等分に切り、布巾(キッチンペーパーでも可)で包み、まな板を斜めにして並べる。つぶれないよう重しを乗せ、しっかりと水を切る。
2. 小鍋に1を入れ、同量の生醤油と酒を浸るぐらいに注ぎ入れ、とろ火で煮詰める。表面が焦げ茶色になったら火を止め、小口切りにする。

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⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
企業内グラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事し、シナリオを学ぶ。現在は、江戸時代の料理の研究、再現(1000種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『美の壷』他のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。。
http://kurumaukiyo.com