和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第五八回 鮪家

第五八回 鮪家

お鮨はやっぱり“人”だわ

第四八回の「神楽坂寿司こんこん」で系列店なので行ってみてくださいと言われていたのを思い出し、「今から行ってもいいですか」でカウンターの端っこ席に案内されました。
メニューを見ていると付け台のちょっと年配の職人さんが話しかけるタイミングを見計らっているのがわかる。顔を上げたら、「よし、今だ!」とばかりに「サワーはこっちに書いてありますよ」と。
日本酒からいこうと思っていたけどそう言うならと「金の抹茶ハイ」を。するとすかさず「お仕事帰り? 気になるものがあったら何でも言ってね」とめちゃくちゃ感じいい! つまみの量を聞くと「揚げ物はちょっと多いかなぁ」と。「鰯のなめろう」と「ホタルイカの酢味噌和え」、「鮪家盛り」という6種の鮪の部位の刺し盛りの中から気になった「目裏」と「頬」だけをお刺身でいただきます。

つまみ、全然イケル! 「なめろう」はその場で叩いてくれるし生姜の量も丁度いい! おまけに「ちょっと増やしてあげるよ」と丸ごと一尾にしてくれて「海苔いる?」と出してくれるお心遣い。ニンニク嫌いって言ったら鮪は胡麻油と塩で味付けしてくれました。塩にむせたら「これ効くよ」って、ひと口大の山葵巻きを出してくれるお心遣い×2。なんか楽しい。お鮨って味だけじゃないんだよとしみじみ納得したところで、握りへ。
おすすめの「石鯛」はねっとりとおいしいし、高級鮨店にはない「タコの吸盤」とか「とびっこ」とか「納豆軍艦」とか頼んじゃったりして、なんか楽しい×2。

順番も第五三回「鮨源」みたいにお皿に並んでないので何から食べればいいの ぉ?なんて思わず、食べたいものを食べたい時にお願いする。アタリもあればハズレもある、でもこれでいいのだ。それに握り 160 円〜とリーズナブルなので、酢飯がねっとりやわやわなのも許せちゃう。さすがに「ホッキ貝」はこの酢飯はいかがなものかと思ったけど、「炙りえんがわ」とか「かんぱち」とか「エシャロットうずら」だとこれも有りなんじゃないかとさえ思ってしまう。だって楽しいんだもん。

店名は「鮪家」と書いて「つなや」と読みます。推しは鮪で使う部位も品数も多い。本日のおすすめは中トロ。いや、かなりでかい! アイルランド産だけどとろっとしてマジうまい! 味の深みとかうまみの奥行きはないけど、食感だけなら高級店の中トロに負けない。大トロも然り、ちょっと後味にクセがあるけどいいよ、楽しいし。「ネギトロ軍艦」なんて「これだよ、これ!」と思っちゃう。

そろそろお腹も膨れてきたので最後に何が?と聞くと、見た目まずそうな「穴子」って言うじゃないですか。なんでも生の穴子を特製トースターで焼くのでおいしいんだと。確かにふわふわでしっとり焼き上がっています。
まぁ、良しとしてお会計を。サワーと日本酒 2 合、つまみ 3 品、握り 12 貫で 11,690 円。目の前にネタケースがあって、好きなものを好きなだけ頼め、途中で年配職人さんから30代職人さんに代わってしまったので、ちょっと楽しいが減っちゃったけど初めてでも居心地良くて大満足!と思った時に「え?タバコOKなの?」。斜向いに座ったカップルが電子タバコを吸い始めた。昔はみ〜んなお鮨屋さんでタバコ吸ってたけど、今はあり得ないわ。これでいきなり評価下がったとさ、チャンチャン♪

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。