和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり⑥らーめん天神下 大喜のとりそば

ラーメンは国民食のひとつといえるほどポピュラーな料理だが、次々と新しい味わいやトレンドが誕生し、人気店の隆盛も著しい。そんな中で20年以上も変わらず愛され続けているのが『らーめん天神下 大喜』だ。こだわりの鶏ガラスープは、淡麗さと濃厚さが同時に味わえる。そのスープが堪能できる「とりそば」は、一度食べるとリピートしたくなるクセになる一品だ。

鶏の旨味とコクが凝縮されたスープが絶品
20年以上不動の人気を誇る店

らーめん天神下 大喜
東京都台東区台東2-4-4
https://twitter.com/DK_TAKE?lang=ja

『らーめん天神下 大喜』は、20年以上続く名店として知られている。以前は湯島天神下にあり、美味しいラーメンを作るため店主が毎日3時間の睡眠で頑張っていたころに、よく通っていた。今では落ち着いた雰囲気の店主だが、当時はまさに鬼気迫るといった様子だったのが印象深い。2000年代のラーメンブームのさなかには、テレビ番組のランキングで1位を獲得したこともあるが、何よりも素晴らしいのは、その後、店の移転などの変化にも揺るがず妥協のない味が今でも保たれている点だ。

私も以前ほどは頻繁には行けないが、今でもわざわざ食べに行く店のひとつだ。現在の店は東京メトロの仲御徒町駅や末広町駅、都営地下鉄大江戸線の新御徒町駅、JR山手線・京浜東北線の御徒町駅のいずれを利用しても徒歩で10分前後かかる。しかし、ここは今でもお昼時などには行列ができるほどだ。

この店で、まず食べてもらいたい一品が「とりそば」だ。スープは比内地鶏の鶏ガラと煮干しがベースで、見た目も澄みきっていて美しい。口に含んだ瞬間は「薄めかな?」と錯覚を起こすほどクセがなく淡麗ささえ感じる。しかし、スープが喉の奥を通り抜けるころには凝縮された鶏の旨味とコクが口の中いっぱいに広がり、チューンと頬が引っ張られるような濃厚な味わいに圧倒される。極細のストレート麺はスープによく絡み、食べ始めるとつるつると喉越しがよく、箸を進める手が止まらなくなる。鶏の旨味が堪能できる塩味のスープに合わせて、具材は和の食材でまとめられている。添えられた柚子ペーストは香り豊かで食欲を誘い、色合い的にもアクセントとして効いている。鶏チャーシューは表面がほどよく炙られていて、しっかりとした食べ応えがあるのも嬉しい。

これに山盛りの白髪ネギとカイワレダイコンが乗っているのだが、さらに、とろっとした黄身が食欲を倍増させる味玉を追加トッピングするのが私の定番だ。
今まで星の数ほどのラーメン店が誕生し、そして消えてきた。一度食べれば、競争の激しいラーメン店で20年以上愛され続けている理由がきっとわかるだろう。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/