和食STYLE

短期連載・5ツ星お米マイスターの「あなたに合ったお米選び」 ④グループ分けで、あなた好みのお米がわかる

5ツ星お米マイスター・山下治男さんに学ぶお米連載、最終回は「永久保存版・お米の分類」です。

「お米は、かたさ、やわらかさ、もっちり系、あっさり系の分類に加え、普段使っているお茶碗の特性を加え、8つのグループに分かれています。

たとえば、新潟の新種『新之助』は⑧にあります。もっちり系でややかため、漆器に合うわけです。北海道の『ゆめぴりか』は①に。こちらはもっちり系ですがやわらかめで、有田焼などの陶磁器のお茶碗がベストマッチ。いつも食べているお米を探してみてください」

山下さんにグループごとにおすすめの食べ方を伺いました。

①③冷めてもおいしい
「コシヒカリ」など甘みとふっくら感のある品種や、「ミルキークイーン」などアミロース(もちもち感の無いデンプン)が少なくアミロペクチン(もちもち感のあるデンプン)が多いお米がここに入ります。もち米のように甘みが強く、冷めても甘みを感じるので味の濃い洋食(肉系)のおかず弁当などに良いと思います。

③はお米本来の旨味と甘みが強いタイプです。もち米のような端的に感じやすい濃い糖質感のある甘みと違い、滋味深い馥郁とした旨味は、ごはんが冷めても口の中にゆっくりと残りますので和食のおかず弁当(魚系)などに最適です。

①グループのお米
ミルキークイーン、ゆめぴりか、コシヒカリ、みどり豊、夢ごこち、きたくりん、ふっくりんこ、にこまる、いのちの壱(竜の瞳)、おぼろづき、イクヒカリ、にこまる、キヌヒカリ、こしいぶき、風さやか、金色の風*、銀河のしずく*、恋の予感*(*は⑧にも入ります)

③グループのお米
ササニシキ、かぐや姫、やまのしずく、ささ結び、彩のきずな、いわてっこ、花キラリ*、彩のかがやき*
(*は④にも入ります)

②丼物
お米自体に程よい旨味を持つお米枠です。咀嚼を重ねるごとに旨味が伸び上がるタイプで、お米自体に芳醇な香りを持っている品種が多いのが特徴。具材の五味(甘味、塩味、酸味、苦味、酸味)を合わせたどんぶりのタレと合わさり、口の中で六味の旨味を作り上げるお米です。

中でも「ひとめぼれ」は咀嚼回数が増えるごとに芳醇さが広がるのが特徴。「淡雪こまち」はファーストインプレッションは柔らかくかくもちもちとしており、白ごはんで食べるとくどい様に感じる場合がありますが、親子丼などの場合、口の中で鶏肉に纏わり絡み合い、口の中で雪解ける淡雪のような雪解け感を味わえます。

②グループのお米
ひとめぼれ。だて正夢、淡雪こまち、ぴかまる、あさゆき、ゆめおばこ、ほっかりん、夢しずく、つぶぞろい、青天の霹靂、みえのえみ

④カレー
粘りが少なく、粒感、食感を感じやすいお米枠がこちら。特に「ほしのゆめ」などは粘りが少なく、硬く米粒のエッジを感じ、且つお米の旨味があります。カレールーのように粘度がある液体と混ざり合っても飯粒がフニャフニャになりにくく、最後まで粒の形状を保ちやすい。シャキシャキなお米の繊維感(横でなく縦に米粒に通る繊維感)=縦感を感じることができるのにもかかわらず、飲み込む際に重みを感じないライトなお米です。

④グループのお米
つがるロマン、ほしのゆめ、ふきこがね、夢つくし、花キラリ*、彩のかがやき*(*は③にも入ります)、ほほほの穂(⑤にも入ります)

⑤チャーハン
「餃子の王将」のようなパラパラチャーハンを家でも再現できるようなお米が⑤。このチャートに入っているお米は、大粒でお米の味わいが淡泊なので調味料、具材の旨味、油を足して作り上げる足し算料理のチャーハンに最適。味を調えやすく、くどさも感じません。また、粘りが少ない品種達ですので、炒める際に団子状になりにくい。誰でもパラっとおいしいチャーハンに仕上げやすいお米です。

