和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり⑲麺や 七彩の味玉らーめん(醤油)

訪れるたびに行列ができているのだが、それでも食べたいのが『麺や 七彩』だ。ここはラーメン界の常識を打ち破り、客のオーダーが入ってから麺を打ち始めるというスタイルを貫いている。
自分の食べる麺を粉の状態から茹で上がりまで見られるのは、この店が最初に始めたスタイルだ。粉の香りが感じられる麺と醤油ベースのスープの相性は抜群で、きっと忘れられない一杯になるはずだ。

打ち立て麺が味わえるのはここだけ
都心の超人気ラーメン店

麺や 七彩
東京都中央区八丁堀2-13-2
03-5566-9355
https://shichisai.com/

『麺や 七彩』の名物は煮干らーめんだが、私のイチ押しは「味玉らーめん(醤油)」である。ここは喜多方らーめんをベースとしているからか、煮干しのスープよりも醤油味のほうが洗練された味わいだと感じられるのだ。醤油味のスープにも、ほのかに魚介の風味が感じられ、一見すると濃そうに見えるが決してそんなことはない。しっかりとコクがあって風味豊かで、かえしと呼ばれる醤油ダレがまろやかさをプラスしている。私はこのスープを一口飲むだけで、いつもこの上ない至高の境地へと誘われる。

そして、もうひとつ特筆すべきなのがオーダーを受けてから一杯分ずつ麺を打つ、そのこだわりだ。カウンター越しの至近距離で、揉んで、切ってと麺を打つ様子がライブ感満載で堪能できる。それを見ていると、ラーメンへの期待感もどんどんふくらんでくる。その打ち立て麺はひらひらとした太めのちぢれ麺で、粉の風味が感じられ、これもまた美味しくスープとよく絡む。

細切りのメンマや部位の違う2種類のチャーシューなどの具材にも、一切の化学調味料が使われておらず、どれもこだわって丁寧に作られている。『麺や 七彩』のラーメンは決して安くはない。並盛、中盛、大盛のどれを選んでも値段は変わらないが、どのラーメンも一杯1000円以上の価格である。しかし、私はこの価格にふさわしい価値のあるラーメンが食べられると思っている。ぜひ一度、ラーメン業界の常識を打ち破ったとさえ言われる打ち立て麺を味わってほしい。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/