和食STYLE

文化遺産にふさわしい店・この一品 新・和食めぐり③鳥つね自然洞の「ももの塩焼き」

お昼時になると、名物の「特上親子丼」を求めて店の前に行列ができる『鳥つね自然洞』。しかし、地鶏の美味しさを存分に味わうならばシンプルな「ももの塩焼き」が一番だ。夜の「料理コース」をオーダーすれば、本命の比内地鶏と名古屋コーチンの「ももの塩焼き」だけではなく、〆のご飯に親子丼もついてくる。食べ慣れているはずの鶏肉の美味しさを再発見してほしい店だ。

一口食べ進むごとに旨味があふれ出す
ブランド地鶏の「ももの塩焼き」

鳥つね自然洞
東京都千代田区外神田5-5-2
https://toritsuneshizendou.gorp.jp/

今回紹介するのは、東京メトロ銀座線末広町駅から2分ほどのところにある『鳥つね自然洞』。住所こそ千代田区だが、ここも都心部からはすこし離れた鶏料理の専門店である。『鳥つね自然洞』といえば、最初に思い浮かぶのはランチタイムに提供されている限定20食の「特上親子丼」だ。ひとつの丼の中に地鶏の中でも選りすぐりの比内地鶏と名古屋コーチンが集い、それぞれの旨味と食感がハーモニーを奏でる贅沢な親子丼だ。メイン通りからはやや奥まった場所にあるにもかかわらず、この「特上親子丼」を求めて、連日行列ができている。

しかし「特上親子丼」だけで満足していては、この店の本当の美味しさを知ったとは言えないだろう。私が一番にお薦めしたいのは、夜の部で提供される「料理コース」の中にある。「鳥スープ炊き鍋」や「鳥すき焼き鍋」のコースも惹かれるだろうが、まずは「料理コース」を注文し、その中の一品料理として出される「ももの塩焼き」をぜひ味わってほしい。この「ももの塩焼き」も比内地鶏と名古屋コーチンの両方が出てくる。ギュッとしまった食感で味わいの濃い比内地鶏と旨味とコクが楽しめる名古屋コーチンというふたつの地鶏の違いをじっくりと堪能できるはずだ。好みはあるだろうが、どちらも優劣をつけがたい風味がある。ありふれた食材である鶏もも肉をシンプルに塩焼きにしただけなのに、どちらも一口かみしめるごとに、旨味がうねりのようにどんどんあふれ出てきて、何度食べてもついつい夢中で頬張ってしまう。他の店では決して味わうことのできない絶品の塩焼きなのだ。

この「料理コース」のお得なところは、ランチでは行列必死の親子丼が、やや小ぶりながらも〆のご飯として食べられることだ。卵がとろとろの状態で供される親子丼は、見るからに艶やかでSNS映えするが、写真を撮るのはほどほどにして、とろとろが保たれているうちに早く食べてほしい。 料理コース」は値段の違う3種類のコースがある。一番高いコースは量が多めなので、女性であれば真ん中のコースから試してみるのがお薦め。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/