和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㊳濱壹の鯛の塩釜焼き

お祝いの場には欠かせない鯛は、日本人が大好きな食材のひとつ。『濱壹』では、ご主人の出身地である愛媛県から取り寄せた極上の鯛だけを使用し、さまざまな料理に仕上げてくれる。中でもとびきり美味しいのが「鯛の塩釜焼き」だ。鯛を丸ごと塩と卵白で包み、蒸し焼きにしているので、上品な白身の旨みはそのままにジューシーに仕上がる。目の前で、木槌で割ってくれる演出も思い出になるはず。

自然と笑顔になれる
楽しい演出も味わいのひとつ

濱壹
東京都港区浜松町1-20-5
03-3578-1232
https://hamaichi.net/

今回紹介する『濱壹』はJR浜松町駅から歩いて3分の好立地にあり、ゆったりとした個室5室とカウンター4席で贅沢なひと時を過ごせる。高級感があり、コストパフォーマンスも抜群なので大切な人との会食や女子会などにもぴったりだ。
ご主人の出身地ということで、『濱壹』では瀬戸内海で獲れた愛媛産の真鯛を使った料理が名物である。鯛めしや煮つけも美味しいが、ぜひ食べてもらいたい一品には「鯛の塩釜焼き」を挙げたい。春を彩るのにふさわしい、華やかで楽しい料理である。

丸ごと一尾を使って卵白と塩で固め、じっくりと時間をかけて焼き上げているので、見るからに手間暇かけたプロフェッショナルの技を感じることができる。
「鯛の塩釜焼き」は、木槌が添えられて供される。こんもりとした塩釜に包まれていて、一見すると何の料理かわからないかもしれない。店の方が手慣れた感じで木槌を使って割ると、めでたい鯛が姿を現すのだ! その演出感のある様子はイベントごとにもぴったりで、楽しくて何度見ても毎回盛り上がってしまう。

ご主人が吟味して選んだ脂の乗った鯛は、塩釜にすることで水分がほどよく抜けて、蒸し焼き状態になっている。そのため直火で焼いたときよりもふっくらとジューシーに仕上がっていて、口の中でじんわりと美味しさが広がる。絶妙な塩加減も相まって、鯛のシンプルだが深みのある味わいの真髄を実感できるだろう。もし塩味が足りない場合は、塩釜のかけらをひとかじりすれば、好みの味わいに調整できる。日本酒と一緒に楽しむのはもちろんだが、白いご飯とも相性は抜群。まさに、和を体いっぱいで実感することができる。この店では鯛めしも美味しいので、どちらをチョイスしようかと毎回悩んでしまうほど。

『濱壹』は現在、コース料理のみの提供をしている。「鯛の塩釜焼き」だけではなく、食材や調理法などすべてにこだわっているので、いつ伺ってもハイレベルな美味しさに必ずめぐり合えるという安心感がある。そのスキルの高い仕事から生まれる絶品の鯛料理を、まずは一度体験してみてほしい。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 取締役会長。

https://www.ypmc.co.jp/