和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㉙焼き鳥 おみ乃のせせり

ご主人が名店で鍛えた腕を存分に発揮し、わずか数年で星付き店の仲間入りを果たした『焼き鳥 おみ乃』。
今や焼き鳥好きな人の間では、すっかり知られた名店となっている。特にお薦めしたいのは「せせり」で、旨みが濃縮されて、コクのある味わいが忘れられない一品である。
それ以外にも希少部位が揃っているのは、焼き鳥の専門店ならでは。お腹を空かせて行って、メニュー制覇を目指してほしい。

カウンター席だけの隠れ家で
極上の焼き鳥を満喫する

焼き鳥 おみ乃
東京都墨田区押上1-38-4 清流ビル1F
03-5619-1892
https://gfwd800.gorp.jp/

『焼き鳥 おみ乃』は、焼き鳥の名店で修業をしたご主人が独立して開いた店で、場所は行き交う人でいつも賑わう東京スカイツリーのすぐ近くである。東京メトロと都営地下鉄の押上駅、東武スカイツリーラインのとうきょうスカイツリー駅のどちらからもほど近く、利便性は抜群だ。

店内は、L字型に備え付けられた16席のカウンターのみで、高級感が漂うシンプルな設え。どこの席からも串打ちや焼きの様子が見えるので、食べる楽しみだけではなく、ある種、劇場のような調理のライブ感も楽しめる。

『焼き鳥 おみ乃』は基本的に一斉スタートとなっているので、まずは予約の時間を厳守すること。串焼きは、すべて契約養鶏場から仕入れた伊達鶏を使用している。
伊達鶏は柔らかな歯ごたえが特徴で、『焼き鳥 おみ乃』では丸ごと仕入れているため、他ではなかなかお目にかかれない希少部位が揃っている。高級木炭の代表格である備長炭でじっくりと、そして程よく火入れがされているので、どの部位を食べても「今日のハイライト!」とドキドキの気持ちが止まらない。

そんな絶品が揃う『焼き鳥 おみ乃』だが、あえて一品を選ぶならば「せせり」をお薦めしたい。「せせり」は首まわりに位置する肉の名称で、よく動かす部位のため、筋肉質で弾力性に富んでいて旨みがぎゅっと詰まっている。
また、一羽の鶏からほんの少ししか取れない希少部位としても知られている。口に入れると、しっかりとした歯ごたえで、噛むごとに旨みがあふれ出てくる。

『焼き鳥 おみ乃』は、各自の腹が満たされた時点でオーダーにストップをかけて、食べた分だけ料金を支払うシステムになっている。
しかし、予約もなかなか取れない人気店なので、お腹を空かせて行って、その日用意された様々な串焼きからシメのご飯にいたるまで、ぜひとことん食べ尽くしてほしい。

アルコールは、日本酒、ワインなど、焼き鳥に合う逸品が多数揃っている。希少品が置いてあることもあり、それもこの店に通う私の楽しみのひとつである。焼き鳥と共にゆっくりと味わいながら楽しい時間を過ごしてほしい。
2021年には姉妹店として神谷町店もオープンしている。こちら同じ味わいが楽しめるのでお薦めである。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 取締役会長。

https://www.ypmc.co.jp/