子供たちが大きくなり、いつもの食卓をすこしオシャレにしたいと思うことが増えてきました。
そんな時には、たまに使う来客用然とした器よりも、毎日使う、しかもそれだけで食卓が完結する3種類の器を見直すことが近道です。
RECIPE #1
レンズ豆カレー 舞茸のソテー添え
①にんにくと生姜のみじん切り(各大さじ1/2)をオリーブオイルで炒める。玉ねぎのみじん切り(1/4個)も加え、透き通るまで炒めたら、合挽き肉(150g)、カレー粉(大さじ2)を加え、全体を炒める。②❶にチキンスープ(1カップ)、乾燥レンズ豆(1/2カップ)を加え、30分程度豆が柔らかくなるまで煮る。③❷に再びチキンスープ1/2カップ、トマトペースト(大さじ1)を溶かし込み、塩、こしょうで味をととのえる。④ターメリックライスと器に盛り、ソテーした白舞茸やパプリカをのせる。
料理をフワリと受けとめる柔らかな曲線。程よい角度の立ち上がりがあるので、スープカレーにもお勧めです。日本で生まれ、今はソウルで作陶を続ける金恵貞(キム ヘジョン)さんの器。小誌「もてなし上手のお取り寄せ」のフードスタイリングを手掛ける料理家・田上委久子さんが、最も注目する作家。φ20×H6㎝ ¥16,667(ギャラリーリブレ)テーブルスプーン¥1,800(リビング・モティーフ)
料理家
橋本彩子さん料理研究家
河内由美さん
白い器にこだわってきましたが、今は色味やザラッとした質感のある作家ものを探しています。レストランでは余白のある盛り付けをよく見ますが、日頃のカレーもリムなどで余白のとれる器だとカッコいいでしょうね」(河内さん)。「スプーンがとまる、程よい立ち上がりやリムのある器が使いやすいですし、またご飯やルーの端が器の傾斜で見えないので、簡単にきれいな盛り付けになりますよ」(橋本さん)。
RECIPE #2
カジキマグロのクスクスカレー
①カジキマグロ(1枚)を切り、塩、こしょう、カレー粉(大さじ1)をふり、薄力粉をはたく。戻したクスクスにオリーブオイル少々をからめる。②オイルで潰したにんにく(1片)を熱し、カジキ、ズッキーニ(1/2本)をこんがりするまで焼いて取りだす。③❷にザク切りにしたトマト(完熟1個)を潰しながら炒め、白ワイン(1/2カップ)を加えアルコールをとばし、チキンスープ(400㏄)を加える。カジキ、ズッキーニを戻し、タイム(1枝)も加え、カジキに火が通るまで煮る。塩、こしょうで味をととのえ、クスクスと器に盛る。
器の個展も催す「ギャルリーワッツ」のギャラリスト山本詩野さんが、カレー皿として愛用している品。軽く、扱いやすいのも魅力です。HERS世代の人気作家・一柳京子さん作。φ22×H5㎝ ¥7,000(ギャルリー ワッツ)細部まで丁寧に作られた、ステンレス製のディナースプーン。アンティークのような「いぶし」仕上げで、和食器にもよく合います。永島義教作 ¥4,500(千鳥)ナプキン¥1,400(ババグーリ本店)
CURRY DISH 001
瓜やココナッツの実など、自然の形を模ったオリジナルの器。微妙なゆがみに味があり、色合いも使いやすい。平皿、カップなどもあり、白磁や織部など色も豊富。約φ20×H5.5㎝ 各¥7,000(ババグーリ本店)
CURRY DISH 002
「うつわ祥見」でカレー皿として一番人気。程よい深みの鉢がカレーに適し、リムの縁取りが料理を美しく見せる品格のある磁器。石田誠作、紅毛手七寸ハットボウル(ホワイト、ブルー) φ21×H4.5㎝ 各¥5,000(うつわ祥見 onari NEAR)
CURRY DISH 003
山野邊孝作の灰釉鉢。灰釉の器は、色調に温かみのあるグラデーションがあり、盛るもので多彩な表情を見せてくれます。φ20×H5㎝前後の器は、カレー皿以外にも使いまわしが利き、サイズ感も絶妙。φ19×H5.5㎝ ¥5,000(うつわ楓)
CURRY DISH 004
「1人分のカレーはもちろん、2人分のサラダなど、使いまわしも利く器です。マットな釉でしっとりした大人の黒は、料理が映えますね」(うつわ楓 店主 島田洋子さん)。渡辺由紀作、栗マット平鉢 φ22×H4.5㎝ ¥4,200(うつわ楓)
CURRY DISH 005
いつものカレーをよそ行き顔にするのは、RECIPE#1と同じ金恵貞(キム ヘジョン)作のやや大振りの器。ルーシー・リー、クリスチャンヌ・ペロションが好きな器好きの間でも、話題の作家です。φ24×H6.3㎝ ¥28,000(ギャラリー リブレ)
