和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第五七回 すし光琳

第五七回 すし光琳

お手軽で味もなかなか、ブラボーな町寿司

町寿司を予約困難にした「すし宗達」の姉妹店として、“奥渋”にオープンした「すし光琳」。
コロナ禍真っ只中とはいえ、1貫から OKで 15時オープンという業態故、ぜんぜ〜ん問題なくみるみるうちに予約困難店となりました。この日だって平日なのにネット予約で15時しか空いていなくて、行ってみたら小学生連れ4人家族とおしゃれ紳士がすでに始まっていて、私はおしゃれ紳士の横に案内されました。おしゃれすぎで香水の匂いがム〜ン。お鮨屋さん、いやごはん食べる時に香水禁物ルール知らないのか。
大人なのにと思いながら席に着くと、これがなかなか狭いわけ。隣同士くっついちゃうくらいの感覚で、椅子も小さめでお相撲さんは 3つくらい並べないと座れない。ま、町寿司ってこういう感じがいいのかも。

この日は超寒くて熱燗から。付け場には年配のベテランさんとオープンから任されている40 歳前後の店長さん(おしゃれ紳士との会話で分かった)の2人。
実はオープン当初1 度来たことがあるけど、そんなの覚えているわけもなくアウェー状態。壁の黒板メニューを見ながら「なんか話しかけてくれないかなぁ」と期待するも玉砕。なので「ニタリクジラの刺身」と「ホタルイカと菜花のぬた」をオーダーする。15時10分には満席となり反対側のお隣さん(韓国人若者カップル)もその隣のカップルにはお通しのしじみ汁が運ばれたのに私だけ来ない。
「マジかよ」って顔していたのか、「ニタリクジラ」も「ホタルイカ」も来た後に「お通しです」って。このタイミングじゃ「お通し」じゃないじゃんと思ったけどおいしいかったから許す。

ニタリクジラはやわらかくておいしい。自家製玉葱醤油もいいお味です。ホタルイカも酢味噌がおいしくて菜花も絶妙な茹で加減です。さて次は「タコのやわらか煮」でもと思ったらおしゃれ紳士が頼んでいて見たらかなりのボリューム。おしゃれ紳士は「蒸しアワビのつまみ」を頼もうとして量を確認。そりゃ、そうだよね。同じくらいの量が出てきたらつまみ2品で腹7分目だもん。すると店長さん、「少し量を減らしましょうか」と。そのやり取りを聞いた私は握りへ。「今日は何がお勧めですか?」と聞くと「旬なのは春子鯛、サクラマス、ホッキ…、鰤はそろそろ終わりですかね」と。ホッキ貝は最後に炙り、春子鯛は活きがいい。赤酢と白酢をブレンドした酢飯も鮨ダネを邪魔せずいい塩梅です。

最初に手酢を付けてポンっと手を叩いてから4手〜5手で握る店長さん。そういえばポンっは久々に聞いたなぁ。みんな手酢をどうしていたっけ?「スミイカ」も「天然シマアジ」も素材を活かした仕事っぷりでなかなかいい感じです。コンロの火で焼き目をつけた「大トロ」は焦げの香りはいいけどあまりトロトロではなかった。焼きすぎちゃったからですかね。でも「ノドグロ」は炙り加減も温度もちょうど良く、脂ものっていて塩の振り方もいい!

握りは総じておいしい。1貫80円〜でこの味、人気なのはわかります。ネタケースも狭い客席も綺麗すぎない感じも、常連さんファーストだけど一見さんもいつしか仲良くなれる感じも、何もかもが“ザ・町寿司”。でもこれがいいんですよね。 本日のお会計、日本酒2合、つまみ2品、握り7貫で8,860円。またふらっと来たいですね。予約がなかなか取れないけど。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。