EATRAVELLER HIROE の女子美食旅 ㊶ 長野県須坂「 仙仁温泉・岩の湯 」
長野県須坂に流れる仙仁川沿いに、日本一予約の取れない温泉旅館があります。その名は「仙仁温泉 岩の湯」。1万坪の敷地にわずか18室。部屋の稼働率は 95%以上、リピーター率 70%以上という驚異の温泉宿です。ひとたび宿泊すれば誰もが虜になり、また泊まりたくなるという「岩の湯」をご紹介します。
こちらの名物である大洞窟風呂は(撮影禁止なためお写真はありません)「家族で人生を語り合いながら一緒に浸かる」、そんな思いから混浴にし、 湯浴み着を着用して入浴。温泉の水しぶきが立ち込める洞窟内は天然のミストサウナのようにじんわりとあたたまります。
その絶妙な湯の温度はやや低め、肌に優しいアルカリ性単純泉なので延々入っていられます。全長 12mと 30mの洞窟を探索しながら冒険気分も味わえ、お好みの窪みにて瞑想するもよし。身も心も解き放たれ自分と向き合えば良いアイディアが閃くというもの。 大洞窟風呂の他、貸切露天風呂 3 つ、家族風呂もあります。
立ち上る煙に目が釘付け。岩魚はシンプルな塩焼きでありながらもほんのり脂がのっていて塩加減がちょうどよく、身はしっとりと皮目はパリっとした焼き上がりでした。周りにはウド、キンカン、野沢菜の天ぷらが 簪(かんざし)のように串挿しで飾られ、その美しさに歓声が上がります。
イトウ、鯉、馬肉のお造り。3種の付けタレは、醤油、ポン酢、玉ねぎたれ、それに、ワサビ、生姜、昆布ペ ースト、好きな組み合わせでいただきます。イトウは幻の魚と呼ばれている珍しい淡水魚。柔らかくて淡白。馬刺しは味わい深く、日本酒がすすみます。雪を見ながら楽しむにごり酒はふんわりとした口当たりが心地よく、クイクイ飲んでしまう危険なお酒でした。
ガラスの蓋の中でスモークされたメインのお肉。蝦夷鹿、信州牛、信州オレイン豚の中からのチョイスです。レアっぽい仕上がりを、各々が熱い石の上で焼き加減を調節。桜、りんご、オークのチップで燻され、薫香が食欲をそそります。また、こちらで使用しているお野菜は、三千坪の専用農場で栽培しているもの。採れたてのみずみずしさを存分に味わうことができます。
館内を歩いていて気付くのは、書斎や展望デッキのようなパブリックスペースが数多くあること。落ち着いて読書や考え事のできる贅沢な空間です。こうしたスペースは「目まぐるしく変わってゆく毎日の中で、本来の自分に戻れる場所が必要」という思いから生まれたもの。 社長の金井氏が感銘を受けた哲学者 ルソーの著書にしばしば登場する「サン・ピエール」は、命の危険を感じたルソーが逃避した島。
傷心を慰められ安住の地と呼んだエピソードから「岩の湯を現代のサン・ピエール島のようにしよう」というコンセプトが浸透しました。こんなにも心地よい宿がお手本とした島ってどんな島なのかしら? 書斎でコーヒーを飲みながら青写真を描くことで 俄然興味が湧いてきます。 ここでの旅が終わっても、こんな風にして次なる旅を紡ぎだすのです。
評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
食材への愛:生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか
地産地消度:地元で生産されたものをどれだけ消費しているか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか
わざわざ度 ★★★★★
食材への愛 ★★★
地産地消度 ★★★★★
唯一無二度 ★★★★★
リピしたい度 ★★★★★
美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。