CURRY DISH 006
ヴィンテージ感でオシャレな食卓を作ってくれるオーバル皿。数種の金属を混ぜた独自の釉薬による質感が魅力。立ち上がりのあるリムが実用性とアクセントに。生形由香作。26.5×19×H2.8㎝ ¥4,800(エポカ ザ ショップ銀座 日々)
CURRY DISH 007
リム付きの楕円皿は、いろいろな料理を横長に盛り付けられる使い勝手のいい器として人気。磁器ながら、ぽってりとした温かみのある質感。愛知県瀬戸市にてご夫婦で営む工房。新道工房 白磁さや型浅鉢 25×15.5×H4㎝ ¥5,000(千鳥)
RECIPE #3
サーモンアボカド丼
①刺身用サーモンとアボカドは厚めにスライスする。アボカドにはレモン汁を少々ふっておく。②しょうゆ、オリーブオイル(各大さじ1/2)を混ぜ、タレを作る。③器にご飯を盛り、❶をのせてタレをかけ、ケッパー、ディルを添える。
夜食や、ちょっと小腹がすいたな、と言われた時に、シャレた小丼があれば冷蔵庫にある残りものでも、ササッと喜ばれる一品を用意できます。ご飯を食べすぎない丁度いいサイズ、というのもポイントです。しっとりとした黒に、口縁に茶の釉がながれているのも素敵です。鈴木正彦作、黒カラメル碗 φ12.5×H7.8㎝ ¥2,600(宙)漬け物を入れた東屋の豆皿¥829(ユナイテッドアローズ 原宿本店 ウィメンズ館)
RECIPE #4
グリル豚とねぎのバルサミコソース丼
①豚バラ肉(7㎜程度の厚み、4枚程度)はかるく叩き、塩、こしょうをする。ねぎ(1/4本)を斜め切りにし、豚バラ肉と共にグリルパンでこんがり焼く。小鍋にバルサミコ(100㏄)を入れて火にかけ、とろりとするまで煮詰める。②器に発芽玄米ご飯(あるいは白飯)を盛り、豚バラ肉、長ねぎを盛り付ける。煮詰めたバルサミコをかけ、ベビーリーフを飾る。
掌に心地よくおさまる小丼。作家ものではなく「ババグーリ」オリジナルの量産品だが、乾燥や焼成の工程で、器の形が微妙にゆがむのも味になっていて、ひとつひとつに個性がある。どこかエスニックな無国籍感も魅力。小丼 φ12×H7.8㎝ ¥6,500(ババグーリ本店)
RECIPE #5
焼きなすと湯葉のあんかけご飯
①なす(1本)は焼きなすの要領で焼き、熱いうちに皮をむいて、ひと口大に切る。②だし汁(1カップ)、みりん(大さじ1)、しょうゆ、塩(各小さじ1/3)を合わせ、食べやすく切った生湯葉(1枚)を加えてさっと煮て、同量の水で溶いた片栗粉(大さじ1)で、とろみをつける。③器にご飯を盛り、焼きなすをのせ、上から❷のあんをかけ、針生姜を添える。
平飯碗としても使える浅井竜介作の器。「もともと向付用の器ですが、〆のご飯、お茶漬け碗としても映えるので愛用しています」(田上委久子さん)。作陶のみならずアートを学び、今は音楽やデザインの分野でも活躍。写真家・浅井慎平氏の子息でもある。平茶碗5組セット ¥20,000(銀座一穂堂)箸置き ¥840(リビング・モティーフ)公長齋小管・箸¥800(ユナイテッドアローズ 原宿本店 ウィメンズ館)
BOWL OF RICE
(左から)沖縄で日常の丼や飯茶碗として、古くから使われている器を「マカイ」といいます。村上雄一作の「粉引 マカイ」は、口径に対して高さが低めなのが特徴。温かみのなかに一匙の洗練があり、ぜひ普段使いに。サイズは大中小の3タイプ。(小)φ13.5×H7.5㎝ ¥2,500(うつわ楓)茶道の抹茶碗のような趣の美崎光邦作の碗。存在感は抜群ながら、500gの土から作ったという、手に馴染む軽さが嬉しい。φ13×H7.5㎝ φ14.5×H7㎝ 各¥15,000(銀座一穂堂)ほっこりと手に馴染む陶器。φ約12×H7.8㎝ ¥5,000(ババグーリ本店)
(左から)平飯碗として重宝しそうな器。金恵貞(キム ヘジョン)作。φ15.5×H6㎝ ¥9,000(ギャラリー リブレ)マットでナチュラルな風合いが特徴の二川修作の丼。シンプルながら、今時の空気感で料理が映える器。φ14.5×H7.5㎝ ¥4,000(ユナイテッドアローズ 原宿本店 ウィメンズ館)やや角ばったフォルムが洋食器とも好相性の漆器。軽量なのも嬉しい。「HERS世代にこそ、上質な漆器を日常で使いこなしてほしい」(日々・根本美恵子さん)。太田修嗣作 漆椀 ¥17,000(エポカ ザ ショップ銀座 日々)
