和食STYLE

⽇本名産紀⾏ 柘いつか 第13 回 ⼊間市 ⼤⻄園の狭⼭茶

作家/旅行作家 柘いつか – Itsuka Tsuge –

⾊は静岡、⾹りは宇治よ、味は狭⼭でとどめさす

5⽉上旬からちょうど新茶の販売が始まりました︕
「⽇本三⼤茶」と評される狭⼭茶の茶園として、⼤⻄園製茶⼯場は江⼾時代末期に創業した、約250年の歴史を持つ伝統ある茶農家です。

埼⽟県⼊間市は狭⼭茶の産地で、茶の⼤規模⽣産地としては北限の地。冬の気温が低いため茶葉が厚みを持ち、春には茶成分を⼗分に蓄えた⾁厚な新芽を収穫することができるのです。

「⼿もみ茶⼗段」の段位を持つ、14 代⽬園主の中島毅さんは、全国⼿もみ茶品評会の頂点である⽇本⼀(農林⽔産⼤⾂賞)を8回も受賞し、最⾼位の称号「永世茶聖」を⽇本で初めて授与されました。

「茶園は⾜跡が肥やしとなる」という祖⽗の教えを⼤切に、365⽇、⾃らの畑で茶の樹を育て、⾃社⼯場にて製造・加⼯し、販売を⼀貫して⾏う6次化産業。
「やぶきた」「さやまかおり」「ふくみどり」など9種類の品種を育てつつ、良質な⽣葉、品種の特性が⽣かせるように⼟作り、肥料にこだわっています。

「お茶は⼿間をかければかけた分だけ応えてくれる⽣き物です」
HPの動画にあるように、特別に仕⽴てた永世茶聖・中島毅⽒が作り上げた「永世茶聖 究極の⼀品」は、⼤変貴重な⼿もみ茶です。畑、技術、加⼯など、すべてにおいてこだわりをもって仕上げました。

お茶の樹は⾃然のままに仕⽴て上げ、⼀つの芽を強くし、養分を蓄えさせます。その樹にできた芽を⼀芯⼆葉で⼿摘みます。
焙炉(ほいろ)と呼ばれる加温した台の上で、空気に触れさせるため持ち上げ、⽔分を⾶ばす「葉ぶるい」に始まり、「軽回転揉み」「重回転揉み」「揉み切り」「転繰り揉み」「こくり」などといった様々な⼯程を約8時間かけて、その間ずっと⽴ち通しで(中腰で︕)もみ上げ、完成させるのです。

仕上がりは松の葉のようにのように細く、⻑く、光沢があり、⾒ているだけでも楽しめる芸術的な逸品ですが、1回の⼿もみで製造できるお茶の量はわずか300g なため、⼤変貴重です。卓越した技術は「まるで芸術品のようだ」と評されることも︕

抽出すると、お茶の⾊は透明に近く、⼝に含んだ瞬間、これまでに体験したことのないような華やかなうま味と⽢味が広がり、⼝に残る余韻に酔いしれる、忘れられない⼀服となります。
⼿でもむことにより葉の細胞が壊れにくく、機械製では出すことのできない形、⾹り、滋味となるのです。
また、いつまでも残る余韻は⾮常に印象深く、⼆煎、三煎と楽しめ、最後は茶がらを丸ごと⾷べることが出来ます。いちどお飲みいただければ、これまで緑茶に抱いていたイメージが⼀変されることは間違いありません。

朝茶は1⽇の難逃れ
お茶を淹れる際は、低温でじっくりと抽出してみてください。淹れ⽅でお茶の味は全く変わります。低い温度で⼊れると⽢みが出て、⾼い温度は渋みが出る。そのお茶に適した温度で、正しく淹れれば、お茶が本来持っている旨味や⽢みを⼀番美味しい状態で飲んでいただけます。

最⾼級の⼿もみ茶は、低い温度のお湯で3分蒸らす(通常の緑茶は40秒から1分)。 ⼀⾒⾊は薄いのですが、驚くほどの華やぎと広がりが⽣まれます。
穏やかな⾹り、うま味、⽢味のハーモニーがひろがり、やがて⼼地よい余韻が訪れます。 ぜひこの「お茶の芸術品」を、⾒て、飲んで、体験していただければ幸いです。

こんなご時世だからこそ、これまで以上に安⼼、安全で魅⼒ある狭⼭茶作りを⽬指し、リラックスを求めて格別なお茶の⾹りと味わいのひと時に、⼼ゆくまで堪能することが⼤切だと考えます。

近年では茶葉を摘み取った後、⽣葉を広げて天⽇にさらす⼯程を加えることにより、お茶の命である⾹りを倍化させた「天⽇⼲し 天照⾹茶」や、埼⽟県の品種を⽤いた「和紅茶」の製造も。EU圏内にも製品の輸出をし、海外の⽅々にもお茶の⽂化を楽しんでいただけるようになりました。

⼤⻄園 狭⼭茶
https://oonishien.jp

柘いつか – Itsuka Tsuge –

作家。東京都生まれ。
世界 50 カ国以上を訪れ、各界に多彩な人脈を持つ。入間市でトカイナカ(都会田舎)暮らしを始め、日本の良さを再認識している。
『⼀流のサービスを受ける人になる方法 極(きわみ)』(光文社)が好評発売中。ベストセラーとなった『別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男』『成功する男はみな、非情である。』はアジア各国で翻訳された。
https://itsuka-k.com