和食STYLE

とんかつ3名士 河田部長のとんかつひとり旅㊶ つかんと(東京・虎ノ門)

虎ノ門ヒルズ内の集合施設、虎ノ門横丁にあります。虎ノ門横丁は名前の通り、ビルのフロアに横丁形式で店が並んでいるので、通路にカウンターが面しており、ふらりと入ることが出来ます。店名はとんかつを逆にしたものです。ミシュランで星を獲得したレストラン「TIRPSE」(閉店)のオーナーシェフ、大橋直誉さんは「TIRPSE」時代にもイベントとして「つかんと」の名でとんかつコースを何度か提供していました。私も食べましたが、とんかつ、かつ丼、豚汁、カツカレーを全く異なるスタイルで提供し、非常に刺激的なものでした。その経験を踏まえて 2020年6月に出店したのがこの「つかんと」です。今回はコース仕立てではなく、より気軽に注文出来るスタイルになっています。

お昼のメニューはロースカツ定食、ヒレカツ定食、カツ丼定食の3種類に絞り込まれています。ロース、ヒレの定食が 1500円、カツ丼が 1600円と、価格が最近の店としては安価に設定されています。このため特に銘柄豚の使用などは謳っていません。豚肉を解凍して、低温調理でコンフィ状にし、パン粉をつけた後はごく短時間油を潜らせるという手法を採用しています。これによって調理スタッフによるばらつきを小さくすることが出来るようです。揚げる時間が短いせいか、衣が油でじゅっと揚がる感覚はあまりなく、フレンチの低温調理の豚肉料理のような感覚があります。

写真はヒレカツで、肉はしっとりとして柔らかく、食後感が非常に軽くなっています。卓上には瀬戸内の藻塩、エキストラバージンオリーブオイル、福岡県糸島・ミツル醤油醸造元の少し甘みのある醤油、赤味噌柚子胡椒、パルメザンチーズ、ソースが用意されており、好みに応じて使い分けるようになっています。このとんかつにはオリーブオイルがよく合います。

キャベツは通常の刻みキャベツではなく、コールスローの形で提供されます。ユニークなのがカツ丼で、卵と出汁でリゾット状になったご飯の上にとんかつがトッピングされます。夜はとんかつ、カツ丼、かつかのほか、猪のカツなどがアラカルトでメニューに載っており、オレンジワインと合わせる新しいとんかつの楽しみ方が出来ます。

お勧めポイント
● 新しいスタイルのとんかつが手頃な価格で食べられる
● アラカルトメニューをオレンジワインと合わせて楽しめる

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。