和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第五四回 すしさとる

第五四回 すしさとる

1貫目の「おいで“ナス”」で胃袋を鷲掴み!

評判の良さに予約方法を調べたら LINE 登録してくださいとのことで、登録はしたけど予約受付開始連絡や空席情報が送られてきますが瞬殺。
すっごい人気なんだなと諦めていたらたまたまタイミング良く LINE を見ていた時にランチ予約情報が来て潜り込めました。8坪のお店に 6席、本当に上手に設計されているなと感心しちゃいます。
握りのみ12貫+デザートで12,000円というランチは12時一斉スタート、店主、荒木 悟さんの「おいで“ナス”」から始まります。荒木さんはボクサー→京料理→鮨職人って経歴で、修業先の「秦野よしき」さんの恩を忘れないようにと芳樹さんと同じように茄子で始まり、餡子で締めます。

茄子の次はカマス。とろけます。茄子もカマスも酢飯は大きめでほんのり温かくちょっとやわやわ。酢もしっかり利いてるなぁと思っていたら、4貫目の赤貝は粒が立ってちょい小さくなっていました。
そして「フジタ水産」の鮪が登場。赤身がおいしすぎる! とろんとしていてコクがある。続く中トロはちょっとスジが噛みきれずに苦戦しました。次は赤身の漬け、トゥルトゥルでコクがあり、やっぱり本日は赤身に軍配が上がったかな。ほんの 1〜2分の漬け加減もこの赤身にはぴったりでした。鮪には赤酢とか言うけど、この白酢飯はすっごく合ってると思います。

見てください、このおいしそうなホタテ! ま、実際めちゃうまでした。肉厚でとろんとろん、しかもクリアだけどコクがある味わい。酢飯は中に埋もれてるけどしっかりあります。 箸休めに醤油と生姜で炊いた煮ガリを出してくれたんですけどこれがうまいのなんのって。お酒も進み、ついお代わりしちゃいました。ノドグロはまた酢飯が温かくなり、でも粒は立っています。ノドグロの脂にピッタリ。ウニは“おにぎらず”的なスタイルで手渡し。ウニ×海苔×酢飯は一瞬にしてとけてしまいました。儚いけどいい夢見たって感じ。

悟さん、酢飯の扱いが上手なんです。鮨ダネとの一体感が本当に素晴らしい。これを白酢飯だけでやっているのがまた素晴らしい。どうやらまだ30歳前らしいですが、元ボクサーだけあって負けん気と根性があるんですかね。きっとメキメキ上達したと思われます。今もどんどん進化しているのではないでしょうか。悟さんは「6席しかないからですよ」と言うけど、この予約できなさ加減は席数のお話ではないです。

終わってみれば何ひとつ「これはイマイチ」ってことがありませんでした。一体感を究めるお鮨ってやっぱりいい! 本日のお会計、麦焼酎ソーダ割、日本酒2合半。握り14貫、デザートの餡子握りで18,000円でした。
「おいで“ナス”」で場を和ませてくれますがはじめましてだとなかなか輪に入れなかったりします。でも徐々に打ち解けるのはおいしい握りとお酒と親父ギャグ、そしてそれをうまくたしなめる女将さんと二番手の女性の存在があってこそな「すしさとる」。3カ月以上先にはなりますが帰りに予約が取れるので次はディナーでお伺いしたいと思います。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。