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とんかつ3名士 河田部長のとんかつひとり旅㊷ 炭火焼とんかつ大蔵(大阪・玉造)

大阪ブラックで知られる人気ラーメン店金久右衛門の創業者、大蔵義一さんが始めたとんかつ店です。 2018年にバーボンウイスキーをかけて熟成させた豚肉のとんかつを提供する「ニューバーボン」として始まり、 2022年からとんかつを炭火焼にする「炭火焼とんかつ大蔵」としてリニューアルオープンしました。玉造駅を出てすぐの場所にあります。時間帯によっては行列が出来ることもあるようです。

岐阜県の藤井ファームがとうもろこしや発酵飼料を与え、ストレスの無い環境で飼育した「あんしん豚」を使用しています。特上ロース、シャトーブリアン、鶏かつを組み合わせた 3 種ミックス定食という便利なメニュ ーがあるので、それを選択しました。ラードに背脂を加えた揚げ油でいったん揚げた後、炭火で仕上げるようです。運ばれて来たとんかつはまず香ばしい炭火焼の香りが鼻腔をくすぐります。肉の断面は肉汁で輝いています。衣は中粗できつね色に揚がっています。塩で食べるよう店側が推奨しているのでまずは沖縄県産のピュアソルトを使うことにします。鶏かつから箸を向けます。柔らかくあっさりした中にも滋味が感じられます。ヒレのシャトーブリアンには豚肉の旨みが詰まっています。特上ロースは旨みはもちろんのこと、甘みのある脂が堪えられません。

他の部分も抜かりはありません。山形県の特別栽培米雪若丸を使用したご飯はふっくらと炊き上がっています。愛知県の豆味噌と鳥取県の米味噌をブレンドした味噌汁は、味噌の香りが高く、出汁もしっかり取れています。キャベツのざくざくした歯応えも心地よいものです。 炭火焼は香りの良さだけでなく、余分な脂を落とす効果もあります。以前、銀座の日本料理店で炭火焼のとんかつを出していましたが、現在はこの店だけだと思います。とんかつの新たな可能性を拓いたと言えるかもしれません。

お勧めポイント
● 炭火焼の香ばしさ
● 余分な脂が無い

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。