和食STYLE

豆腐百珍のすべて 2 尋常品 雉子やき⽥楽

⽂:時代小説家/江戸料理・文化研究家 ⾞ 浮代(くるま うきよ)



【⾖腐百珍とは】
天明2(1782)年5月に刊行され、大ベストセラーになった江戸時代のレシピ本。豆腐料理だけを100品、6段階に分けて紹介するという斬新さで話題に。大根、卵、鯛、蒟蒻といった百珍ブームのきかっけとなり、『豆腐百珍続篇』『豆腐百珍餘録』も刊行された。

2 尋常品 雉子やき⽥楽
第一回で、『豆腐百珍』は6段階(「尋常品」「通品」「佳品」「奇品」「妙品」「絶品」)に分類されていると紹介しました。
この6段階はミシュランガイドの星︎の数の評価基準(三つ星は「そのために旅行する価値のある卓越した料理」、二つ星は「遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理」、一つ星は「近くに訪れたら行く価値のある優れた料理」)のように、「凡例」のページで定義付けられています。

「尋常品」各家々で日常的に調理するもの。その料理の秘訣をことごとく記す。
「通品」世間によく知られていて、調理法を記すまでもないので名称のみ記す。
「佳品」尋常品より風味が良いか、見た目が美しいものを記す。
「奇品」ひときわ変わっていて、意表をつく料理を記す。
「妙品」やや奇品に優っていて、形の美しさと味の良さの両方が備わっているものを記す。
「絶品」妙品より優れていて、珍奇に関わらず、豆腐の本当の美味しさを知るべき絶妙の料理を記す。豆腐好きの人はこれを味わうべきである。

今回は、2番目に挙げられた「尋常品」の『雉子(きじ)やき田楽』をご紹介致します。 「雉子やき」とは、食材を醤油で付け焼きにした料理のことで、味噌を塗って焼いたものは「鴫(しぎ)やき」と呼びます。

『豆腐百珍』の中には13種類の田楽が登場するのですが、串を打つコツとして、「温めたお湯を爐木槽(ろもくそう)と呼ばれる四角い器に張り、豆腐を切るのも串に刺すのも湯の中で行うこと。
そうすれば柔らかい豆腐でも落ちる心配はない。湯の中から引き上げ、すぐに火にかけること」とあります。

●雉子やき田楽レシピ
【材料】
木綿豆腐…1/2丁
醤油…小さじ2
酒…小さじ2
柚子…1個

【作り⽅】
① 豆腐は水切りして長方形に切り、串を刺しておく
② 1を両面きつね色に焼き、醤油を塗って軽く炙る。
③ 醤油と酒を一煮立ちさせて猪口に入れ、柚子の皮のすりおろしを添える。

※豆腐の水切りは、豆腐の上にまな板と重しを乗せ、1時間ほどかけてゆっくりと水分を抜くと綺麗に仕上がります。時間のない場合は、豆腐をキッチンペーパー等でくるみ、割り箸などを敷いて皿から浮かせ、電子レンジに3分かければOKです。

⾞ 浮代
(くるま うきよ)

時代小説家/江戸料理・文化研究家。
企業内グラフィックデザイナーを経て、故・新藤兼人監督に師事し、シナリオを学ぶ。現在は、江戸時代の料理の研究、再現(1000種類以上)と、江戸文化に関する講演、NHK『美の壷』他のTV出演や、TBSラジオのレギュラーも。
著書に『免疫力を高める最強の浅漬け』(マキノ出版)『1日1杯の味噌汁が体を守る』(日経プレミアシリーズ)など多数。小説『蔦重の教え』はベストセラーに。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修。新刊『江戸っ子の食養生』(ワニブックスPLUS新書)発売中。。
http://kurumaukiyo.com