また、チャーハンは「炊飯米を炒める」という再加熱調理になります。炊くだけでは引き出せないお米の旨味を、炒めることにより、さらに引き出せる料理です。⑤の米群はそれに叶う品種達でもあります。

⑤グループのお米
ななつぼし、富富富、まっしぐら、むつほまれ、萌えみのり、ハツシモ、ふさおとめ、きぬむすめ、一番星、くまさんの力、ほほほの穂(④にも入ります)、めんこいな(⑥にも入ります)

⑥卵かけご飯
卵液をご飯の上にのせてかき混ぜる卵かけご飯は、飯粒にかなり圧力がかかるので、卵の粘りと圧力に飯粒が負けないことが重要。程よく卵を飯にまとわせ、一粒に主張をするのが卵かけごはんの一体感と考えます。一体感を生むには、お米は硬めで縦に尖ったやや縦長のお米が合います。

中でも「笑みの絆」は最適です。卵を鳴門の渦潮に例え、渦の中に飲み込まれずに抗う勇ましい鯛がお米であるとイメージします。濃度のある卵に負けないお米の食感の“エッジ”が感じられるバランスが、私の思う卵かけご飯の理想です。

⑥グループのお米
きらら397、笑みの絆、実りつくし、雪若丸、結びの神、みずかがみ、めんこいな(⑤にも入ります)、おいでまい(⑦にも入ります)

⑦おにぎり
おにぎりを握ると、手から飯粒に圧力がかかります。その圧力に対して飯粒がつぶれない弾力を持つ品種が適正良好です。強く握っても飯がつぶれないので、きれいな三角おにぎりが整形でき、且つ、口の中に入れた際にパラっとほどけてくれる「はえぬき」などが代表格です。

⑦グループのお米
はえぬき、天のつぶ、なすひかり。とちぎの星、森のくまさん、ヒノヒカリ、天使の詩、ハナエチゼン、秋のきらめき、おいでまい(⑥にも入ります)

⑧釜飯、炊きこみご飯
お米自身が持つ旨味成分のグルタミン酸、アスパラギン酸が多種よりも比較的多く含まれる品種ゾーンです。

土鍋、炊飯釜の中で様々な具材、出汁と併せ炊飯した際、加熱時に旨味の相乗効果を狙えます。また、調味料を入れて炊くと炊飯器内のお水が早く沸騰してしまうので、お米にはある程度の硬さがあるのが理想。釜内の中は強い加熱力と対流が発生するので、柔らかい米は不向きです。その2点に耐える硬度を持っているお米が⑧のお米達です。まさに釜飯、炊き込みご飯向きといえます。

また、もっちり感を持ち合わせておりますので、直火ガス炊飯、固形燃料炊飯など、様々な炊飯火力手法においても、硬すぎず、柔らか過ぎず、炊きムラが起こりにくい安定した仕上がりを狙えます。

⑧グループのお米
新之助、つや姫、ふくまる、てんたかく、元気つくし、さかびより、いちほまれ、金色の風*、銀河のしずく*、恋の予感*(*は①にも入ります)

* * *

いかがでしたか。お米を侮るなかれ。極上のご飯ライフは食べ方次第で叶うのです。①から⑧までのお米を揃えて、お米ライフを楽しんでみてはいかがでしょうか。

山下治男/5ツ星お米マイスター

1976年生まれ、44歳。創業70年、山下食糧代表取締役社長(3代目)。すべてのお米の特徴がインプットされており、水や炊飯器の特徴と合わせてロジカルに「最高に美味しいごはん」を編み出す。大阪の本店では、約300種類以上のお米を常時ストック。選りすぐりの美味しいお米を絶妙のバランスでブレンドした「山ちゃんの極上米」は、単一種では決して出せない至極の味わいが楽しめるヒット商品。「マイベスト米探し」も相談可。

http://www.yamakome.com/