和食STYLE

ミシュラン三つ星「鮨」職人 『若狭ぐじ』の新たな美味しさを引き出す

古来、京料理の主役として珍重されてきた福井県若狭湾でとれる『若狭ぐじ』。その最高級ブランドとして認定されたのが『若狭ぐじ【極】』です。その初認定(11月20日)を記念して、12年連続ミシュランガイド東京で三つ星を獲得(2019年より会員制となり返上)。日本の鮨界の頂点に立つといわれる『鮨さいとう』の主人・斎藤孝司氏に、京料理”最高の食材”と評される『ぐじ』(甘鯛)の新たな美味しさを「握り鮨」で表現していただきました。

「これだけの立派な『ぐじ』は、東京でもなかなか手に入らない」という齋藤氏。そんな『若狭ぐじ【極】』に対して、齋藤氏が選んだ握りの方法は次の3つ。
「味がきれいで淡泊な『ぐじ』を最大限に活かすには、旨みと甘みを引き出すため数日間寝かせます。握りの方法は、づけ・炙り・昆布〆の3種が最適ですね。づけを漬ける時間は5分、醤油で水分を少し抜きコクを出します。炙りは、皮と身の間の一番美味しい部分を炙ることで、脂を引き出します。昆布〆は、身を引き締め昆布のほのかな旨みと香りが広がります。それぞれに素材の旨味を引き立てる美味しさですね」

さて、この『ぐじ』(甘鯛)という魚、関東ではあまり馴染みがありませんが、桜色の美しい色と、上品な甘さが特徴です。とりわけ『若狭ぐじ』と言えば、釣りや延縄漁で漁獲された姿や形が美しく、鮮度のよい500グラム以上のものを、生産から流通まで厳しい品質管理によって取り扱っています。さらに今回、初めて認定された【極】は、釣り漁の船上で、血抜き・神経締めしたもののうち800グラム以上の身の厚いもののみに与えられたプレミアムブランド。鮮度を保ちつつ、身が締まり旨みが増すため、刺身などの生より火を通すのに適しているという常識をくつがえす可能性が広がったようです。

「『ぐじ』は美味しい魚だけど、今までは甘みが引き立つ焼き物や、吸い物で使っていました。しかし、きれいな淡泊さに少し手を加えることによって、握りでも素晴らしいことがわかりました。『若狭ぐじ【極】』のようないい食材が入れば、お出しすることがあるかと思います」(齋藤氏)
『若狭ぐじ【極】』は12月中旬、全国にお披露目の予定。江戸前鮨の世界でも新しい食材の風が吹くかもしれません。