和食STYLE

短期連載・5ツ星お米マイスターの「あなたに合ったお米選び」 ①ヒカリ系vs.ニシキ系 東西米対決はどうなったの?

話題の「5ツ星お米マイスター」をご存じですか? 超高級寿司店から街の定食屋さん、お弁当屋さんまで、その店それぞれのメニューと予算に合わせた最適の米を選ぶ達人です。そんな「お米オタク」の達人・山下治男さんに、お米について色々伺う短期連載です。

日本人が大好きなあの味が勝ち!

現在、日本には約400種類のお米があるのをご存知ですか? 元々の代表的な品種はコシヒカリとササニシキですが、昭和になるまではどれも「お米」という認識しかありませんでした。

ところが戦後、食糧難を解消するために、西日本はコシヒカリ品種、東日本はササニシキ品種を作るように国が定めます。コシヒカリは寒いところでは育たず、ササニシキは暖かいところで育たないからです。こうして日本にはお米の二大品種が君臨したわけですが、今はほとんどのお米がコシヒカリのDNAを持った「ヒカリ系」に。「ニシキ系」の生産量は1%を切るくらいまで減ってしまいました。

主な理由は2つ。
1つ目は、温暖化によりササニシキが育ちにくくなったこと。以前は栃木あたりから東で作っていたササニシキですが、今は山形県くらいまでコシヒカリ勢が進出しています。2つ目は、日本人はコシヒカリの味が好きだから。

お米は「甘さと粘り」の指標があります。甘さが強くなるほど粘りが少なくなり、パサパサした食感に。これはお鮨屋さんにとってはメリットで、シャリにはササニシキがぴったり。今でもササニシキをご指名で使っているお鮨屋さんがあるくらいです。一方、コシヒカリは甘みと粘りがちょうど均等。なんとゴールデンバランスなのです。おいしいはずですね。

というわけで、東西米対決はあっさり「ヒカリ系」に軍配が上がり、今に至ります。あきたこまちもななつぼしもひとめぼれも、みんなコシヒカリの子どもたちというわけです。

「魚沼産」はなぜ頂点に立ったのか

お米の美味しさは、テロワール(環境条件)が大きく影響します。魚沼は花崗岩の岩肌で、雪どけ水が流れる場所。さらに広域のため、多くのコシヒカリが収穫できます。つまり、大量に流通することができるわけですね。

実際に味もおいしいのですが、知名度を上げてブランド化するには、流通量も重要。すべての要素が揃ったのが、魚沼産だったというわけです。実は、同等の美味しいお米はほかにもあるのですが、流通量が少なく知名度もないので「知られざる米」になっています。私の仕事はそれらのお米にもスポットライトを当てることでもあるのです。

レジェンド品種にも再び注目が

ヒカリ系、ニシキ系と系譜ができる前からも、お米の種類はありました。それを「レジェンド品種」と呼びますが、「あさひ」や「亀の尾」などがそれ。最近はあえてレジェンド品種を作る農家さんも出てきています。通販などでも購入できますので、昔のお米を味わってみるのもいいですね。

山下治男/5ツ星お米マイスター

1976年生まれ、44歳。創業70年、山下食糧代表取締役社長(3代目)。すべてのお米の特徴がインプットされており、水や炊飯器の特徴と合わせてロジカルに「最高に美味しいごはん」を編み出す。大阪の本店では、約300種類以上のお米を常時ストック。選りすぐりの美味しいお米を絶妙のバランスでブレンドした「山ちゃんの極上米」は、単一種では決して出せない至極の味わいが楽しめるヒット商品。「マイベスト米探し」も相談可。

http://www.yamakome.com/