和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㊴とんかつ はせ川の特製だししゃぶ

豚肉を使った料理は脂のコクを活かしたものが多いが、上質なものであれば肉の旨みをシンプルに堪能できるしゃぶしゃぶもお薦めだ。
『とんかつ はせ川』の「特製だししゃぶ」は選りすぐりの豚肉を使い、極上ロースと通常のロース、豚つみれの3つの味が楽しめる。飲み干したくなるほど美味しい特製だしとの相性は抜群で、今までにない豚肉の新しい魅力に出会えるはずだ。

豚肉の美味しさを存分に引き出す
特製だしが魅力のしゃぶしゃぶ

とんかつ はせ川
東京都墨田区両国3-24-1 両国尾崎ビル103号
03-5625-2929
https://tonkatsu-hasegawa.com/

『とんかつ はせ川』は、旧店名のむさしや時代からランチタイムには美味しいとんかつ目当ての行列ができる超有名店だ。本店は両国だが、のれん分けした東銀座店も雰囲気がよくお薦め。

今回はディナータイム限定の「特製だししゃぶ」をこの一品に挙げたい。一般的にしゃぶしゃぶにはポン酢やゴマダレだが、ここでは風味豊かな「特製だし」で食べるのがポイント! はせ川の豚肉料理は、すべて平田牧場の平牧バーク三元豚のみを使用していて、「特製だししゃぶ」にすると上質な肉の旨みが存分に味わえる。

鍋は、特製だしと豚つみれが入った状態でやってくる。しゃぶしゃぶにする豚肉は、極上ロースと通常のロースの2種類が盛り合わせになっている。どちらも柔らかなピンクがかった赤身に雪のように白い綺麗な脂肪が入り、見るからに美味しそうである。野菜は、ネギと水菜が別皿で山盛りついている。

準備が整うと、店のスタッフが手際よく鍋を作ってくれる。まずは、器に特製だしと極上ロースを一切れ。一口目は何もつけずに頬張ってみると、極上ロースの脂がふわっと溶けて、口の中に甘さが広がる。特製だしとの相性は抜群で、これが豚肉なのかと思ってしまうほど。切れの良い後味に箸がどんどん進んでしまう。

一方、通常のロースは豚肉らしいしっかりとした旨みが噛みしめるほどにあふれ出てくる。極上ロースとの味わいの違いは、食べてみればすぐにわかる。どちらも特製だしがよくしみ込んでいるので何もつけずにそのままで美味しいが、薬味に柚子胡椒と柚子の皮が添えられているので、味を変えたいときに加えると、爽やかさが一段と増す。

肉を2~3枚食べていると、つみれも食べごろになる。つみれは、豚肉のしっかりとしたコクが感じられて、しゃぶしゃぶとはまた違った味わいだ。肉2種類・つみれそれぞれに違った旨みが堪能でき、食べる喜びも3倍に感じられる。

水菜とネギはしゃきしゃき感が残るように軽くだしにくぐらせて、しゃぶしゃぶ肉で巻いて食べると、絶妙なハーモニーにますます箸が止まらない。「特製だししゃぶ」は肉も野菜もバランスよくヘルシーに食べられるので、誰を誘っても喜んでもらえるだろう。

特製だしがおいしいので、ついつい肉を食べながら飲み干してしまいたくなる。そこをぐっと我慢しながら鍋の〆にたどり着くと、きしめんか雑炊を選ぶことができる。どちらも美味しいのだが、特製だしを味わいつくすならば雑炊をお薦めしたい。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 取締役会長。

https://www.ypmc.co.jp/