料理研究家
横川まどかさん料理研究家
田上委久子さん
小腹がすいた時、夫の夜食や、おもてなしの〆に出番の多い小丼。「若い頃のようにたくさんのご飯はいただけないので、小丼サイズは重宝します。『角漆工房』の合鹿椀は、持ち上げた時に重くないのも気に入り愛用しています」(横川さん)。「丼という範囲で探すと限られますが、向付用の器などを小丼に見立てると選びの幅が広がります。ギャラリーの企画展などで、好きな作家ものを集めるのも楽しいですね」(田上さん)。
BOWL OF NOODLES
(左から)ドイツで最も古い工房の一つ「マルガレーテンヘーエ工房」のボウル。ディレクター李英才(リー・ヨンツェ)のもと、アジアの食文化との影響で生まれたシリーズ。φ15×H9㎝ ¥10,400(リビング・モティーフ)韓国現代白磁の第一人者イ・キジョ氏の器。シンプルながら汁麺、和え麺を盛ると、その洗練に感服。φ15.5×H8㎝ ¥5,000(ときのもりLIVRER)益子から千葉に拠点を移し活動する二階堂明弘作。幅広の額縁のようなリムがあるので、ご馳走感がアップします。φ23.5×H8㎝ ¥7,000(ギャルリーワッツ) ランダムな貫入が麺の程よいアクセントに。今泉毅作、貫入鉢 φ18.5×H6.5㎝ ¥5,000(ギャラリー無垢里)
RECIPE #6
あさりとごぼうのフォー
①あさり(8個程度)は日本酒(50㏄)を加え、蓋をして酒蒸しにする。蒸し汁は取っておく。②①の蒸し汁と、鶏ガラスープ(500㏄)を合わせ、ナンプラー(大さじ1)で調味する。③米麺は袋の表記に従って湯に戻す。②のスープに、ピーラーでリボン状に削ったごぼう(1/3本)と、戻した米麺を加えてさっと煮る。④器に盛り、黒こしょう、輪切りにしたすだち、香菜をのせる。
有田で手触りにもこだわった暮らしの器を作る照井壮氏。フォルムとサイズが絶妙で、口縁のアクセントで盛りつけ映えも。加彩鉢 ¥4,000(うつわ楓)レンゲ¥800(HAKUSAN SHOP)ナプキン¥3,600(リビング・モティーフ)角掛政志作、蓋物 ¥3,800(千鳥)
RECIPE #7
ピリ辛鶏のまぜ蕎麦
①鶏のささみ(1本)は、生姜の薄切り(2枚)、ネギの青い部分少々と共に水から火にかけ、沸騰したら火を止め余熱で中まで火を通す。粗熱が取れたら水気を切り、細く裂く。②コチュジャン(大さじ1)、しょうゆ、きび砂糖、米酢(各小さじ1)を合わせてタレを作り、➊を和える。きゅうりは皮をむき細い棒状に切る。③蕎麦は茹で冷水でしめ、よく水気を切って器に盛る。大葉をのせ、➋のささみ、きゅうりを添える。中央に少しくぼみを作り、うずらの卵をのせる。④ごま油を少々たらして、絡ませながらいただく。
麦わら帽子を逆さにしたようなリム鉢。広いリムがポイントで、盛り付けが苦手な方でも、簡単に余白をいかした盛り付けができます。アイボリーがかった白い釉で、フォルムが一枚ずつ微妙に異なるため、一点もののような雰囲気があります。伊藤環作、白泥リム鉢 ¥10,000(ラ・ロンダジル)手ぬぐい¥1,400(ババグーリ本店)
(左から)テーブルを引き締める黒。スタンダードの7寸という大きさにこだわりながらも、底のすぼまったモダンなフォルム。手頃な価格なので、数を揃えるのにも適している。信楽で作陶する加藤益造作。黒釉 七寸鉢 φ21×H6㎝ ¥3,500(銀座三越)存在感のある彫鉢。生形由香作・φ22×H7.2㎝ ¥7,000(エポカ ザ ショップ銀座 日々)丹念に一本ずつ線を入れる鎬の技法で作られたリムが美しい余白になる。阿南維也作、白磁鎬リム付鉢 φ22.5×H8㎝ ¥6,000(うつわ祥見 onari NEAR)
料理家
小堀紀代美さんPARTY DESIGN主宰
江川晴子さん
「口径が大きい方が派手で見栄えがします。そして適量を保つために、底はすぼまっているものがいい。麺だけでなく煮物やサラダを盛る時も、底が狭いとカッコよく盛り付けられ、使いまわしが利きます」(江川さん)。 贅沢スープを使う時やスープの塩分が気になる時にも、この形は◎。「今、和食器は土ものよりも再び磁器に目がいきます。白い器に麺は清々しくたおやかな気がして探しています」(小堀さん)
撮影/川上輝明 スタイリング/澤入美佳、加藤登紀子
フード/橋本彩子 撮影協力/田上委久子 取材・文/加藤登紀子
HERS 2016年11月号より