和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㉔鮨処やまとの車海老のにぎり

飲食店がひしめく築地の一角に、まだ28歳と若い職人が腕をふるう鮨店がオープンした。『鮨処やまと』を切り盛りする店主は一流店で腕を磨いた後に人気と実力を兼ね備えて独立し、オープンからわずか数か月で予約が殺到する繁盛店へと急成長を遂げている。
特に美味しいのは前の店でもしっかりと修業をしていた「車海老のにぎり」。珠玉の職人技を堪能してほしい。

28歳の若き職人が華麗にさばく
極上の「車海老のにぎり」

鮨処やまと
東京都中央区築地3-7-2 第五銀座ウェスト築地ビル1F
03-3543-6311

2021年7月に始まったこの連載も、早いもので24回目。年内のフィナーレを飾る店は、同じく今夏、築地にオープンしたばかりの『鮨処やまと』だ。まだ28歳というご主人が握る鮨屋は、この先必ず予約困難と呼ばれる人気店へ成長していくと確信している。
ご主人の安井大和さんは若くから鮨の世界に入り、『鮨処やまと』をオープンさせる前は江戸前鮨のトップランナーを走る『日本橋蛎殻町 すぎた』で、師匠の杉田さんの隣に立つ二番手として活躍していた。有名店でも店で若くして認められていた実力派と聞けば、否が応でも期待感は高まってくるだろう。

現時点では『鮨処やまと』で食べられるのはおまかせコースのみ。その中の一品として供される中でも特筆すべきは「車海老のにぎり」である。
実は密かに、日本橋蛎殻町の修業時代でも安井さんが下ごしらえをする「車海老のにぎり」が大好きだった。車海老の殻を手際よく、そしてリズミカルにさばく姿を、今までのお弟子さんの中で一番うまいのではないか等と思いながら見惚れていた。
『すぎた』にも長く通っているが、あるときから車海老の仕込みの手法が変わり、「車海老のにぎり」が一段増して美味しくなった。職人技の詳細は伺っていないが、歯ごたえが増して旨みもさらにアップしたのがはっきりとわかり、一口食べて感激したのを覚えている。
その技法をしっかりと受け継ぎ、勝るとも劣らない「車海老のにぎり」が『鮨処やまと』で食べられる。車海老の輝くような縞模様は見るだけでも美しく輝き、もちろん抜群に美味しい。

おまかせコースに含まれる肴やほかのにぎりはもちろん極上の味わいで、もちろん値段もそれなりではあるが、他の一流店に比べるとまだまだリーズナブルではないだろうか。一流店の味わいと価格を知っている人ならばコストパフォーマンスがいいとさえ思えるはずだ。
電話予約のみの受付で、毎月1日の午前10時から翌月の予約が開始される。メディアにもだんだんと取り上げられ始めてはいるが、今ならばまだ予約可能なので、まずは一度この鮮烈な味わいを体験してみてほしい。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/