和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㊷銀座 座屋のかつおのわら焼き

日本には季節を感じさせてくれる食べ物がいくつもある。そのひとつが「初がつお」で、5月頃になると身の引き締まったかつおが食べたくなってくる。そんな気分のときに、お薦めしたいのが『銀座 座屋(いざりや)』である。
高知県から空輸した新鮮なかつおを使い、わら焼きにして供している。東京に居ながらにして、本場の旬の味わいを楽しめる贅沢をぜひ一度体験してみてほしい。

昔ながらの手法で作られた
一口で3段階に美味しい「かつおのわら焼き」

銀座 座屋(いざりや)
東京都中央区銀座2-11-2 銀座2112ビル B1
03-3248-9090
http://www.izariya.com/

この季節になると思い出すのが「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」の句で、食いしん坊の私はかつおが無性に食べたくなる。そこで訪ねるのが『銀座 座屋(いざりや)』である。
一見男性的ともいえる土佐料理を洗練させ、雅(みやび)な味へと昇華させた店で、店名の座屋とは土佐弁で「いざってきや」=「ゆっくりしていって」という意味。その名前の通り、おもてなしの心が大切にされていて、和を基調とした店内は落ち着く空間となっている。

食材は、毎日鮮魚が高知から空輸されている。いろいろな鮮魚がある中で、この店のスペシャリテとなっているのは「かつおのわら焼き」である。
カウンター前の厨房には竈 (くど)が置かれていているので、カウンター席に座れば、目の前で「かつおのわら焼き」の調理を間近で見ることができる。
高知では、新鮮なかつおを塩につけて食べることが多い。それに倣って、塩とわさび、ニンニクを乗せて頬張ると、まず藁で燻された皮の香ばしい味わいに始まり、次に身の新鮮な風味が、そして最後に柔らかな旨みだけが残って口の中いっぱいに広がる。この味の3段ロケットが醍醐味だ。

「かつおのわら焼き」は店の名物なので、昼夜どのコースの中にも組み込まれている。特に夜は本格的なコース料理を供していて、数多く揃った土佐の日本酒と一緒に味わえる。しかし、私は「かつおのわら焼き」を白米と一緒に食べることをお薦めしたい。『銀座 座屋』の白米は高知県産のヒノヒカリと使用していて、光り輝く炊き立てご飯とかつおの旨みは相性ピッタリ、ただただ幸福感に包まれる。

初夏にいただくかつおなので、脂気のないサッパリした身を売りとしてきたが、最近は季節感もだいぶ変わってきて、5月中旬であれば、脂ノリのほどよいかつおを味わえるようになってきた。『銀座 座屋』では、朝、高知で獲れたかつおが夜のコースで供される。東京で、それほど新鮮なかつおを供しているところは少ないので、季節の初物をいただくのであれば、少し奮発して本場の味わいに挑戦してみてはいかがだろうか?

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 取締役会長。

https://www.ypmc.co.jp/