和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり⑩欧風カレー ボンディ 神保町本店の「ビーフカレー」

ソースやブイヨンをベースに野菜や果物を煮込むスタイルの欧風カレーは現在では当たり前のように作られているが、その発祥は、ここ欧風カレー ボンディ 神保町本店である。いわば日本のカレーライスの王道といえる店は、創業約50年、今でも行列ができる人気店だ。シンプルに見える口当たりのいいカレールーの中には、様々な食材が溶け込んで一体化し、コクのある深い味わいを生み出している。

創業当初から変わらない深い味わいで
多くの人を魅了する元祖欧風カレーの店

欧風カレー ボンディ 神保町本店
東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター2F

神田神保町は古本屋の町として知られているが、同時に中古レコード店の町でもある。音楽が好きでレコード集めを趣味としていた青年時代、足繁く通ったのが、ここ欧風カレー ボンディ 神保町本店だった。私が通い出したのは40年以上前のことだが、聞くと店は昭和48年の創業だという。当時から超がつくほどの人気店で、雑居ビルの一階辺りからよく並んだ記憶がある。それは40年以上経った今でも同じで、お昼時などは長い行列ができているのがすごい。女性だけのグループも多く、女性人気の高さもうかがえる。

カレーライスは日本人の国民食ともいえる料理のひとつだが、今では当たり前のように使われている欧風カレーというジャンルは、ボンディの創業者で先代のご主人が考案されたものだ。先代はヨーロッパで学んだソースをベースとして、その中に野菜や果物を加えて深みのある味わいのカレーを生み出したのだ。

ボンディでカレーライスを注文すると、最初にふかしたジャガイモ2個にバターが添えられて出てくる。ほくほくのジャガイモを食べながら、本命のカレーライスを待つというスタイルもこのお店が最初に始めたサービスだ。特に私がお薦めしたい「ビーフカレー」は、深いコクがあり、食べ始めると「もっと、もっと!」と食べ進める手が止まらなくなる魔法のような味わいだ。ご飯にはチーズがかかっていて、カレーをかけるとじわりと溶けて、まろやかさを程よくプラスしてくれる。

私はいつも「ビーフカレー」の中辛を頼んでいて、その辛さとチーズの風味が溶け合った味わいが絶品だと感じている。具材には大き目サイズの角切りビーフがごろごろと入っていて食べ応えも十分。よく煮込まれていて、牛肉がほろりと崩れて口当たりも抜群だ。最初に出されたジャガイモを残しておいて、バターごとカレーに混ぜて食べてもいい。ご飯の端に添えられているのがキュウリの漬け物とカリカリの小梅というのも、古くからのスタイルを保っていて風情がある。一度、その深い味わいを知ると、またすぐにリピートしたくなる。この味わいこそが日本のカレーライスの王道であり、今でも愛され続けている理由なのだろう。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/