和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第五六回 aburi TORA 熟成鮨と炙り鮨

第五六回 aburi TORA 熟成鮨と炙り鮨

ファミリー向けのちょっと高級な回転寿司

「aburi TORA」ってネーミング、11:00〜22:00のぶっ続け営業、システマチックな予約がなぜか気になり行ってみると、準備したQRをかざす必要もなく「どうぞこちらへ〜」と案内されました。できたばっかりなのか店内は超キレイ。でもなんかファミレスっぽいボックス席に初めて気づく、「ここは回転寿司じゃな いか(回らないけど)!」と。平日16時なんて時間のせいか、広々とした店内には男性2人、カウンターに女性1人の2組のみ。これはダメかも…という不安にかられていると「当店初めてですか? 簡単に説明します」と優しいスタッフさんから説明を受ける。

こちらは「熟成鮨」「炙り鮨」「ABURI 鮨」「塩と檸檬」と、島根直送の希少タネがウリとのこと。席ごとに設置されたタブレットのタッチパネルでオーダーという最新スタイルで、まずは「京都宇治抹茶ハイ」と「特選氷結熟成生づくし」をオーダー。すると「商品が到着します。お気をつけてお取りください」というアナウンスが聞こえたかと思うと、ずず〜っと奥から真っ直線にシャーっと音をたてながらなかなかの勢いで到着。これがなんか、おかしくて吹き出してしまいます。
熟成鮨はと言いますと、白烏賊はねっとりしていますが皮が剥ききれていなか ったのか、端っこが硬くて噛みきれず。それよりも食べようと手で持ちあげたら酢飯がお皿にくっついちゃってる。剥がすように持ったら米粒が残るんです。

平目も縞鯵もタネは期待していないので、硬かろうがうまみがなかろうが「ま、こんなもん」と思えるけど、いかんせん酢飯がお皿にくっついて残るとか固まっているとかは考えもんです。「究極! 本まぐろづくし」も然り、問題は酢飯です。
おまけになぜか変に甘い。子供用に甘くしているのだろうか。しかし 6 貫目の大トロを食べる頃にはこれも有りかもと思えてくるから人間の順応性ってすごい。

これ以上熟成を食べてもと、今度は炙り鮨に。「炙り熟成鯖(380円)」は炙った香りがあってほんのりと温かく、いつぞや行った回らないお鮨屋さんの冷めた炙りよりよっぽどいい。タネを炙っているからか、なんと酢飯までちょうど良い硬さになるという“棚ぼた”にちょっと嬉しくなります。そうか、炙りの方がいい かもと次は「ABURI」(どうやら外国人向けメニュー)へ。すると「バンクーバ ーロール」なるものが。これはなんぞやと聞いてみると「カリフォルニアロール」にオリジナルソースをかけて炙っているそう。頼んでみると、今度はなぜか下のレーンから同じようにシャーっと音をたててやってきた。炙ったとびっこのプチプチ加減もオリジナルソースもイケるし、なんといっても酢飯の温度とほどけ方がいいのでおいしい!

やはり炙りだなと「aburi premium」を。生海老は海老味噌タレが甘いだけでコクがなくダメー! 真イカは柚子醤油がぶわーっと広がるもイカがダメー! ずわい蟹はマヨネーズらしきものと胡椒が蟹の風味を殺してしまいダメー! 人間、一つ良くなる(酢飯)とさらに上を望む(鮨ダネ)っていう悪い癖が。これでフィニッシュは後味悪いので炙りの方のずわい蟹をオーダー。今度はまた上段のレーンからシャーっとやってくる。上下に分かれる理由はわからないけど何度でも笑えるなぁ。塩は強いがまだこっちの方が蟹の風味がある、ということでもう満足とお会計。本日は京都宇治抹茶ハイと日本酒 1 合、握り 12 貫(セットメニューあり)で5,434円。ファミリーにはいいのかもね。ま、ちなみ前述の2組はお店の人でした。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★
のどの渇き度 ★★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。