和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㉟うどん 丸香のかけうどん

讃岐うどんは腰のある麺だけではなく、瀬戸内海産のいりこ(煮干し)を使った上品で香りのいい出汁を使ったつゆが何よりも美味しい。
『うどん 丸香』は東京では珍しく本格的な讃岐うどんを供していて、シンプルな「かけうどん」であればワンコインで食べられる店である。好みの天ぷらを頼んでも1,000円でおつりがくるリーズナブルさなので、ぜひお気に入りの店のひとつに加えてもらいたい。

出汁の香りについつい並んでしまう
東京で味わう本格讃岐うどんの店

うどん 丸香
東京都千代田区神田小川町3-16-1 ニュー駿河台ビル 1F
03-3294-1320

この店に出会うまで、私は九州うどん至上主義だった。九州のうどんは柔らかい麺とやさしい味わいのつゆが特徴なので、どうしても歯ごたえを感じる腰のあるうどんには抵抗感があったのだ。
関東に住み始めてから幾度かうどん店に足を運んだが、どうしても納得のいく味に出会うことができず「こんなものか…」と諦めていた時期もあった。

そんなある日、神田で趣味の中古レコード店巡りをしていたときに、行列の出来ているうどん屋を目にした。
行列の先からは、出汁のいい香りが漂ってくる。吸い寄せられるように行列に並んでみたところ、これが大正解だったのだ!

讃岐うどんの名店で腕を磨いた店主が営む『うどん 丸香』は、いりこ(煮干し)がしっかりと効いた出汁から作られたつゆが絶妙なので、まずはシンプルに「かけうどん」から試してみてほしい。
しっかりと腰のあるうどんに、洗練された透明なつゆがたっぷりとかかっていて、最後の一滴まで飲み干してしまうほどの美味しさである。噛むと弾力のあるうどんの美味しさが、そのときにはじめてわかった気がした。他には何も足していない、青ねぎが乗っているだけのただただシンプルな「かけうどん」なのに、箸が止まらなくなってしまう。

2004年頃から『うどん 丸香』に通っているが、今でも、これほどリーズナブルに東京で本格的な讃岐うどんを食べさせてくれる店を私は他には知らない。
讃岐うどんの特徴はいりこ出汁を使うことにあるが、『うどん 丸香』のつゆは、他の店とは何かが違う。いりこを使う分量なのか、かつおや昆布等を加えているからなのかはわからないが、とにかく他では味わえない旨みがある。

陽気がよくなるこれからの季節は、さっぱりとした「冷かけ」をオーダーしても美味しい。「かけうどん」や「冷かけ」であればワンコインで頼めるので、毎日昼時には行列ができるのも納得である。
最初はつゆを味わってもらいたいので「かけうどん」がお薦めだが、好みで竹輪天や海老天、野菜天等をプラスすることができる。それ以外にも釜上げや釜たまといった讃岐うどんらしいメニューも揃っているので、ぜひ何度か通って好みの味を見つけてほしい。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 取締役会長。

https://www.ypmc.co.jp/