和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり⑯伊万里ちゃんぽん 新橋店の特製ちゃんぽん

ちゃんぽんは、九州では家庭で当たり前に作られる料理のひとつだが、人によってスープや具材が全く異なり、当然、見た目も味わいも千差万別である。もちろん正解はひとつではなく、その人の好みや気分によって、九州人はいろいろなちゃんぽんを食す。
そんな中、佐賀県民にとって基本のちゃんぽんのひとつと言えるのが『伊万里ちゃんぽん 新橋店』だ。リピート必至のスープの秘密に迫った。

佐賀県民お馴染みのちゃんぽんが
東京に居ながらにして食べられる幸せ

伊万里ちゃんぽん 新橋店
東京都港区西新橋1-5-5 1F
03-6206-1143
https://imarichanpon.thebase.in/

何度か書いてきたように私は九州の佐賀県出身なので、九州の美味しいもの、つまりご当地グルメには少々こだわりがある。今回は佐賀県民であればお馴染みともいえる、ちゃんぽんを紹介したい。
九州の出身者や住んだことがある人以外は、あまり意識すらしていないかもしれないが、ちゃんぽんは地域によって味わいがかなり異なる。
チェーン店の店名の一部にもなっている長崎ちゃんぽんが全国的には有名だが、福岡県や熊本県、そしてもちろん佐賀県にもご当地ならではのちゃんぽんがあり、それぞれのソウルフードになっている。その違いはさまざまで、麺や具も地域ごとに異なるが一番大きな違いはスープである。豚骨スープや鶏がらスープ、魚介スープ等をブレンドしていることが多く、地域や店によって、あっさり味からこってり味まで幅広い。

今回紹介する『伊万里ちゃんぽん 新橋店』は、濃厚な豚骨ベースにホタテのエキスが効いたスープが特徴的だ。しっかりとコクと旨味はあるが、ギトギトとしたしつこさはなく、スープもすべて飲み干したくなる。このホタテのエキスがクセになる味わいで、一度知ってしまうと「また、あのスープが飲みたい!」となって、私も少なくとも年に3回は店を訪れている。絶対に食べてほしい一品は「特製ちゃんぽん」で、山盛りの炒め野菜の中にエビ、ホタテ、甘辛しいたけが入っている。
この山盛りの炒め野菜が『伊万里ちゃんぽん 新橋店』の特徴のひとつとも言える。実は、この店は佐賀県民であれば知らない人はいない名店、井手ちゃんぽんの娘さんがオーナーで、山盛り炒め野菜は井手ちゃんぽんから続く伝統なのだ。いつまでも後をひく味わいで、必ずまた思い出してたべたくなる。

店には鍋島や七田、天山といった全国的に名が知られた佐賀の銘柄が多く揃っている。ぜひ、夜に訪れて、佐賀の銘酒を飲みながら魚の身をコロッケ状に揚げた魚(ぎょ)ロッケや、いかしゅうまい、呉(ご)どうふといった郷土料理もつまんでみてほしい。
そして、最後はもちろん「特製ちゃんぽん」だ。ミニサイズもあるので、女性同士でも食べきれるはずだ。ちゃんぽんスープの奥深さを味わいながら、東京に居ながらにして佐賀気分を楽しんでほしい。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/