和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㉞海玄の究極の海玄まぐろ丼

『海玄』(シーゲン)は、通常、高級店でしか味わうことのできない最高級品質のまぐろを比較的リーズナブルな価格で味わえる。その仕入れの秘密は、親会社が築地市場や豊洲市場で長年まぐろを中心とした仲卸を営んでいるところにある。
季節を問わず、目利きのプロが選んだ、その時期に一番美味しいまぐろが食べられるのが嬉しい。いろいろなメニューがあるが、迷わず「究極の海玄まぐろ丼」を選ぶのが鉄則!

高級店でしか味わえない
最高級のまぐろに出会える店

海玄(シーゲン)
東京都中央区築地4-13-8 ソラシアビル 1F
03-6260-4808
https://seagen.tokyo/

古くは築地、現在は豊洲市場でマグロを始めとする鮮魚の仲卸をやっている、やま幸(やまゆき)が手掛けている飲食店のひとつが海玄である。オープンしたのは2021年の秋だが、すでに知る人ぞ知る店として人気が高まっている。
場所は、東京メトロの築地駅から徒歩5分ほどの昔ながらの路地奥にあり、まさに隠れ家のような店である。レトロな雰囲気を漂わせる店も多いが、『海玄』はオープンしたばかりで、店内もシンプルだが居心地のいい清潔感のある空間にまとめられている。

海玄で食べるべき一品は、もちろん何を置いてもまぐろである。まぐろ丼だけでも数種類あるが、ここは絶対に「究極の海玄まぐろ丼」に限る。
何を隠そう、私も他のまぐろ丼を食べながら、周りの人の「究極の海玄まぐろ丼」を横目で見て、「やはり、あちらのほうが美味しそう」と後悔したことがあるのだ。

海玄で供されるまぐろは、通常であれば高級寿司屋や割烹等にしか卸されない、最高級のものが使われている。その中でも究極と名のつくものが、比較的手ごろな価格で食べられるのだからありがたい。

「究極の海玄まぐろ丼」は、その日によってまぐろの産地と部位が変わる。産地は店に行くとわかるようになっていて、私が以前食べたときは大間(おおま・青森)産のまぐろであったが、これが塩竈(しおがま・宮城)産等になったりする。
部位はその日あるものが出てくる仕組みで、私は背トロと中トロ、中落ちを食べたが、しかし、「究極の海玄まぐろ丼」に、中途半端なものが出てくることはない。例えば中トロであれば、上質な脂がたっぷりと乗った大トロに近い旨みと甘みのあるものしか供されない。

丼のご飯は、まぐろに合わせて、ややしっかり目に炊きあげられた酢飯で相性も抜群だ。まぐろとご飯を一緒に頬張ると、旨・甘みが一度に押し寄せてきて、パラダイスにいるかのような美味しさのうねりの中に放り込まれる。
なじみ深いまぐろだからこそ、一度食べれば、その味の違いがわかるはずである。「究極の海玄まぐろ丼」には小鉢やスープがついてくる。夜はまぐろのフルコースもあるが量がかなり多めなので、まずは丼をから試してみてからがお薦めだ。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 取締役会長。

https://www.ypmc.co.jp/